2026年1月4日(日)、品川区立五反田文化センター音楽ホールにて開催された「第16回東京ピアノコンクール」。全部門の最高位である最優秀賞、さらに大学部門第1位、近代フランス音楽賞を受賞された菅原さん。今回は同コンクールをはじめ、これから音楽コンクールに挑戦する方に向けてお話を伺いました。
取材・文|編集部
自分にピッタリな音楽コンクールが見つかる!国内外の音楽コンクール情報や結果まとめをわかりやすくご紹介し、次世代の音楽家や音楽ファンの皆様に寄り添います。
プロフィール
受賞歴
ショパン国際ピアノコンクール in ASIA:
第20回 コンツェルトAB部門 金賞およびコンツェルト賞
第21回・第22回 中学生部門 銀賞
第24回 高校生部門 金賞
ピティナ・ピアノコンペティション
第42回D級、第43回E級、第45回F級、第47回Pre特級ベスト賞、第49回特級三次予選奨励賞
ラフマニノフ国際ピアノコンクール JAPAN 2021
F部門 第1位
第1回群馬国際音楽コンクール
E部門 第1位、登利平賞
第2回全日本ピアノコンクール 2021
E級 第3位
第77回全日本学生音楽コンクール
高校生の部 第3位、横浜市民賞
第16回東京ピアノコンクール
最優秀賞、大学生部門第1位、近代フランス音楽賞
第16回東京ピアノコンクールを終えて
──コンクール、お疲れさまでした!終えた今のお気持ちをお聞かせください。
菅原
ありがとうございます。自分の中では納得のいく演奏ができなかったこともあり、まだ受賞の実感は湧いていません。ですが、最優秀賞という名誉ある賞をいただけたことを大変光栄に思います。これを糧に、今後もますます音楽の勉強に励もうと、身が引き締まる思いです。
──なぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?
菅原
まず、課題曲の規定と自分の取り組みたい曲が合致していたことです。東京ピアノコンクール(大学部門)の課題曲は「10分程度の自由曲」となっており、今回演奏した曲は9分と、時間的に非常に適していました。また、大学の実技試験を控えていたこともあり、事前に舞台で演奏経験を積んでおくべきだと考え、挑戦を決めました。
──課題曲は何を演奏されましたか?選曲理由も教えてください。
菅原
ラヴェルの『夜のガスパール』より「スカルボ」を演奏しました。 選曲の理由は、一つには先ほどお話しした学校の実技試験のためですが、もう一つはこの曲と長く向き合ってきた背景があります。高校1年生の終わり頃から取り組んでいる大切なレパートリーなのですが、非常に技巧的で難しく、4年経った今でもその難しさに苦労させられています(笑)。だからこそ、この機会にさらに精度を高め、演奏を安定させたいという思いで挑戦しました。
──コンクール準備期間について教えてください。
菅原
準備期間中に最も意識したのは、自分自身に「自分なら絶対大丈夫」と言い聞かせ続けることです。たとえ心の内では不安でも、あえてそう信じ込ませるようにしています。 よく周りからは「謎の自信があるね」と言われることが多いのですが、高校時代、自分に自信が持てないと本番で良いパフォーマンスができないという事実に気づかされました。それ以来、どんな時も根拠のない自信だけは持つように心がけています。
あとは、生活リズムを崩さないことですね。生活習慣の乱れは練習の質に直結し、本番での本領発揮を妨げてしまいます。そのため、規則正しい生活を維持するよう努めていました。
──練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?
菅原
先ほどお話したように「スカルボ」は非常に技巧的な曲のため、毎日部分的な取り出しやゆっくりとした練習を軸に据えました。基礎的ではありますが、音色や音程感、拍感、そして和声感を一つひとつ丁寧に意識する作業です。
本番が近づくにつれて、音楽が立体的であるか、構成上のクライマックスと静寂の対比は十分か、曲が持つ緊迫した情景が描けているか……といった細部まで徹底的に追求しました。ただ、こだわりすぎて「スカルボ」だけで一日が終わってしまうこともあり(笑)、練習時間の配分については次回の課題だと感じています。
また、特別な「本番想定の練習」は設けませんでしたが、毎日練習をするときは必ず最初に一度通して弾くようにしていました。本番直前は満足にピアノに触れられない状況も考えられるので、いつもその通し練習を「本番のステージ」と捉えて弾くようにしています。
──本番当日のお気持ちをお聞かせください。
菅原
実は、ものすごい緊張感とともに目が覚めました(笑)。 本番前の練習では「これなら大丈夫!」と思えるほど良い状態で、少し落ち着きを取り戻したのですが……。いざ会場に到着すると、他の方々の非常にレベルの高い演奏が聴こえてきて、一気に焦りと緊張に飲み込まれそうになりました。
ステージに立ってからは、とにかく「焦らず歌うこと」や「暴走しないよう呼吸を大切にすること」を必死に心がけました。結果として、緊張感や自分の詰めの甘さが露呈してしまい、あまり納得のいく演奏とは言えませんでしたが、多くの課題を見つけられた非常に貴重な経験になったと思います。
──東京ピアノコンクールに挑戦する方へのメッセージをお願いします。
菅原
私も本番でとても緊張しましたし、思うようにいかない瞬間も多々ありました。ですが、その苦い経験こそが、多くの課題や学びを与えてくれたと感じています。 コンクールは結果を出す場所であると同時に、自分自身と深く向き合える大切な時間だと思います。本番のステージでは、どうか最後まで自分自身を信じ抜いて演奏してください。 あなたなら、きっと大丈夫!!心から応援しています。
──今後の目標、将来の夢などをお聞かせください。
菅原
1〜3年後には国際コンクールにも少しずつ挑戦していきたいと考えています。自分はまだまだ未熟なピアニストではありますが、これからも大学での学びや日々のレッスンに真摯に励み、音楽性はもちろん、演奏技術にもより一層磨きをかけていきたいです。
東京ピアノコンクール最優秀賞演奏会(2027年開催予定 / 会場:五反田文化センター音楽ホール)
インタビューを終えて──編集後記
最優秀賞という素晴らしい結果を手にしながらも、「納得のいく演奏ではなかった」と語る菅原さん。その言葉からは、現状に満足せず、常に高みを目指し続けるひたむきな向上心が伝わってきました。
難曲「スカルボ」と4年もの歳月をかけて向き合い、細部を突き詰める緻密な練習。その一方で、本番のプレッシャーを跳ね返すために「自分なら大丈夫」と言い聞かせるメンタルコントロールのあり方は、同じように音楽の道を目指す方々にとっても大きな励みになるのではないでしょうか。
「コンクールは自分自身と向き合える大切な時間」という言葉通り、課題を糧に次なるステップへと視線を向ける菅原さん。国際舞台を見据えた今後のさらなる飛躍を、心から応援しております。貴重なお話をありがとうございました。
第16回東京ピアノコンクールの概要については下記をご覧ください
第16回東京ピアノコンクールの入賞者一覧については下記をご覧ください






