9月12日、東京の「吹奏楽の聖地」である府中の森芸術劇場で東京都吹奏楽コンクールが開催されました。高等学校の部では代表校の一角が昨年から入れ替わる展開。全日本吹奏楽コンクールを控えたいま、代表のコメントも交えて注目の大会を詳報します。
取材・文:オザワ部長
世界でただひとりの吹奏楽作家。神奈川県立横須賀高等学校を経て、早稲田大学第一文学部文芸専修卒。在学中は芥川賞作家・三田誠広に師事。 主著に『吹部ノート 12分間の青春』(日本ビジネスプレス)、『空とラッパと小倉トースト』(Gakken)など。小学校合唱部を描いた『とびたて!みんなのドラゴン 難病ALSの先生と日明小合唱部の冒険』(岩崎書店)は2025年度の課題図書に選定。詳しくはこちら>>
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光る演奏が続いた高等学校の部
全日本吹奏楽コンクールに出場する30校のうち、最後に残った2枠を決める都大会。都大会予選に参加した53校の中から選ばれた12校がこの日の演奏に臨みました。
トップバッターのプレッシャーを感じさせない美しいサウンドを響かせた都立富士森高校【銀賞】、バランスの良さとテクニックが光った駒澤大学高校【銀賞】、都立豊島高校は都立という限られた環境でハイレベルな演奏を聴かせてくれました【銀賞】。
超難曲に47人の総力で挑んだ豊南高校【銅賞】、4年ぶりの都大会復活で迫力ある演奏を披露した都立小山台高校【銀賞】も聴き応えのある演奏でした。
全日本吹奏楽コンクールに通算15回出場の都立片倉高校は37人と今大会で最少の編成。自由曲《歌劇「トスカ」第3幕より》は渾身の演奏でした【銅賞】。
注目の金賞6校の演奏
ここからはすべて金賞受賞校です。
岩倉高等学校
埼玉栄高校を名門に育て上げたレジェンド・大滝実先生が指揮する岩倉高校は課題曲IVとヴェースピ《「ディヴェルティメント」より》を演奏。オーラを感じさせるタクトに導かれ、自由曲ではうねるようなグルーヴが感じられました。
東海大学菅生高等学校
3年ぶりに代表復帰を目指す東海大学菅生高校は、そんな気負いをまったく感じさせない好演を披露。持ち前の力強さのみならず、感動を呼ぶ弱奏の素晴らしさにはバンドそのものの進化が感じられました。自由曲《ブリュッセル・レクイエム》の終盤は涙が出るほど感動的でした。
東海大学付属高輪台高等学校
東京都支部で最多の19回の全国大会出場を誇る「赤い王者」こと東海大学付属高輪台高校。課題曲IIIは、出だしからハッとさせられるような鮮やかで明るいサウンドが弾けだし、文句のつけようがない出来でした。新アレンジの自由曲《シンフォニエッタ第2番「祈りの鐘」(2026年版)》(福島弘和)もソロよし、アンサンブルよし、トゥッティよしの圧巻の演奏。高輪台らしいゴージャスな12分間でした。
八王子学園八王子高等学校
2年連続で全国大会金賞に輝く八王子学園八王子高校は個々の奏者の技術力が高く、この2年間の実績に裏打ちされた自信にも支えられて、堂々とした演奏ぶりでした。自由曲《宇宙の音楽》(スパーク)は、55人のサウンドが壮大な宇宙の光景を描き出し、天体たちのドラマが目に見えてくるよう。演奏後の拍手がもっとも長かったのが印象的でした。
国本女子高等学校
38人で登場した「ファンキーガールズ」の異名を持つ国本女子高校。課題曲IVでは一人ひとりがソリストのようにしっかり演奏しているのが好印象。自由曲《テンペスト 〜愛と赦しの島〜》(阿部勇一)はドラムセットが入り、ソロのクラリネットやアルトサックスが立ち上がって吹くコンサートのような楽しい演奏。終盤のドラマティックな盛り上がりでは涙が出ました。もっと多くの人に知っていただきたい個性派バンドです。
東京都立杉並高等学校
全国大会に過去1回出場の都立杉並高校は、演奏する喜びとチームワークの良さが伝わってくる爽やかな12分間でした。自由曲《交響曲第1番「悪魔の聖書」》は聴衆を引き込む表現が随所に見られ、迫力を感じました。オーボエとコールアングレの二重奏が印象に残りました。
東京都代表2校が決定
さて、注目の東京都代表2校ですが、東海大学菅生高校(3年ぶり11回目)と八王子学園八王子高校(3年連続9回目)が選ばれました。
歓喜の涙もあれば、悲嘆や悔しさの涙もあり。コンクールの厳しさを改めて実感させられた表彰式でした。
ただ、吹奏楽部もコンクールも音楽的・人間的な成長の場であり、貴重な教育の機会であるとするならば、感情が高まり、さまざまな答えのない思考が頭を駆けめぐるこの瞬間こそ、高校生たちがもっとも成長するときだと言えるでしょう。
コンクールという嵐が過ぎ去ったあと、心に生まれ出てくる新たな芽。それが大きく育っていくことを願っています。
それでは、代表に選ばれた2校の表彰式直後のコメントです。
東海大学菅生高校コメント
顧問・加島貞夫先生
「ここ2日間のホール練習で集中力が高まっていましたが、それが本番でも出て、音楽の神様が降りてきた感覚になりました。ちょっとミスはありましたが、55人の気持ちがひとつになった、とてもいい演奏だったと思います。(2023年以来の東京都代表には)ここまで長かったなという思いです。去年も一昨年も部員たちはよくがんばっていたので、彼らの気持ちも背負って今日の本番に臨めました。全国大会では気負うことなく菅生高校のワールドを出せたらと思います」
部長・木村蓮音さん
「これまで積み重ねてきたことと、この2日間のホール練習でやってきたことが出せた本番でした。(表彰式はステージ上にいて)緊張で体がギュッとこわばっていましたが、代表校の発表で『4番(菅生高校の出場順)』とアナウンスされた瞬間、ヒモが切れたようにすとんと力が抜けていく感じがしました。ずっと『これまでの先輩方の思いも背負っていきます』と言っていたので、代表に選ばれて安心しました。全国大会ではいまよりも精度とレベルを高めて、多くの人たちに感動してもらえる菅生サウンド、私たちが大好きな加島先生のつくる音楽を届けたいです」
八王子学園八王子高校コメント
顧問・髙梨晃先生
「みんなの気持ちがすごくまとまった演奏だったので、指揮をしていてとても楽しかったです。代表校発表のときは(まず東海大菅生が代表に選ばれ)プログラムの順番からして『あ、もうダメか……』と思っていたので、自分たちが呼ばれたときは思わず歓声を上げてしまいました。全国大会に向けて、いまよりもっとよくなると思うので、完成度を高め、納得できる演奏を極めていきます」
部長・海老原灼さん
「とっても楽しく演奏でき、気持ちもひとつになっているのが感じられた12分間でした。表彰式は壇上にいて、『4番(東海大菅生)』が最初に呼ばれた瞬間は本当に緊張してしまい、ドキドキが止まらなかったです。続いて『9番(八王子)』と呼ばれ、仲間たちが喜んでいるのが見えて、よかったと心から思いました」
学生指揮者・齋藤裕盛さん
「自分が演奏していても『練習以上のものが出た』と思える本番でした。都大会は、自分たちがいかに満足できる演奏ができるかが大事だと思っていましたが、本番が終わったあと、『めっちゃよかった』『後悔はない』と部員たちが言っているのが聞こえてきて、自分も楽しかったし、バンドとしてもよかったと思いました。今日はいい演奏ができましたが、ミスもあったので、全国大会に向けて細かい部分、納得できなかった部分を先生や自分たちでつくり上げていきます」
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