2026年1月18日(日)、武蔵野音楽大学ブラームスホールにて開催された「第6回ASIS全日本学生国際ソロコンクール」にてグランプリ、そして【高校生の部】最優秀賞を受賞された大國さん。今回は同コンクールをはじめ、これから音楽コンクールに挑戦する方に向けてお話を伺いました。
取材・文|編集部
自分にピッタリな音楽コンクールが見つかる!国内外の音楽コンクール情報や結果まとめをわかりやすくご紹介し、次世代の音楽家や音楽ファンの皆様に寄り添います。
プロフィール
大國朔也(Sakuya Okuni)Instagram
島根県出雲市出身 / 出雲北陵高等学校3年に在籍(今春卒業予定)
現在はくらしき作陽大学の菅付章宏氏に師事。
幼少期より常に童謡や歌謡曲が流れる環境に育ち、ピアノや歌に親しむ。中学校の吹奏楽部でオーボエと出会い、その魅力に開眼。専門的な指導を仰ぎながら着実に才能を磨いている。
趣味・特技
魚が好きで、捌いて食べるのが得意。捌いた魚をよくインスタに投稿している。絵を描くのも好き。
これまでの演奏活動
出雲北陵高等学校吹奏楽部として、全日本吹奏楽コンクール全国大会に3度、全日本マーチングコンテスト全国大会に3度出場。
ASIS全日本学生国際ソロコンクールを終えて
──コンクール、お疲れさまでした!終えた今のお気持ちをお聞かせください。
大國
ありがとうございます! 実は結果が発表された時、ちょうど練習中でメールに気づかなかったんです。一緒に出場した友人の親御さんから母に「おめでとう」と連絡をいただいて、初めて結果を知りました。
「どこかに入賞できたのかな?」と思って見に行ったら、まさかのグランプリで…。あの時は本当に大騒ぎしてしまいました。
発表から少し経った今は、この結果が大きな自信になっています。4月に大学へ入学するまでの期間、新しい曲に挑戦したり、今までの曲を復習したりと、さらに練習に励むための最高のモチベーションになっています。
──なぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?
大國
一番の理由は、大学の特待生試験に向けた「ステップアップ」のためです。特待生として大学生活をスタートさせたいという目標があったので、試験と同じ曲を大きな本番で演奏して、自分の実力を試したいと考えました。
また、自分が通う高校の吹奏楽部は、吹奏楽とマーチングの両方で全国大会を目指す非常に多忙な環境です。副部長を務めていたこともあり、夏から秋は部活動に全力投球で、ソロコンクールに出るチャンスがなかなかありませんでした。
島根という土地柄、専門の先生のレッスンを受けられる機会も2ヶ月に1回程度と限られていたので、この2月の時期に大きな舞台を経験することは、これからの音楽生活に向けて自分を成長させるための、またとないチャンスだと思って決意しました。
──自由曲は何を演奏されましたか? 選曲理由も併せて教えてください。
大國
ハイドンの『オーボエ協奏曲』を演奏しました。最大の理由は、大学の特待生試験の課題曲だったからというのもありますが、取り組んでいくうちに自分でも非常に好きな曲になりました。
ハイドンの時代の音楽はとてもシンプルですが、そこには音楽の形が確立され始めた頃の、純粋な美しさがあります。最近の複雑な曲も素晴らしい一方で、どうしても聴くのに体力がいる側面もあると思うんです。その点、この曲は基本に忠実な音階が少しずつ変化していくような心地よさがあり、聴く人に安らぎを与えてくれます。
軽やかで華麗なパッセージもあれば、歌うような美しいフレーズもある。そんな技術と表現のバランスが取れたこの曲の魅力を、自分なりにしっかり届けたいと思って選びました。
──オーボエとの出会いを教えてください。
大國
オーボエを始めたのは中学1年生の時で、本当に偶然の出会いでした。吹奏楽部に入った当初、自分は第1希望にアルトサックスを書いていたのですが、顧問の先生が「君はオーボエだ」と直感で選んでくださったのが始まりです。
始めた直後にコロナ禍になり、さらに上の代にオーボエがいなかったこともあって、実は部活動人生のほとんどを「先輩がいない」という環境で過ごしました。でも、だからこそ「自分でやるしかない」と必死になれた。その経験が今の自分に繋がっていると感じます。
中学時代、コンクールで悔しい思いをしたことで「もっと高いレベルで挑戦したい」という気持ちが強まり、全国大会常連の高校の音楽コースへ進むことを決めました。高校の吹奏楽部は1ヶ月に1日休みがあるかないかという非常に多忙な環境です。そのため、小学1年生から9年間続けていたピアノ教室はやめる決断をしましたが、現在も学校の授業などでピアノを弾く機会はあります。
──吹奏楽部の活動とソロ活動の両立は大変でしたか?
大國
高校の吹奏楽部は全国大会を目指す多忙な環境だったので、実はソロの機会はほとんどありませんでした。専門の先生のレッスンも2ヶ月に1回程度と限られていましたが、自分は練習を「嫌だ」と思ったことがほぼなくて。練習場所に行きさえすれば、基礎練習も楽しみながら没頭できるタイプなんです。
レッスンのない期間は、YouTubeやサブスクでプロの演奏を聴き込み、歌い方を研究して独学で補ってきました。部活動で忙しい夏や秋を越え、今のこの時期(冬)にようやくソロに集中できる。そんな限られた時間の中で、自分なりに試行錯誤しながら準備を進めてきました。
──コンクール準備期間について教えてください。
大國
何か特別なことをするというよりは、常に「いつも通りやる」ことを基本にしていました。自分の演奏を録音して聴き返し、不足している箇所を見つけては、ひたすら技術的な練習に時間を費やしました。
歌心(表現)については、普段聴いている音楽から生み出されるものだと考えているので、練習ではパッセージの指使いやタンギングの質など、細かい技術の向上に集中して取り組みました。
──周囲の方からのサポートで、特に印象に残っていることはありますか?
大國
本当に多くの方に支えられてここまで来ました。自分自身、食にこだわりがある方なのですが、それは料理好きな母の影響なんです。母が当たり前のように作ってくれる美味しいご飯があることは、自分にとって本当に大きな支えでした。
また、自分は本当になかなか「しっかりしてない」ところがあって、友人たちにもたくさん助けてもらいました。自分一人でどうにかしようと頑張るよりも、今は「色々な人に助けてもらおう」というスタンスなのですが、そうやって周りが支えてくれる環境があったからこそ、今の自分があると思っています。
──練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?
大國
今回の曲は速いパッセージが多く、いわば細かい音がずっと続いているような状態です。そのため、時間配分としては、まず楽器をしっかり鳴らすための基礎に3割。残りの6割は、難しい箇所をテンポを落として少しずつ速くしていく練習に充て、あとの1割で他を補う……という感覚でした。これとは別に、理想のリード作りにもずっと時間をかけています。
オーボエは、リードや吹き方ひとつですぐに音が汚くなってしまう、構造的にもシビアな楽器です。だからこそ、まずは「いい音」が出せないと話にならない、という思いが強くあります。
自分が目指しているのは、周りの邪魔をせず、不快感も与えないけれど、聴いている人の耳に自然と入ってしまうような音です。本当にうまい方の演奏は、低音から高音まで、下から上まですごく「ふくよかな響き」を持っていて、こちらが聞こうとしなくても心地よく耳に届いてくる。そういう、耳に残りやすい魅力的な音を出せるのがオーボエの良さだと思うので、そこを一番の目標にして取り組んでいます。
──本番当日のお気持ちをお聞かせください。
大國
コンクールの前日に、出場する友人たちと一緒に飛行機で現地入りしました。当日の朝はスタジオを借りて練習し、趣のある”いにしえ”のカフェに入って。そこですごく優雅にリラックスしすぎてしまい、案外時間がギリギリになって最後は駅まで急いで走るほどだったのですが、そのおかげで余計な緊張をせずに本番を迎えられた気がします(笑)。
今回のホールは、自分にとって本当に楽しい場所でした。音出しの時からすごくよく音が飛ぶのを感じましたし、無理に力んで頑張らなくても、ホールが音を響かせて助けてくれる感覚があったんです。
実は、直前まで2本のリードで悩んでいました。少し荒さがあるかなと心配していた方のリードがあったのですが、実際にステージ上でチューニングをした時、「このホールの包容力なら、このリードでいける」と確信できました。ホールが自分の音楽を引き出してくれたおかげで、練習してきた理想に近い、自分らしい演奏ができたと思っています。
──ASIS全日本学生国際ソロコンクールに挑戦する方へのメッセージをお願いします。
大國
このコンクールは、自分のように「次の目標に向けたステップアップ」として受けるのにも、純粋に結果を求めるのにも、どちらにとっても素晴らしい場所だと思います。
自分も今回が初めてのコンクールでしたが、審査員の方々が指揮者や他楽器のプロ、そして吹奏楽を客観的な視点で見ている作家の方など、多角的に見てくださるのが大きな魅力だと感じました。
やっぱり音楽は、聴いてくれる人がいて初めて意味を持つものだと思うんです。プロの音楽家や作家の方に「一人の聴衆」として聴いてもらい、認めてもらえるという経験は、何物にも代えがたい自信になります。
コンクールに対して怖さを感じている人にとっても、最初の一歩としてすごくいい場所だと思います。ぜひ挑戦してみてください!
──審査員全員が1位という圧倒的な評価でのグランプリでした。改めて、今の心境を教えてください。
大國
正直に言って、純粋にすごく嬉しいですし、大きな自信になりました。よく「謙虚に」と言われますが、自分は、出た結果に対しては素直に喜ぶべきだと思っています。
同時に、グランプリをいただいたことで、自分の中に「いい意味での枷(かせ)」ができたとも感じています。これから先、どんな場所で吹くときも「グランプリを取った」という誇りと責任がついてくる。それは、自分にとって「必要なプライド」だと思っています。
もちろん、審査は時の運もありますが、これから音楽を続けていく上で、下手な演奏はできないという良い緊張感になりました。周りの友人や後輩からもたくさん祝福してもらったので、その期待に応えられるよう、この経験を糧にこれからも自分の音楽を磨いていきたいです。
──今後の目標、将来の夢などをお聞かせください。
大國
まずは大学で先生からしっかりと学び、ゆくゆくは本場のドイツへ留学して、自分が目標にしている人たちの音楽を直接吸収したいです。
自分は、歴史は繰り返すものだと思っています。昔のルネサンスがそうだったように、いつかまたクラシックのような芸術を復興させようという流れが来るかもしれない。その時に、日本の音楽シーンの主流にクラシックを「ねじ込んでいける」ような、そんな存在になれたらいいなと思っています。
先ほどもお話した通り、自分は全然しっかりしていなくて、受験の時に電車にカバンを忘れて友達に迷惑をかけたり、本当に忘れ物も多いんです。でも、そんな自分を家族や友人たちがずっと助けてくれました。特に祖母は自分を育ててくれ、今使っている楽器も買ってくれました。
高2の夏頃、色々な人に助けてもらっていることに気づいて、自分に何ができるかと考えたとき、「音楽で返す」くらいしかないなと思ったんです。「皆さんが助けてくれたから、ここまで音を届けられるようになったよ」と伝えられるようになることが、これからの自分の目標です。
インタビューを終えて──編集後記
「自分は本当になかなか、しっかりしていないんです」と、照れくさそうに笑う姿が印象的だった大國朔也さん。初出場でグランプリ受賞という輝かしい結果の裏側を語るその言葉からは、何よりも自分を支えてくれた人々や環境に対する静かで深い感謝が溢れ出していました。
オーボエ特有のシビアな音づくりへのこだわりや、ルネサンスを引き合いに出した音楽史への洞察、そして「日本の音楽シーンの主流にクラシックをねじ込みたい」という静かな野心。その言葉のひとつひとつに、先輩不在の5年間を独学と情熱で切り拓いてきた、一人の演奏家としての凄みを感じます。
「皆さんに助けてもらった分、音楽で返したい」——。
その真っ直ぐな想いが、あの「ホールの包容力」をも味方につけた、ふくよかな響きを生み出したのかもしれません。彼の奏でる音が、いつか本場ドイツ、そして日本の音楽シーンの未来にどう響き渡っていくのか。これからの挑戦が楽しみでなりません。大國さん、お忙しいところ、そして卒業を控えた大切な時期に、貴重なお話を本当にありがとうございました!
第6回ASIS全日本学生国際ソロコンクール 管打楽器部門の概要については下記をご覧ください
第6回ASIS全日本学生国際ソロコンクール 管打楽器部門の結果については下記をご覧ください






