第61回新潟県音楽コンクール【大賞】ピアノ部門 井口里佳さんにインタビュー!

第61回新潟県音楽コンクール【大賞】ピアノ部門 井口里佳さんにインタビュー!

2026年8月23日(日)、りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館(新潟市中央区)で開催された「第61回新潟県音楽コンクール」本選会において、大賞を受賞された井口里佳さん。大賞はピアノ・声楽・弦楽・管楽の全部門を通じて1名に贈られる、同コンクールの最高賞です。今回は同コンクールをはじめ、これから音楽コンクールに挑戦する方に向けてお話を伺いました。


取材・文|編集部

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プロフィール

井口さま

井口 里佳(いぐち りか/Rika Iguchi)Instagram Facebook

新潟県長岡市出身 / 桐朋学園大学大学院修士課程2年

5歳の頃、母に勧められてピアノを始める。内宮弘子、佐々木陽子、相馬上子の各氏に師事し、現在は渡辺美恵、仲道郁代の両氏に師事。声楽を佐藤晶子氏に師事。大学院では、修士論文でシマノフスキの作品を研究している。

趣味・特技
旅行、食べ歩き、映画鑑賞。特に食べることが大好きで、いろいろな場所で美味しいものに出会う時間を楽しんでいる。

主な受賞歴
新潟県音楽コンクール
第48回 優秀賞/第53回 優秀賞/第61回(2026年)【大賞】ピアノ部門

第21回洗足学園ジュニア音楽コンクール
ピアノ部門 奨励賞

第9回全日本ジュニアピアノコンクール
全国大会 入賞

第50回カワイピアノコンクール
入選

主な演奏活動
ジュニアリリックコンサート記念演奏会「協奏曲の調べ」にてオーケストラと共演。

第61回新潟県音楽コンクールを終えて

井口さま:事務局提供
第61回新潟県音楽コンクール 本選会(りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館)

──コンクール、お疲れさまでした!大賞受賞を知った瞬間のお気持ちと、終えた今のお気持ちをお聞かせください。

井口
結果発表では、優秀賞、最優秀賞と次々に名前が呼ばれていきました。県知事賞でも自分の名前が呼ばれなかったため、最後に大賞として名前を呼んでいただいたときは驚きが大きく、すぐには実感が湧きませんでした。

本選では自分の思い描いていた演奏ができなかった部分もあり、演奏後は一人で反省会を開いていました(笑)。ですが、自分が音楽に込めた思いや演奏が聴いてくださった方々に届き、認めていただけたのだと感じました。受賞した後は、ほっとした気持ちにもなりました。

これまでご指導くださった先生方をはじめ、家族や支えてくださった多くの方々への感謝の気持ちでいっぱいです。今回の受賞を大きな励みとし、これからも自分自身の課題と向き合いながら、より良い演奏を目指して努力を重ねていきたいと思います。

──なぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?

井口
新潟県音楽コンクールは幼い頃から挑戦してきた、私にとって思い入れの深いコンクールです。全部門を通じての最高賞である大賞は、以前から憧れていた賞でもあり、いつか受賞できたら…という思いもありました。

現在、大学院では演奏だけでなく修士論文でもシマノフスキの作品を研究しています。今回のコンクールでは、これまで学んできたことを演奏に活かして、どれだけ聴いてくださる方々に伝えられるかをひとつの目標としていました。

また、予選は長岡リリックホール、本選はりゅーとぴあという地元の素晴らしいホールで演奏できる貴重な機会です。だからこそ結果だけにとらわれず、音楽の魅力を一人でも多くの方に知っていただきたいという思いで挑戦しました。

──予選はベートーヴェンのピアノ・ソナタ第26番《告別》、本選はシマノフスキの《変奏曲 作品3》。それぞれの作品と、どのように向き合われましたか。

井口さま:事務局提供
本選会にて

井口
《告別》は各楽章に「告別」「不在」「再会」という題名が付けられており、別れの悲しみから再会の喜びに至る感情の変化が描かれた作品です。特に第1楽章冒頭のアダージョでは、音を一つひとつ丁寧に弾くだけでは音楽の流れが失われてしまいます。ゆっくりとしたテンポの中でも、フレーズの方向性や音と音とのつながりを意識して取り組みました。

本選で演奏した《変奏曲 作品3》は、暗くも美しい主題が12の変奏を通してさまざまな表情を見せる作品です。変奏ごとに変化する曲想や、多彩な音楽的性格が現れるところに大きな魅力を感じています。

5月頃に本選の曲を決めて申し込む必要があったため、以前から大好きだったシマノフスキの作品を本選で演奏したいと、先生に相談したことを覚えています。大学院で修士論文のテーマとしてシマノフスキを研究していくうちに、もっとシマノフスキに自分がハマっていきました(笑)。彼の作品の魅力を一人でも多くの方に伝えたいという思いで選曲しました。

──コンクール準備期間について教えてください。

井口
私は物事を後回しにしがちで、計画的に取り組むことが以前からの課題でした。大学院でご指導いただいている仲道先生には、修士論文や二台ピアノなど、大学院での活動との両立も考えながら、計画的に準備を進められるよう支えていただきました。「早めに見通しを立てて準備することの大切さ」という教えを胸に、今回は以前より十分な準備期間を設けられたと感じています。

練習を重ねても思うような音にならない日は、気持ちを切り替えてしっかり睡眠を取り、翌日また取り組むようにしていました。そうした積み重ねの中で、ふと弾けるようになったと感じる瞬間があります。すぐに結果を求めず、焦らず続けることを大切にしています。

高校生の頃からご指導いただいている渡辺先生には、長年にわたり演奏面だけでなく、精神面でも親身になって支えていただいております。今回のコンクールでも、作品の魅力を聴衆の皆様に届けられるよう、さまざまな角度から深くご指導いただきました。こうした熱心なご指導に支えられ、自分自身が納得できる演奏を目指して本番に臨むことができました。

これまで多くの先生方に恵まれ、温かく支えていただいたことに心より感謝申し上げます。

──練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?

井口さま

井口
練習では最初から通して弾くことだけで時間を終えてしまわないよう、特に苦手な箇所や暗譜に時間のかかる部分から優先的に取り組むことを意識しました。中でも最後の変奏は技術的に難しく、まずは確実に弾けるようにするため、リズム練習を繰り返し行いました。

また、特に苦労したのが主題の表現です。旋律の移り変わりや音楽の流れを自然に作ることが難しく、先生からも主題について深く考えるよう繰り返しご指導いただきました。

本選の約1か月前には、渡辺先生のご縁で別のホールで演奏する貴重な機会をいただきました。ホールによって響き方は異なりますが、実際にステージで演奏し、客席への音の届き方を考える経験は大変勉強になりました。その経験をその後の練習にも活かし、本番に向けて音の響かせ方や表現を見直すことができました。

──本番当日のお気持ちをお聞かせください。

井口
本番前日はよく眠れたと思います(笑)。当日の朝も食事をしっかり取り、自宅で練習をしてから会場へ向かいました。

実家のある長岡市から新潟市までは、高速道路を利用して車で約1時間かかります。以前は本番前の移動時間も緊張して過ごしていましたが、今回は自分なりに準備をやり切ったという思いがあり、比較的落ち着いていました。練習から一度離れ、気持ちを切り替える良い時間にもなったと思います。

りゅーとぴあは幼い頃から馴染みのあるホールですが、実際に演奏した経験は片手で数えられるほどしかありません。当日は他の出演者の演奏を少し客席で聴かせていただき、改めて大きなホールならではの豊かな響きを感じました。地元の思い入れのある舞台ということもあり、いざ自分が演奏するとなると緊張もありましたが、これまで学んできたことや作品の魅力を少しでも届けたいという思いで臨みました。

──新潟県音楽コンクールに挑戦する方へのメッセージをお願いします。

井口さま:事務局提供
本選会にて

井口
新潟県音楽コンクールは、私自身、幼い頃から何度も挑戦し、そのたびに多くのことを学ばせていただいた大切な場所です。

コンクールではどうしても結果が気になってしまいますし、私自身もそのような気持ちを何度も経験してきました。しかし、結果だけでなく、ひとつの目標に向かって作品と真剣に向き合い、自分の演奏を磨いていく過程にも大きな意味があると感じています。

また、このコンクールの魅力のひとつはピアノだけでなく、さまざまな楽器や声楽の演奏に触れられることだと思います。私自身、ほかの出演者の方々の演奏から多くの刺激を受け、それが自分自身の励みにもなってきました。

これから挑戦される皆様にも、結果だけにとらわれず、音楽と向き合う時間や、さまざまな演奏に触れられる貴重な機会を大切にしていただけたら嬉しいです。そして、これからも多くの方々がこのコンクールに参加され、音楽を通して互いに刺激を受け合える機会が続いていくことを願っています。

──今後の目標、将来の夢などをお聞かせください。

井口
現在、大学院ではシマノフスキについての修士論文を執筆しています。論文を書く中で、これまで知らなかったことや新たな発見も多く、作品についてさまざまな視点から考えることの大切さを感じています。

音楽は学べば学ぶほど新たな発見があり、終わりのないものだと思っています。まだまだ自分自身の課題も多く、きっと一生勉強し続けるのだろうと思います(笑)。これからもさまざまな作品に触れ、作品への理解を深めながら、自分自身の音楽表現を追求していきたいです。

また、今後はさまざまな場所で演奏する機会を増やしていきたいと考えています。特に生まれ育った新潟での演奏を大切にし、これまで支えてくださった方々への感謝の気持ちも込めて、音楽の魅力を届けられる演奏家になりたいと思っています。

井口さま
井口里佳 information

2026年11月8日(日)
第61回新潟県音楽コンクール 受賞者コンサート だいしほくえつホール(新潟市中央区)

2027年3月14日(日)
フレッシュ・アーティスト・コンサート 柏崎市文化会館アルフォーレ(新潟県柏崎市)

インタビューを終えて──編集後記

名前が呼ばれないまま、優秀賞、最優秀賞、県知事賞と進んでいく。最後に残った大賞で呼ばれたときの驚きから、お話は始まりました。

印象に残ったのは、5月の申込の段階で「シマノフスキを弾きたい」と先生に伝えたという一節です。修士論文のテーマとして研究を進めるうちに、さらに惹かれていったといいます。好きになった作品を調べて、考えて、舞台の上で差し出す。大賞という結果は、その道のりの先にありました。

長岡から高速道路で1時間、幼い頃から馴染んだりゅーとぴあのステージへ。これからも新潟での演奏を大切にしたい、という言葉が心に残っています。

井口里佳さんのこれからの歩みを、心から応援しております。 このたびは貴重なお話をありがとうございました。

井口さま:事務局提供
本選会にて

第61回新潟県音楽コンクールの概要については下記をご覧ください