各地で繰り広げられた熱演を経て、全日本吹奏楽コンクール・高等学校の部に出場する全30校が決定した。代表校の素顔に迫る本連載の第2回は、中国支部(岡山・広島・山口・島根・鳥取)と四国支部(愛媛・香川・徳島・高知)から夢の舞台へと駒を進めた2校をピックアップ。歴史ある名曲への挑戦や、重圧を跳ね除けるチームワークなど、現場のリアルな声をお届けする。
取材・文:オザワ部長
世界でただひとりの吹奏楽作家。神奈川県立横須賀高等学校を経て、早稲田大学第一文学部文芸専修卒。在学中は芥川賞作家・三田誠広に師事。 主著に『吹部ノート 12分間の青春』(日本ビジネスプレス)、『空とラッパと小倉トースト』(Gakken)など。小学校合唱部を描いた『とびたて!みんなのドラゴン 難病ALSの先生と日明小合唱部の冒険』(岩崎書店)は2025年度の課題図書に選定。詳しくはこちら>>
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岡山学芸館高校吹奏楽部
今年で通算23回目の全日本吹奏楽コンクール出場が決まった岡山学芸館。8大会連続で金賞を受賞中の乗りに乗っているバンドだ。
そして、2022年の《エルサレム讃歌》からアルフレッド・リードの作品を自由曲に選び続けており、「リード・リバイバル」の火付け役でもある。注目の今年は不朽の名曲《アルメニアン・ダンス Part I》を選んだ。
顧問の中川重則先生はこう語る。
「この曲は何度か演奏したことがありましたが、コンクールの自由曲として深掘りしてみると、素晴らしさや難しさを改めて発見し、取り組めることにうれしさを感じています。自分たちの持てる力や技術、学んできた音楽をすべて投入して演奏するという挑戦をしています」
中国大会では予想外のことも起こった。終盤、演奏のペースがどんどん速くなってしまったのだ。
「思っていたよりもいいノリでテンポアップしてしまったので、『最後まで持ってね』と思っていました。でも、みんな集中し、こぼれることなく最後まで食らいついてきてくれたので、ホッとしました」
結果的には圧倒的な演奏となり、代表の切符を手に入れた岡山学芸館。だが、中川先生はそれで満足したわけではなかった。
「あのときできる全力は出しましたが、『もっとこういうことができるのに』という改良の余地がたくさん浮かびました。これから全国大会まで生徒たちと一緒にそこを追求していくのが心から楽しみです」
全国大会は出場順が後半の部の12番と決まっている。「吹奏楽の甲子園」を知り尽くした中川先生は本番をこう見据える。
「全国大会の前に定期演奏会があり、生徒たちはそこでさらに大きく、強くなります。長い時間をかけて積み重ねてきた彼ら彼女らの力をすべて発揮させてあげたい。結果についてはあまり考えず、リード作品の素晴らしさを伝え、終わったときに会場が沸き上がるような演奏にしたいですね」
愛媛県立伊予高校吹奏楽部
「四国の横綱」と称され、今年が記念すべき通算30回目の全日本吹奏楽コンクール出場となる伊予高校。これで4年連続の四国代表だが、自由曲は《アニマ メア ルーチェ》を選んだ今年を含めて3回が福島弘和作品だ。
顧問の池田努先生は選曲の理由をこう説明する。
「最大の理由は、伊予高校のサウンドと福島作品が合っているということだと思います。3年前に《シンフォニエッタ第5番「火焔の鳥」》、2年前に《シンフォニエッタ第4番「憶いの刻」》をやりました。昨年は少し色を変えて天野正道作曲《「GR」より シンフォニック・セレクション》に挑戦したんですが、今年の選曲を考える中で2年前の方向性に戻すことに決めました」
より多彩な表現ができるよう指導を続け、四国大会に挑んだ。部員たちは緊張に襲われていたが、そのときコンサートミストレスの部員が「手のひらを上に向けると緊張が和らぐので、みんなで手のひらを見せ合いましょう」と声をかけたのだという。
「その言葉がきっかけで緊張が消え、部員たちは気負うことなく音楽を楽しもうという気持ちになれたと思います。邪念が吹っ飛び、近年になく勇気を持って本番に臨めました」
2枠の四国代表の座を見事獲得した伊予高校。いよいよ次は全国大会だ。
部長でファゴット担当の成岡さん(3年)は高い目標を胸に抱いている。
「伊予高校も四国代表も、全国大会で銅賞が続いています。でも、私たちの代では賞の色を変え、新しい歴史を作りたい。困難な道ではありますが、金賞に向かって進んでいきたいと思っています」
温暖で美しい瀬戸内海に面した岡山と愛媛の両校。その健闘を祈りたい。
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