2026年8月20日(木)、品川区立五反田文化センター 音楽ホール(東京都品川区)で開催された「第8回日本奏楽コンクール」ピアノ部門 高校の部において、第1位・C.Debussy賞を受賞された小林英真さん。後日発表された準グランプリにも選ばれ、グランプリの該当者がなかった今大会で、全部門・全楽器を通じての最高位となりました。今回は同コンクールをはじめ、これから音楽コンクールに挑戦する方に向けてお話を伺いました。
取材・文|編集部
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小林 英真(こばやし えま)/Ema Kobayashi
東京都出身。桐朋女子高等学校音楽科(男女共学)2年。
6歳よりピアノを始める。小学6年生のとき、平野文子氏の紹介で須田眞美子氏のレッスンを受けたことをきっかけに、ピアノの勉強を深めたいと考えるようになる。同年より桐朋学園大学附属 子供のための音楽教室 目黒教室に通い、現在は桐朋女子高等学校音楽科2年に在学中。
これまでに平野文子、須田眞美子、三瀬和朗、島田彩乃の各氏に師事。
趣味・特技
バレエやミュージカルの鑑賞。
主な受賞歴
第4回ドビュッシー国際コンクール
高校生の部 第1位・ドビュッシー賞
第11回Coimbra World Piano Competition
第3位
第50回全国町田ピアノコンクール
高校生の部 第2位
日本奏楽コンクール
第6回 ピアノ部門 中学の部 第2位/第8回 ピアノ部門 高校の部 第1位・C.Debussy賞、準グランプリ
第8回日本奏楽コンクールを終えて
──コンクール、お疲れさまでした!受賞を知った瞬間のお気持ちと、終えた今のお気持ちをお聞かせください。
小林
ありがとうございます。高校の部 第1位で呼ばれた際はとても嬉しかったです。本選の演奏は自分では悔いのないものでしたが、今の私の実力で高い評価をいただけるのかという不安の方が大きかったです。そのような中で1位を受賞することができ、安心すると同時に、嬉しさで一杯になりました。加えてC.Debussy賞については、私のドビュッシーのつくり方を評価していただけたことが本当に嬉しかったです。今後ドビュッシーの他の作品も、たくさん勉強しようと思います。
更に後日発表された準グランプリに私の名前を見つけた時はとても驚きました。全楽器・全部門の中から選んでいただけたことは大きな自信につながりました。
このような成績を残すことができたのは、ご指導いただいている先生方のおかげです。改めて、感謝の気持ちでいっぱいです。
──なぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?
小林
中学生の時に日本奏楽コンクールに挑戦したことがあり、その時は中学生の部 第2位をいただきました。人生で初めて受けたコンクールだったこともあり、強く印象に残っています。その時から、「高校生になったらもう一度挑戦してみよう」と考えていました。今回は、前回よりもよい成績を残したいという思いがあり、第1位をいただけるよう、練習してきました。
──予選と本選では、それぞれ何を演奏されましたか。選曲の理由もお聞かせください。
小林
予選では、リストの《3つの演奏会用練習曲》より第2曲「軽やかさ(La Leggierezza)」を、本選ではドビュッシーの《前奏曲集第1巻》より第5曲「アナカプリの丘」、第7曲「西風の見たもの」を演奏しました。
予選は学校の実技試験と時期が重複していたため、試験で演奏したリストを予選に提出することにしました。華やかで技巧的な箇所もある一方で、たっぷりと歌いながら美しく流れる旋律に惹き込まれる曲だと感じています。
本選で演奏したドビュッシーは、これから長く勉強する作品なので、より多くの本番を経験し、深めていきたいと考え選曲しました。私がこれまであまりドビュッシーを勉強してこなかったこともあり、ドビュッシー特有の不思議で色彩豊かな響きをとても新鮮に思いながら練習しています。
──コンクール準備期間について教えてください。
小林
予選曲のリストは、4月から練習を開始していたため、比較的余裕を持って準備を進めることができました。本選曲のドビュッシーは2か月程度の準備期間でしたが、学校が夏休みに入り、練習時間を確保できたことは大きかったです。両曲とも、先生にしっかりご指導いただいた上に、海外の先生の特別レッスンを受講する機会もいただきました。先生方のこのようなお支えのおかげで、迷わず練習を進めることができたと思います。
また、本選当日に会場へ出発する際、母が「ドビュッシー、上手よ!」と言ってくれたことがとても心に残っています。一緒に会場に来てくれた父も、演奏後に「良かったと思う」と言ってくれました。両親の言葉も、本番に向かう私の大きな支えとなりました。
──練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?
小林
私が現在課題だと考えていることは、主に作品の雰囲気を表現することと、豊かな響きでピアノを鳴らすことです。
作品の雰囲気を表現することについては、先生にアドバイスをいただきながらイメージを定着させています。ただ、教えていただいたことを再現するだけでなく、表現したいことを自分なりに考えて演奏に組み込むことができるようになる必要があると感じています。
また、ピアノを遠くまで響かせるには、指先の力や姿勢が大切です。腰を立て、首を上げて姿勢よく演奏すると、開放感のある、よく響く音になると先生から教えていただいています。しかし気を抜くと背中が丸くなってしまうので、常に意識しなければなりません。指の力を強くするためには基礎練習や、鍵盤を下まで弾く意識を大切にし、練習しています。数年前の自分の演奏と比べると、以前よりはしっかり音を鳴らせるようになってきましたが、弾きづらいピアノや大きなホールでは、まだ音を遠くまで届けられていません。どのような演奏環境でも臨機応変に対応し、豊かな響きを作ることができるように、さらに指先の強化をしないといけないと思っています。
──本番当日のお気持ちをお聞かせください。
小林
当日の朝、「今日が本番だ」という実感があまりなく、自宅ではいつも通りの感覚で練習をしていました。会場に到着してから少しずつ緊張し始め、自分の出番の直前、舞台袖では緊張や不安もありました。歩き回ったり、手足の筋肉をほぐしたりと、舞台に出るまで絶えず動き続けていたのは、手が固まって思うように演奏できなくなることを避けるためです。その効果があったのか、舞台に出てからは自分でも驚くほど冷静に、考え続けながら演奏することができました。
会場のピアノは、演奏している自分にも音がよく響くように感じました。そのため、演奏しながらドビュッシーの不思議な響きもよく聴き、楽しむことができました。
──日本奏楽コンクールに挑戦する方へ、メッセージをお願いします。
小林
日本奏楽コンクールは、私が初めて挑戦したコンクールです。予選が動画審査なので、比較的取り組みやすいと思います。予選の動画を提出すると、外国人の先生を含む多くの先生方から講評をいただけます。あらゆる角度からのアドバイスをいただけるため、予選動画を提出するだけでも大きな学びになると思います。
そして本選の舞台で弾くときには、不安も緊張もあると思いますが、今までの自分の努力を信じて臨んでください。応援しております。
──今後の目標、将来の夢などをお聞かせください。
小林
高校に入学してから、音楽科の同級生や先輩方のレベルの高さに圧倒され続けています。彼らに追いつくことができるよう、高校1年から練習への向き合い方を変え、日々励んでいます。また、身近な友達や先輩の演奏を聴いて「この曲を弾きたい!」と考えることが多くなりました。時代や流派が異なるさまざまな音楽を聴き、吸収し、好きになっていけていることをとても嬉しく思っています。これからも、そうした作品や新たに出会う曲に自分でも挑戦し、レパートリーを広げることを目標にしていきたいと思います。
このように、学校では日々良い刺激を受けています。今後もその刺激を自分の力に変え、成長していきたいです。
インタビューを終えて──編集後記
中学生のときに初めて挑戦したコンクールへ、高校生になってもう一度。「高校生になったらもう一度挑戦してみよう」という言葉どおりに戻ってきた舞台で、小林さんはピアノ部門 高校の部 第1位とC.Debussy賞、そして準グランプリを受け取られました。
心に残ったのは、本選の選曲の理由です。賞の名前にもなったドビュッシーについて、「これまであまりドビュッシーを勉強してこなかった」と率直に話してくださいました。これから長く付き合っていく作品を、あえて本選に持っていく。仕上がったものを見せるのではなく、これから育てる曲と一緒に舞台へ上がる。その選び方に、背筋が伸びる思いがしました。
本番の日、舞台袖では「舞台に出るまで絶えず動き続けていました」。手が固まって思うように弾けなくなることを避けるための工夫です。その積み重ねがあったからこそ、舞台に出てからは「自分でも驚くほど冷静に」弾けたのだと思います。会場へ向かう朝にお母さまがかけた「ドビュッシー、上手よ!」という言葉も、心に残っていると教えてくださいました。支えを受けて立った一日だったのだと感じます。
次はどんな曲を連れて、舞台に上がられるのでしょうか。小林英真さんのこれからの歩みを、心から応援しております。
このたびは貴重なお話をありがとうございました。
第8回日本奏楽コンクールの概要については下記をご覧ください
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