第5回かわさきピアノコンクール【E部門 第1位・グランプリ】西川由衣さんにインタビュー!

西川さまアイキャッチ

2026年8月28日(金)、カルッツかわさき(神奈川県川崎市)で開催された「第5回かわさきピアノコンクール」E部門において、第1位・グランプリを受賞された西川由衣さん。川崎で生まれ育ち、第2回から挑戦を重ねて、4回目で地元のコンクールの頂点に立ちました。今回は同コンクールをはじめ、これから音楽コンクールに挑戦する方に向けてお話を伺いました。


取材・文|編集部

自分にピッタリな音楽コンクールが見つかる!国内外の音楽コンクール情報や結果まとめをわかりやすくご紹介し、次世代の音楽家や音楽ファンの皆様に寄り添います。


★このコンクールの最新情報・過去の結果はこちら

かわさきピアノコンクール 大会情報・結果一覧

プロフィール

西川 由衣(にしかわ ゆい/Yui Nishikawa)

神奈川県川崎市生まれ。慶應義塾大学 理工学部1年在学中。

3歳よりピアノを始める。2017〜2020年度、ヤマハマスタークラス ピアノ演奏研究コースに在籍。現在はMPA音学院にて今野尚美氏、ヤマハ音楽教室専門コース上級にて岡野愛己氏に師事。中学より吹奏楽部でクラリネットを始め、現在は慶應義塾大学ワグネル・ソサィエティー・オーケストラでクラリネットを担当。クラリネットを谷尻忍氏に師事。

趣味・特技
芸術鑑賞、カフェ巡り、散歩。音楽はクラシックのみならずK-POPもよく聴く。美術館や映画、自然のある場所へ出かけるのも楽しみのひとつ。ディズニーも大好き。英語・ドイツ語・韓国語の学習も趣味程度に続けている。出かけた先や旅行での経験が、音楽に活きることも多い。

主な受賞歴
ピティナ・ピアノコンペティション
第48回(2024年度)F級 全国大会ベスト17賞、第49回(2025年度)グランミューズJカテゴリー 全国大会入選

べーテン音楽コンクール
第16回(2022年度)自由曲コース ピアノ部門 中学生の部 ベスト20賞、第17回(2023年度)高校生の部 第4位、第18回(2024年度)高校生の部 ベスト10賞

かわさきピアノコンクール
第3回 E部門 本選出場、第4回 E部門 第2位、第5回 E部門 第1位・グランプリ

東京国際ピアノコンクール
第4回 小学生中学年部門 第4位、第7回 中学生部門 第3位

主な演奏活動
ヤマハマスタークラス ピアノ演奏研究コース Concert VIVACE 2018〜2020 出演
かわさきピアノコンクール入賞者コンサート(第4回・第5回)出演

※E部門は高校生部門。部門の学年は予選時(2025年度)のものです。

第5回かわさきピアノコンクールを終えて

西川さま

──コンクール、お疲れさまでした!受賞を知った瞬間のお気持ちと、終えた今のお気持ちをお聞かせください。

西川
まさかグランプリを受賞できるとは思っていなかったため、大変驚きました。そして、嬉しい気持ちでいっぱいです。本番まで多くの方々に支えていただき、たくさんの壁を乗り越えることができたからこそ、今回この賞をいただけたのだと感じています。練習期間も非常に充実していましたので、その成果としてこのような素晴らしい賞をいただくことができ、心から幸せに思います。

──「たくさんの壁」とは、どのような壁だったのでしょうか。

西川
やはり練習時間が取れないことが、自分のなかで悩んでいたところ、苦しんでいたところでした。オーケストラに入っていて、大学生なので勉強もあって。勉強と、ピアノ以外の音楽と、ピアノ。その時間の作り方、両立の仕方が難しくて、練習したいのにできない、という壁に何度も当たりました。

──このコンクールに挑戦しようと思われたきっかけを教えてください。

西川
ずっと川崎に住んでいて、「川崎」という名前がついているので気になった、というのがきっかけです。川崎市民として、かなり身近な存在ですし、自分の地元の名称がついたコンクールがあるのがすごく嬉しくて。しかもカルッツで弾けるというのもあって、出場させていただきました。

──第2回はD部門で予選を通過されながら、学校行事で本選に出られなかったそうですね。

西川
当時は学校の吹奏楽部に入っていて、文化祭の公演があったんです。どちらも出たかったのですが、時間が難しくて出られませんでした。正直あまり覚えていないのですが、当時はネガティブには捉えていなくて、むしろ「また来年も出よう」と思えたきっかけになりました。出られなかったことが、何度も出るきっかけになったのかなと思います。

──第3回は本選出場、第4回は第2位。回を重ねるなかで、目標は変わっていきましたか。

西川
明確に1位を取る、グランプリを取るという目標は決めていませんでした。カルッツの大きな舞台で弾けることが、本当に毎回楽しみだったんです。もちろん順位が決まるものだとは思うのですが、とにかくあの大きな舞台で弾けることを目標にして、楽しんで弾けたらいい結果もついてくると思って臨んでいました。去年が自分のなかでは最高なのかなと思っていたので、今回は賞を狙いすぎずに、もう楽しもうという気持ちで挑みました。コンクールだと、勝負だと思わずに、という感じですね。

──吹奏楽の県大会でも、カルッツかわさきの舞台に立たれています。同じホールにピアノで戻る感覚は、違うものでしたか。

本選舞台写真
ⓒかわさきピアノコンクール事務局

西川
ピアノのほうが正直慣れている感じはするのですが、やはりあの舞台に1人でぽつんという感じだったので、結構緊張しました。吹奏楽だと、周りに迷惑をかけちゃうかもしれない、というプレッシャーが結構あるんです。でもピアノは、聴いている人に迷惑をかけることはあまりないといいますか、ミスをしても結局自分しか悲しくならない。違う緊張感なんですよね。自分にだけ気を配るのがピアノで、吹奏楽は自分以外も気にしなければいけない。ピアノだと、大きすぎる舞台にぽつん、という感じでした。

──予選はリストの《伝説 水の上を歩くパオラの聖フランチェスコ》、本選はワーグナー=リストの《イゾルデの愛の死》。曲を変えられた理由を教えてください。

西川
高校に入ったころから、だいたい1年くらいの期間で大曲を1曲仕上げる、というようにしてきました。予選はちょうど動画審査だったので、いい動画が撮れていた曲がリストのその曲でした。本選は、ワーグナーが作ってリストが編曲したものを弾いたのですが、ずっとリストを学んできたので、また同じリストで。予選は綺麗な、美しいメロディーを表現する曲でしたが、本選は少しドロドロした場面や、大人っぽさもあるような曲にして。同じリストだけれど新しい挑戦ができる曲ということで、先生にも紹介していただいて選曲しました。

──もともとはオーケストラのための音楽です。ピアノではどのように作り上げていきましたか。

西川
和音といいますか、壮大な響きがあって、美しいメロディーもすごくたくさんあります。ここのメロディーはこの楽器、と自分のなかで決めて、その音色感を想像しながら、1人でピアノでオーケストラを奏でる、ということをしていました。この左手の動きはこの楽器かな、と結構細かく考えて作り上げましたし、実際のオーケストラの演奏もあるので、それも聴いて学んでいます。

──クラリネットのご経験は、ピアノの演奏に活きていますか。

西川様とクラリネット

西川
はい。息遣いや、ブレスですね。ピアノは呼吸が止まっていても弾けてしまうので、正直、あまり意識しなくてもできてしまいます。でも、やはりそれはすごく大事だと思っていて。フレーズの作り方や、ここは一息で歌えるのか、ということを、クラリネットをやってからより考えられるようになりました。単旋律の歌い方も、クラリネットは音が1つしか出ないので、それで歌わなければいけない。それはピアノにも、お互いの楽器に活きています。

──ドイツ語を学ばれていることは、ワーグナーの音楽とつながりましたか。

西川
ドイツ語は、高校2年生から第2外国語を学ばなければいけなくて、それで選択しました。やはりドイツはヨーロッパ音楽の国ですから、その言語を知りたいなと思って。ワーグナーの作品も、ドイツ語はまだ全然読めないのですが、ニュアンスや、ドイツ語の歌詞の歌い方、パッションはより伝わってくるようになりました。日本語とは全然違う、ちょっと音楽っぽい雰囲気がある言語だなと思います。そういうところが活きてきたのかもしれません。

──E部門は7分以内という規定があります。カットは意識されましたか。

西川
正直、意識してしまっていたような気もします。しないようにしようと思っても、やはり数字が発表されている以上は気にしてしまう自分もいて、カットされるつもりで弾いていた、というのが正直な感想です。ただ、ほかのコンクールに出るときも、なるべく意識しないように、とにかく自分の音楽に集中しよう、どこで止められても大丈夫、最後まで絶対弾けるんだから、という気持ちでいます。

集中しすぎてカットのベルを聞き逃してしまったこともあるくらいです。集中できればできるほどいい演奏になると思うので、今回もあまり意識しないよう努めました。集中した演奏はできたのだと思います。練習でも、ここで切れると分かってしまうと、そこから先を練習しなくなってしまうと思うので、時間を計る練習はあまりしませんでした。

──コンクールの準備期間について教えてください。オーケストラに学業に、時間の使い方が難しかったのではないでしょうか。

西川
本選があったのはちょうど夏休みでしたから、勉強ももちろんしなければいけないのですが、オーケストラとピアノを中心にした、音楽中心の生活でした。オーケストラの練習は13時から21時まで、週に3回あります。その合間に時間を作って練習するんです。昼の練習と夜の練習があって、本来は食事をとる時間に弾きに行くこともありました。ちょっとした隙間でも、ほかの人は練習できているかもしれないと思うと焦ってしまうので、少しでも弾くようにしていました。夜、帰ってからも練習です。

──もう嫌だ、と思うことはなかったのでしょうか。

西川
時間がないなら作るしかない、という感じですね。みんな24時間平等だから、しょうがないと思っていました。そのおかげで勉強はできなかったのですが、本当に音楽を好きになってしまいました。

──練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか。

西川さま

西川
やはり実際にピアノに触れる時間があまりないと、聴いて、頭のなかで弾くとか、想像で弾く、ということを結構やっていました。実際に触れなくても練習になるような。移動中とかも、ちょっとぼーっとする瞬間にそれを流したりして。楽譜を頭のなかで思い浮かべるというのは、暗譜ができているかどうかの確認にもなります。今日は寝たい、という日もあるのですが、そういうときは目をつぶって弾いています。目をつぶって練習するのも、結構いい練習なので。

──苦手な箇所には、どう取り組まれますか。

西川
本当に何回もやる、という感じですね。ここは間違えるな、と思った部分は、10回連続でできるまでやめないくらいやります。ピアノだけではなくクラリネットでも、指が回らないとか、うまく転んじゃうところがあったら、そこだけを何回も練習します。時間がないなら、できるところをやってもしょうがないので、できない部分を取り出してそこだけやって、できるようになったら前からつなげて弾く。苦手なところは、そうやって練習しています。

──体調がすぐれない時はどうされていますか。

西川
そういうときは休みますね。体調を崩すと結構長引いちゃうタイプなので、先週も風邪をひいて結構休んでしまいました。練習ができないと自分がダメだとなってしまうので、不調になったらすぐ休むと決めて、無理をしないようにしています。でも、体調が悪くてもピアノを弾いたら結構良くなる、というときもあります。

──先生方やご家族からは、どのような支えがありましたか。

西川
2人の先生方も、勉強が大変なことをすごく理解してくださって、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。レッスンでも、時間がないなかでどう練習すればいいのかを、すごくいつも一緒に考えてくださって。岡野先生には小学校からずっとお世話になっているのですが、本当にすごく理解してくださいますし、元気もいただけます。ピアノ以外の面でも、「時間がないならやるしかない」というのは、その先生から来ているような気もします。

今野先生には月に1回レッスンしていただいているのですが、本当にすごく変わるんです。自分のことをすごく理解してくださって、的確なアドバイスをいただけますし、表現の幅も広がりました。選曲を提案してくださったのも今野先生で、私に似合うような曲で、なおかつ私がより成長できるような曲を選んでくださいました。

家族は、コンクールの本番にも毎回来てくれますし、毎日のお弁当も、高校でお弁当は終わりだと思っていたら、大学に入ってからも作ってくれています。自分1人では絶対にスケジューリングできないので、家族がいなかったらできていないなと思います。実は家族は音楽とは全く無縁で、ピアノも3歳のときに、親が「とりあえずピアノ教室に入れてみた」という始まりでした。両親とも特にクラシックとは無縁なので、なんで私がこんなにやれるようになったのか分からない、ともよく言っています。

──本番当日は、どのようなお気持ちで迎えられましたか。

西川
やはり緊張していました。何回も出ているとはいえ緊張しますし、次の日から合宿なのにパッキングが終わっていない、という気持ちもあって、本当にバタバタしていて。ただ、それは絶対に演奏に出さないようにしないといけません。本番前はいつも、自分の録音を聴いて集中するようにしています。程よい緊張がないと集中できないタイプなので、ちゃんと緊張して、いい緊張感と集中力を作れたのかなと思います。

──演奏中のことは、どのくらい覚えていらっしゃいますか。

【E部門 第1位】ワーグナー=リスト Wagner = Liszt /イゾルデの愛の死 Isoldens Liebestod【西川由衣】
ⓒかわさきピアノコンクール事務局

西川
本当に、記憶がないくらい緊張していたみたいで。そもそもカットのベルが鳴らなかったこと、カットされなかったことに驚いたくらいで、ここの音はこうだったからこうしなきゃ、という反省が出てこないんです。とにかく集中して弾き終えたのかな、という感じですね。ホールは、やはり大きいと思いました。大きいからこそ、弾いているときはちゃんと後ろまで届いているかな、響いているかな、今のは響かなかったから響かせよう、ということは考えていたと思います。でも、やはり覚えていないんです。最後のお辞儀のときに、やっとちゃんと戻ってきた、という感じでした。

──受賞の知らせは、どこで聞かれたのでしょうか。

西川
本選の日から合宿だったので、1日遅れて行く形になりました。とにかく早くオーケストラに戻らなきゃ、という気持ちもありましたが、着いて30分か1時間くらいで、ちょうど結果が出て。一瞬で喜んで、切り替えてオーケストラの練習をずっとする、という毎日です。余韻に浸りながら練習して、という感じでしたが、ずっと音楽をやれているので、もうそれだけで幸せでした。

──かわさきピアノコンクールに挑戦する方へ、メッセージをお願いします。

西川さま
ⓒかわさきピアノコンクール事務局

西川
挑戦は絶対にいい経験になります。カルッツで弾けること自体が素晴らしいことですし、自分の新しい一面も見つけられるはずです。コンクールの雰囲気はそれぞれですが、いい緊張感があって、大きな舞台があって、ピアノがある。挑戦しやすいコンクールだと思います。私が川崎市民で、親しんでしまっているというのもあるのですが、ぜひいろんな方に挑戦してほしいです。

──音楽を続けながら、進学先は理工学部。どのように決められたのですか。

西川
一時期はちょっと悩んだのですが、音楽以外の世界にも触れつつ、理工学部で学びたいと思いました。もっと自分にとってたくさんの道、選択肢が残っていそうな理工学部にしました。理系のほうが得意だった、というのもあります。中学受験をして今の学校に入ったので内部進学という形になるのですが、両立は難しくて、今でも正解は分かっていないという状態です。完璧に両立できているとは思えませんし、成績の面でもやはり難しいなと感じています。それでも、自分で選んだ道ですから。

──今後の目標、将来の夢などをお聞かせください。

西川
音楽はもちろん、ずっと続けたいと思っています。そして理工学部に入ったからこそ、将来は、大きく言えば人を助ける仕事を、技術開発の面でしたいなと思っていて。物理の音とか、そういうところからもいろいろな医療技術の開発があるので、自分の好きなこととやりたいことを結びつけられるくらいまで勉強したい、というのが今の目標です。音楽は楽しみながら続けて、勉強も本当に頑張って。今はそんなふうに考えています。

──10年後は、どうなっていたいですか。

西川
先ほどお話しした将来の夢が叶えられているといいです。楽しんで、幸せに暮らしていたら、それだけでいいのですが。そのころには職業に就いていて、ピアノや音楽も続けられていたら。音楽はもう絶対にやめたくないと思っているので、幸せに暮らしていてほしいですね。

西川さま
西川由衣 information

【第5回かわさきピアノコンクール 入賞者コンサート】
2026年11月15日(日)12:00開演(11:30開場)※15:00頃終演予定
カルッツかわさき(アクトスタジオ)
第5回本選において第1位〜第3位、大会優秀賞を受賞された方が出演

インタビューを終えて──編集後記

オーケストラの練習は13時から21時まで、週に3回。その昼と夜の合間、本来は食事をとる時間にピアノを弾きに行く。夜、帰ってからも弾く。聞いているだけで息が詰まりそうな日々を、西川さんは淡々と語ってくださいました。

その日々をどう受け止めているのかを伺っても、笑顔のまま、ごく当たり前のこととして話されます。こちらが言葉を探すことになりました。

時間は、誰にとっても同じだけあります。足りないと言うのは簡単で、そのなかで何を手放さないかを決めるのは難しい。取材のあいだ、自分の時間の使い方を振り返ることになりました。

限られた時間のなかで、好きなものを手放さないこと。西川さんのこれからの歩みを、心から応援しております。
このたびは貴重なお話をありがとうございました。

西川さま
ⓒかわさきピアノコンクール事務局

第5回かわさきピアノコンクールの概要については下記をご覧ください

第5回かわさきピアノコンクールの結果については下記をご覧ください

★このコンクールの最新情報・過去の結果はこちら

かわさきピアノコンクール 大会情報・結果一覧