【高校の部B部門 金賞・21世紀賞】第45回毎日こどもピアノコンクール 根本壯一郎さんにインタビュー!

根本壯一郎さま

2026年8月8日(土)、札幌サンプラザ コンサートホール(札幌市北区)で開催された「第45回毎日こどもピアノコンクール」高校の部B部門において金賞、さらに本選全部門の金賞受賞者の中から最も優秀と認められた小学5年生〜高校生の1名に贈られる「21世紀賞」を受賞された根本壯一郎さん。今回は同コンクールをはじめ、これから音楽コンクールに挑戦する方に向けてお話を伺いました。


取材・文|編集部

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プロフィール

根本 壯一郎(ねもと そういちろう/Soichiro Nemoto)

札幌市在住 / 市立札幌平岸高等学校2年

4歳よりピアノを始める。通っていた幼稚園の課外活動にピアノ教室があり、約5倍の抽選に母親が当選したことがきっかけ。室井直子氏に師事し、現在は札幌コンセルヴァトワールで宮澤むじか、宮澤功行の両氏に師事。音楽理論は中学生の頃より南聡氏に学ぶ。

SONY CSL主催ピアノアカデミープログラム第4・5期生として、Dina Yoffe、鯛中卓也、吉岡由衣、吉武優、古屋晋一の各氏のレッスンを受ける。

趣味・特技
鉄道。基本は乗り鉄で、最近は撮り鉄も。

主な受賞歴
全日本学生音楽コンクール 第76回(2022年度) 中学校の部 北海道大会 第2位/第77回(2023年度) 中学校の部 北海道大会 第1位、全国大会 第3位/第79回(2025年度) 高校の部 北海道大会 第2位、全国大会 入選

第7回ベートーヴェン国際ピアノコンクール アジア本選会(2022年度)
C部門 第1位、横浜シンフォニエッタ賞、特別賞

第1回さいたま国際音楽コンクール
ユース部門 第1位、審査員特別賞

第13回日本バッハコンクール
全国大会 中学B部門 金賞

第1回群馬国際音楽コンクール
D部門 第1位、登利平賞

第48回ピティナ・ピアノコンペティション(2024年度)
G級 全国大会 入選

第3回小西健二音楽堂ピアノコンクール(2025年度)
プロフェッショナル部門 最優秀賞

第45回毎日こどもピアノコンクール(2026年度)
高校の部B部門 金賞、21世紀賞

第45回毎日こどもピアノコンクールを終えて

取材は根本さんが通う札幌コンセルヴァトワールのカノンホールで、宮澤むじか先生、宮澤功行先生ご同席のもと行いました。むじか先生が毎週のレッスンを、功行先生が月2回の指導を担当されています。

──コンクール、お疲れさまでした!受賞を知った瞬間のお気持ちと、終えた今のお気持ちをお聞かせください。

根本
表彰式は、努力賞から順番に名前が呼ばれていく形でした。それが銀賞まで進んでも、自分の名前は呼ばれないままで。これはもう何もないのかもしれない、とドキドキしながら待っていました。

だから自分が呼ばれた瞬間は、「やった」という気持ちと同時に、肩の荷が下りた、という感覚のほうが大きかったかもしれません。努力賞以上でなければ札幌コンサートホールKitaraの大ホールで弾けないと思っていたので。

21世紀賞のほうは、翌日の中学校の部が終わってからの発表でした。もうお祈りタイムです。母とカフェで、結果のページを何度も更新しながら待っていたのですが、僕のほうが表示が遅くて。父から携帯に「おめでとう」と先に連絡が来て、「あ、取ったんだ」という感じでした(笑)。

金賞と21世紀賞をいただけたことは、本当に嬉しかったです。先生方にも大変よくしていただいたので、感謝しかありません。

根本さま
毎日こどもピアノコンクール事務局撮影

──なぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?

根本
これまでもいろいろなコンクールに出て、さまざまなホールで弾かせていただいてきたのですが、大ホールで弾く経験がなかったんです。

先生とお話ししているときにそういう流れになって、今回の毎日こどもピアノコンクールで努力賞以上になれば大ホールで弾けると教えていただきました。ちょうどいい機会じゃないかと思って、挑戦することにしました。正直に言うと、それが第一の目標みたいな感じでしたね。

──課題曲・選択曲と、それぞれの選曲理由を教えてください。

根本
課題曲は、バッハ〈平均律クラヴィーア曲集〉第2巻第19番のフーガを選びました。

もともとこの曲は、昨年あたりに出会ったものです。僕は練習の合間に好きな楽譜を引っ張り出してきて、好きな曲を探して新しい曲をパラパラと弾く癖があるんですけど、そのときにこの曲がいいなと思って。もちろんフーガも好きなのですが、実はプレリュードのほうが一番好きなんです。バッハ自身も好きになったので、この曲にしようと思いました。

選択曲は、ラフマニノフ〈音の絵〉作品39-5です。バッハのほうは3声のシンプルな曲なので、もう少しテクニックを見せられるというか、迫力で魅せられる曲をと考えました。この曲も気に入っていたので選びました。

課題曲のバッハには、思いがけない縁もありました。功行先生が、こう明かします。「実はこのフーガ、私が桐朋を受験したときの課題曲だったんです。ただ、時代が変わっているので、彼はまったく別の弾き方をしていますよ。私の頃は、フーガの弾き方がもっと厳格に決まっていました」

──先生の頃との違いは、ご自身で意識されたものですか?

根本
先生と違う弾き方をしようと思ったわけではないですし、なぜ違いが生まれたのかは僕にも分からないのですが、好きに弾いてしまうタイプなので、自然とそうなったのかなと思います。でもレッスンで昔の弾き方も教わって、それはすごくいいなと思ったので、家で実践してみて取り入れている部分もあります。

──コンクール準備期間について教えてください。

根本さま

根本
どのコンクールでも、発表会でも、本番の前にいつも意識していることなのですが、何よりも体調を崩さないことですね。体調が悪いと何にもならないので。

実は毎日こどもピアノコンクールの予選の前は、少し風邪気味でした。鼻水が出るくらいの症状が続いていて。でも熱もなかったですし、練習もできましたので、そこまで影響はありませんでした。ただ、今後は気をつけたいなと思います。

体調管理で必ずやっていることが2つあります。ひとつは、外出先から帰ったら、手洗いうがいはもちろんですが、その後すぐにお風呂に入って部屋着に着替えること。感染症の予防に効果があると思っています。もうひとつは、本番前の2、3日は生ものと極端に脂っこいものを避けること。初めての食材も食べないようにしています。

学校との両立については、今回のコンクールが夏休みと重なっていたこともあって、そこまで大変ではありませんでした。僕はピアノに全力を振り絞ってしまうタイプなので、「学校の勉強はこれ、いいや」となってしまうこともあるんですけど(笑)。学校の帰り道にレッスンに寄ったりもしていました。

実は今、取材していただいているこの札幌コンセルヴァトワールのすぐ近くに高校がありまして。その高校を選んだ理由も、ここが近いからなんです。そのぶん、学業との両立はしやすいなと思っています。

──練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?

根本
予選のときは、大ホールが一番の目標だったので、まず通らなければ話にならないと思っていました。だからそこまで大胆なことはせず、安全に行こうと考えながら練習していました。平常心、という感じですね。

予選は銀賞だったのですが、どこか悔しい自分がいたのか、先生に「逆転優勝します」と宣言してしまいまして。言った後の帰り道に、「何を軽く言ってるんだ、何を簡単なことのように言ってしまったんだ」と我に返りました(笑)。でも、これは取らなきゃやばいぞとなって、本選は本気モードで練習しました。

むじか先生も「頑張って」と後押ししてくださって、感謝しかないです。両親とも、逆転優勝しようという決意を固めていました。

その宣言を聞いたときのことを、功行先生はこう振り返ります。「彼、言ったらやりますよ。それだけのものを持っていますからね」

予選のあとは夏休み期間で、1日中たっぷり時間がありました。ただ、普通科の高校に通っていることもあって、午前中は勉強の時間に充てていました。ピアノの練習は昼食後、午後から夜にかけての時間帯です。

工夫している点としては、今回のコンクールに限りませんが、練習の最初にウォーミングアップをせず、本番の曲をいきなり一度通して弾いてみて、その時点での実力を確認するようにしています。同じようなことで、レッスン直前にはわざと全く練習せずに向かって、一発勝負でどれくらい弾けるのかを確かめることもよくあります。

また、苦手なポイントを見つけ出すために、スマホで録音して注意深く聴きました。ボイスメモの波形を見ると、音の粒が揃っているか、リズムが均等に弾けているかといったことがある程度見えるので、この機能も利用していました。

──高校の部B部門は、出入りを含め6〜7分を目途に演奏がカットされます。時間の制限は、どのように考えて選曲されましたか?

根本
カットは審査に影響しないと書かれていたので、切られてしまったら仕方がないとは思っていました。でも、できれば最後まで弾いて、きちんと音楽を完結させたかったんです。だから、7分以内に収まるように選曲しました。

ただ、実際はもう少しシビアでした。今年は出入りを含めて6分ほどだったようです。絶対に切られたくないのであれば、6分以内が安全だと思います。

2曲で6分は、高校生にとってはかなり短い時間です。考え方はそれぞれで、最初からカットされる前提で長い曲を選んでいる方も多くいらっしゃいました。

──本番当日のお気持ちをお聞かせください。

根本
予選のときは、正直めちゃくちゃ緊張しました。自分でも珍しいなという感じだったんですけど、やっぱり通らなきゃいけない、通るのが絶対だという思いがあったので、そのぶん緊張してしまったのかなと思います。緊張すると体が固まってしまうので、舞台裏をずっと歩き回っていたのですが、それでもあまり収まらなくて。

本選は、先生にも「自由に弾きなさい」と言っていただいていました。それに加えて、母から「大ホールはもう決まっているんだから自由に弾きなさい」と言われていたんです。その気持ちで舞台に上がりました。

ところが、これは母のとんだ勘違いで(笑)。本選に出た全員が努力賞以上をもらえるものだと思い込んでいたんですね。だから表彰式で「努力賞は──」と呼ばれ始めた瞬間に震えが来て、「あれ、落ちてる可能性あるじゃん」と気づきました。

でも結果的には、それが良かったのだと思います。どんな結果になっても悔いはないなと確認できて、これは攻めていっていいなと決断できました。ステージに出てしまえば、お客さんが見えて安心するタイプなので、本選はいつも通り弾けました。お客さんが多ければ多いほど、エネルギーをもらえる気がするんです。

むじか先生も、根本さんの本番での強さを語ります。「レッスンでは消化しきれなかったところが、本番になると『あれ、いつもより良いかもしれない』という感じになるんです。毎回のステージで今回は何をやってくれるのかな、というワクワク感がありますね」

第45回毎日こどもピアノコンクール本選【高校の部】B部門 金賞・21世紀賞:根本壯一郎
第45回毎日こどもピアノコンクール本選【高校の部】B部門 金賞・21世紀賞:根本壯一郎さん 撮影:株式会社luzCraft(ルスクラフト)
※同部門は演奏が6〜7分を目途にカットされるため、映像は終盤で終わっています

──毎日こどもピアノコンクールに挑戦する方へのメッセージをお願いします。

根本
今回の本選で、結構自由に弾けたことが良い結果につながったのだろうと思っています。

あれこれ考えながら弾いていると、表現が縮こまってしまいますし、何よりも大きなミスにつながりかねないと僕は思っているんです。なので、本番を楽しんで、奇跡の一発を信じて弾いていただけたらなと思います。

──今後の目標、将来の夢などをお聞かせください。

根本
もちろん、もっとたくさんコンクールに出て良い成績を残したいという思いはあります。でも最終的には、日本人として、そして北海道人として、世界に羽ばたけるような演奏家になりたいと思っています。

僕は、記録より記憶に残る人になりたいんです。そして、「音楽は人を救える」と常々思っているので、世界の人々を演奏で救えるような演奏家になりたいと思っています。

コンクールは、同じ毎日新聞社さん主催の全日本学生音楽コンクールに今年出ることにいたしました。そのほかにも、大きな海外の国際コンクールには出てみたいです。一番はやはりショパン国際ピアノコンクールですね。日本人がまだ優勝していないので、一番最初になれたらいいな、という妄想をしております(笑)。

大学は、海外への進学を第一に目指しています。

根本さん
豊平館の広間(札幌市)にて 2025年5月24日 クラスコンサート

先生方から見た根本壯一郎さん

取材の終わりに、お二人へ、根本さんの演奏の魅力と、これからへの期待を伺いました。

「本番になったときに、ぐっと人の心を揺さぶる演奏ができること。本番で力を出せるところが、すごく魅力的だなと思います」(むじか先生)

「やると決めたときの集中力は、並外れたものがあります」と語るのは功行先生。指導については、こんな話も聞かせてくださいました。

「求めてくる人には、応えます。求めよ、さらば与えられん、ですね。優れた人はどんどん見てもらって、世界に羽ばたいて、またそこで挫折して。それでいいと思うんです」

そして、期待はすでに日本の外へ向いています。「早く世界で勝負してもらいたい。2か月前もフランスに行ってきましたが、海外の同世代は本当にすごい。そういう中で揉まれて、また突き抜けてほしいと思っています。クラシックは堅いと思われがちですが、彼によってクラシックが面白くなった、楽しくなった。そういうきっかけにしてもらいたいですね」

ふきのとうホールにて 2025年12月6日 札幌コンセルヴァトワールの発表会終了後。
 宮澤むじか先生、宮澤功行先生、宮澤陽子先生とともに
根本壯一郎 information

2027年1月12日(火) 毎日こどもピアノコンクール45周年記念 特別コンサート
会場:札幌コンサートホールKitara 大ホール
※1月11日・12日の二日間開催。根本さんは12日の最後の演奏者として、18時頃の出演予定です(時間は変更になる場合があります)

2027年1月17日(日) ソロリサイタル
会場:小西健二音楽堂(北海道東川町)

インタビューを終えて──編集後記

「大ホールで弾いてみたい」。根本さんの挑戦は、そんなまっすぐな願いから始まりました。予選は銀賞。その悔しさから思わず口をついた「逆転優勝します」という宣言に、ご自身でも驚いたと笑います。それでも言葉を引き受けて練習に向かった先に、金賞と21世紀賞がありました。

その「本気モード」の中身は、意外なほど静かなものでした。ウォーミングアップをせずにいきなり本番の曲を通し、今の実力を確かめる。あえて練習せずにレッスンへ向かい、一発勝負でどこまで弾けるかを測る。録音した音を波形で眺めて、音の粒とリズムのわずかな乱れを探す。舞台の上の大胆さは、こうした冷静な自己観察の上に立っているのだと感じました。

お話を伺っていて印象的だったのは、根本さんを囲む方々のあたたかさです。宣言を聞いて「頑張って」と背中を押したむじか先生、「彼は言ったらやりますよ」と信頼を寄せる功行先生、そして本番前に「自由に弾きなさい」と送り出したご家族。取材は札幌コンセルヴァトワールのカノンホールから、先生方とご一緒に応じてくださいました。

「記録より記憶に残る人になりたい」。クラシックの入り口になってほしいという先生の願いと、ショパン国際という本人の目標。そのどちらもが同じ熱量で語られていたことが忘れられません。

そして1月12日、根本さんは札幌コンサートホールKitaraの大ホールに立ちます。二日間にわたる記念特別コンサートの、最後の演奏者として。「大ホールで弾いてみたい」というあの願いが、かたちになる日です。17日には小西健二音楽堂でのソロリサイタルも控えています。北海道から世界へ。根本さんのこれからの歩みを、心から応援しております。

お忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。

お気に入りの京急2100系がやってきた瞬間。京急本線・花月総持寺駅にて(2025年7月5日)

第45回毎日こどもピアノコンクールの概要については下記をご覧ください

第45回毎日こどもピアノコンクールの結果については下記をご覧ください

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