第4回プリマヴェーラ声楽コンコルソ カテゴリーア・ミュージカル【ヴェンティトレ部門】第1位 本淨桜子さんにインタビュー!

本淨さまアイキャッチ

2026年5月4日(月)、東京都小金井市の小金井宮地楽器ホール・大ホールで開催された「第4回プリマヴェーラ声楽コンコルソ」東京本選。カテゴリーア・ミュージカル【ヴェンティトレ部門(23歳以下)】にて第1位を受賞された本淨さんに同コンクールをはじめ、これから音楽コンクールに挑戦する方に向けてお話を伺いました。


取材・文|編集部

自分にピッタリな音楽コンクールが見つかる!国内外の音楽コンクール情報や結果まとめをわかりやすくご紹介し、次世代の音楽家や音楽ファンの皆様に寄り添います。


プロフィール

本淨桜子さま

本淨 桜子(SAKURAKO HONJO)
東京都出身/桐朋学園大学音楽学部声楽科2年在学中

音楽高校・音楽大学の作曲科を卒業し、ピアノの先生もしていた母のもと、幼少期から音楽が身近な環境で育つ。歌や体を動かすことが好きで、小学1年から中学2年までバレエを学び、その経験が現在取り組んでいる他のダンスに活かされている。カトリックの小学校では4年生から聖歌隊に所属。

中学3年でコンクール挑戦を決意したことをきっかけに、劇団四季出身の先生のもとで本格的にミュージカル歌唱を学び始める。その後、コンクールの講評会で大学受験について審査員の先生にご相談したことをきっかけに信太美奈先生に師事。さらに、編入先の高校で出会った熊谷藍先生(劇団四季出身)には現在に至るまで、歌の指導はもちろん、メンタルや体調面まで含めた手厚いサポートを受けている。高校3年からは声楽を学び始め、腰越満美氏に師事。

趣味・特技
歌のための身体づくりとしてジム通いが趣味。お料理やお菓子作りも好きで、アニメも大好き。一番のお気に入りは『進撃の巨人』。

■ 受賞歴
プリマヴェーラ声楽コンコルソ
第2回 ミュージカル18歳以下の部 第3位
第3回 ミュージカル18歳以下の部 第3位/30歳以下の部 第4位
第4回 ミュージカル23歳以下の部 第1位

セシリア国際音楽コンクール
第20回 声楽部門ミュージカル大学生の部 第3位/コンチェルト賞受賞

国際声楽コンクール東京
第4回 ミュージカル高校生の部 第6位
第5回 ミュージカル部門 奨励賞(第5位)

東京国際管弦声楽コンクール
第3回 声楽高校生の部 第5位

TOKYO全国ミュージカル歌唱コンクール
第7回 審査員特別賞

■ 主な出演
2025年4月 東京国際管弦声楽コンクール入賞者披露演奏会(サントリーホール ブルーローズ)
2026年4月 桐朋学園大学主催 学内成績優秀者による声楽コンサート 出演

プリマヴェーラ声楽コンコルソを終えて

本淨さま

──コンクール、お疲れさまでした!終えた今のお気持ちをお聞かせください。

本淨
ありがとうございます。実は、最近は少しスランプを感じていた時期でもありました。そのため今回は、「賞や順位を目指すこと」よりも、「客席のお客様や審査員の先生方に、心から感動を届けられるような歌を歌いたい」と強く思ってステージに臨んだんです。その純粋な想いがこうして結果に繋がったことが、本当に嬉しくて仕方がありません。

また、伴奏の近藤大夢さんの存在も本当に大きかったです。近藤さんには高校生の時からずっと伴奏をお願いしているので、信頼しきっています。

──なぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?

本淨
最初のきっかけはコロナ禍でした。中学2年生の1年間、学校もオンラインのみでほとんど通えず、これといった目標がないまま毎日を過ごしていた私を見かねて、母が「出てみない?」と勧めてくれたんです。そうして中学3年生の時に初めて出場させていただきました。

実は高校1年生の時、将来「音大のミュージカル科と声楽科、どちらに進学するか」で深く迷っていた時期がありました。その際、このコンクールの講評会で、審査員をされていた信太美奈先生に直接ご相談させていただく機会に恵まれたんです。それが、信太先生に師事する大きなきっかけとなりました。

途中、出場しなかった年もありますが、高校2年生から継続して挑戦しているのは、このコンクールに出るたびに、自分自身が毎回確実に成長できていることを実感しているからです。

──本選で演奏された2曲の選曲理由や、それぞれの楽曲への想いをお聞かせください。

本淨さま

本淨
1曲目は日本語でLÉVAY/The feelings I hide(ミュージカル『レディ・ベス』より)を歌いました。
帝国劇場でのコンサートで平野綾さんが歌われていたのが、この曲を知ったきっかけです。当時は「華やかではないけれど、じんわりと心に響く良い曲だな」という印象でした。

その後、今年の3月にミュージカル『レディ・ベス』を実際に観劇し、小南満佑子さんが歌う「秘めた想い」に激しく胸を打たれました。「私も、自分の中にある秘めた想いをこの曲にのせて歌いたい!」と強く思い、本選の勝負曲に選びました。

本淨さま

2曲目は韓国語でYESTON/My True Love(ミュージカル『ファントム』より)を歌いました。
とても有名な曲なので以前から知ってはいたのですが、正直なところ、今まではあまり自分が歌いたいと思ったことはありませんでした(笑)。

実は私の趣味の一つに「1つの曲をいろいろな言語で聴き比べること」があるのですが、興味本位でこの曲の韓国語版を聴いてみたんです。すると、なぜか心にものすごく響くものがあって…。母国語ではないはずなのに、不思議と日本語版よりもダイレクトに感情が伝わってくる感覚に驚き、「私も韓国語での歌唱に挑戦してみたい!」と決意しました。

初めは慣れない韓国語の発音に悪戦苦闘しましたが、大学の韓国人の同級生に発音をチェックしてもらったり、様々な韓国の歌手の方の動画を見て熱心に研究を重ねました。この初めての挑戦は、私にとって本当に楽しい経験となりました。

──練習中に特に意識したポイントや、課題となった箇所へはどのように取り組まれましたか?

本淨
一番苦労したのは、1曲目に歌った『レディ・ベス』の曲(『秘めた想い』)の作り込みです。本当に良い曲なのですが、低音が多く、派手さがなくて繰り返しも多いため、劇中で聴くのとは違って、どうしてもつまらなく聞こえてしまうのが課題でした。

それもあり、実は最初は信太先生にも大夢さんにも反対されていたんです(笑)。

ですが、どうしてもこの曲が歌いたかったので、歌詞を全てセリフにして自分の言葉に変えて読んだり、ブレス(息継ぎ)の意味を全て書き込んだりしながら「感情を言葉に乗せて、歌うのではなく語る」ということを意識して、徹底して練習しました。

表現の部分では、抑えた中にある想いの強さをどうすれば出せるのか、ベスの芯の強さや信念を貫く強さを、音量や声量ではなく、どう表現するかが大きな課題でした。

──コンクールまでの準備期間中、大変だったことや心の支えになったことがあれば教えてください。

本淨
実は准本選から本選までの間に、大学の選抜コンサートがあり、そちらにも出演させていただいたため、ミュージカルと声楽をうまく切り替えるのが本当に大変でした。

また、准本選の直前に大風邪をひいてしまい、准本選も鼻声でいつものように声も響かず「初めて通過できないかも」と不安になりましたが、結果は3位で通過でき、本当に安堵しました。

しかし風邪が治ってからも、花粉症と相まってか、喉の調子だけが戻らず、うまく声が出なくなってしまいました。それが原因でメンタルを少しやられてしまい、とても苦しかったです。

でも、私が今師事している信太先生や熊谷先生、伴奏の大夢さんや母の支えがあり、気持ちだけはなんとか立て直して本番当日を迎えることができました。
特に信太先生には、コンクール直前のレッスンの発声練習の段階でメンタルの不調に気づいていただき、いろいろなお話をしてくださったので、気持ちを切り替える大きなきっかけになりました。

──本番当日の心境や会場の雰囲気について教えてください。また、審査員席に恩師の信太先生がいらっしゃることは、本淨さんにとって安心感や心の支えになりましたか?

本淨さま・信太先生

本淨
本番当日の朝も声の調子は戻らないままだったので、「あー、とうとうきてしまった」という気持ちで迎えました。とにかく、最大限今の自分にできることをやる、審査員の先生方や、聴いてくださる方の心に届く歌が歌えたらいいなと思って臨みました。

やはり本選となると、会場の雰囲気も緊張感も、本当に准本選とは大違いです。何度経験しても慣れません。

実を言うと舞台に立つと、信太先生が審査員席にいらっしゃる時は、先生がちょうど目線の先に入ります。先生はレッスンより演奏が良くなかった時や、技術だけではなくて歌そのものに心が足りなかったような時は、容赦なく点も厳しくなるので、こちらの気合いも自ずと入ります。

──高校生の頃から信頼を寄せる近藤大夢さんは、どのような存在ですか?お二人ならではの空気感や、演奏でのこだわりも教えてください。

本淨さま・近藤さま

本淨
ここをこうして、などと細かく決めているわけではなく、合わせの時もかなりフィーリングで、ということが多い気がします。わざわざ言わなくても、何度か合わせているうちに「ここをこう歌いたい」などを感じとって引き出してくれるので、とても歌いやすいです。

音楽的なことや表現、声楽的な面からもたくさんアドバイスをもらえるので頼りにしていますが、もちろん、意見や解釈の相違でケンカすることもたまにあります(笑)。でも、少しぶつかったあとは必ずいい演奏になるので、気にしていないです。

私にとって大夢さんは、一言でいうと「何でも話せるお兄ちゃん」のような存在です。

それから、「ここにこんなアレンジを入れて欲しい」とお願いするとすぐに対応してくれて、更に「こっちはこの方がいいかも」と意見をくれるので、音楽がどんどん良いものになっていって、2人で作り上げていく過程がとても楽しいです。

あと、本番で練習とは違うことをしてしまっても、呼吸と空気をみて合わせてくれるので、安心して歌うことができます。逆に、大夢さんが合わせとは違うアレンジになっても、不思議と私も合わせられるんです。

──演奏を終えた瞬間の率直な感想と、周囲の反応をお聞かせください。

本淨
正直なことを話すと、本当に自信がなかったため、歌い終わった瞬間は「あー終わったな、もうダメだな」というのが、本当に正直な感想です。

歌い終わって、母や応援に来てくれた家族に会った時も、自信のなさや、それまで精神的にもキツかったところから解放されたことなど、色々な感情が混ざって涙が止まらなくなってしまい、号泣してしまいました。ここまで自信のない本選は初めてでした。

ただ、演奏後に数人の方から、「ジーンときました」「心に残るベスやクリスティーヌでした」「良いものを聴かせていただきました。来て良かったです」などと言っていただけたので、今回最終的に目標にしていた、「歌の心で体調面(声)の不調をカバーすること」ができたのかな、と思いました。

また、一番苦労した『秘めた想い』の表現についても、いつも的確なアドバイスをくださる尊敬する審査員の先生から、「今までに聴いたどの『秘めた想い』よりも好きでした」との言葉をいただき、心から嬉しかったです。

──プリマヴェーラ声楽コンコルソに挑戦する方へのメッセージをお願いします。

集合写真

本淨
必ず講評を聞きにいってください。 准本選や本選に進むと先生方から直接講評を頂けて、録音もできるので、時間が許す限り多くの先生のところに行ってほしいです。私はほぼ毎回、全ての先生に講評を頂いていました!

普段自分がついている先生が気づかないくせや、逆に「ここ良かったよ」など、客観的な意見が頂けるので、絶対に次に役立ちますし、自分の成長につながります。

このコンクールは受験者には全ての先生の点数が公表されるのですが、特に、点が低かった先生の講評は絶対に聞くべきだと思っています。

私も実際、普段ついている先生のご指導はもちろんですが、コンクールの審査員の先生方に頂いたアドバイスを自分の中で噛み砕いて取り入れて、たくさん成長させていただけたと思っています。

──今後の目標、将来の夢などをお聞かせください。

本淨
将来は、声楽もミュージカルも両立してできる歌手、役者さんになりたいと考えています。大学では声楽を専門的に学んでいるので、まずは声楽で基礎をしっかり固めてから、それをミュージカルに役立てていきたいです。

今、声楽を学ぶことがとても楽しくなってきています。今はまだ歌うことで精一杯ですが、もっと自由に自分の声を操れるようになったら、もっともっと楽しいだろうなと思います。どんなに良い表現をしたくても、技術が伴わなければそれを演奏で表現することはできないので、もっともっと練習して上手になりたいです。

音楽は人の心を豊かにしてくれます。そして、自分が音楽から得た豊かさを、今度は社会に還元していけるような音楽家になりたいと思っています。

本淨さま
本淨桜子information

【コンサート出演】
先日出場した「セシリア国際音楽コンクール」にて副賞のコンチェルト賞を受賞し、オーケストラをバックに歌わせていただくことが決定いたしました。ミュージカル『Cyrano(シラノ)』より『No Finer Man(ノー・ファイナー・マン)』を披露いたします。素晴らしいオーケストラの演奏とともに、ぜひ劇場でお聴きください。

日時:7月29日(水)
会場:銀座ブロッサムホール

【ミュージカルスクール アシスタント活動】
現在、恩師である熊谷藍先生が主宰されているキッズミュージカルスクールにて、月2回(不定期)アシスタントを務めさせていただいています。体験レッスンも随時受付中ですので、ご興味のある方はぜひのぞいてみてください。

詳細はこちら

インタビューを終えて──編集後記

本選当日、客席で彼女の演奏を聴いていた筆者のメモには、1曲目のLÉVAY/The feelings I hideに「引き込まれて好き」、2曲目のYESTON/My True Loveに「声量たっぷり」と、興奮気味に書き残されていました。不調など微塵も感じさせない、客席の空気を一瞬で変える圧巻のステージだったのです。

しかし、その後のインタビューで明かされたのは、朝から声が出ない絶望とスランプの渦中にいたという、あまりにも意外な舞台裏でした。

だからこそ、結果発表で名前を呼ばれた瞬間の、本淨さんの涙がとても印象的でした。インタビューを終えた今、あの涙の裏には、どれほどの葛藤とプレッシャーがあったのかを知り、胸が熱くなります。

恩師の視線も、信頼する伴奏者との呼吸も、全てを味方にして奇跡のような名演を生み出した本淨さん。技術を超えた「心の歌」を届けてくれた彼女の未来が、今から楽しみで仕方がありません。本淨さん、お忙しいところ素敵なお話をありがとうございました。

第4回プリマヴェーラ声楽コンコルソについては下記よりご覧ください。

第4回プリマヴェーラ声楽コンコルソの結果については下記よりご覧ください。