堀米ゆず子が語る、若き才能と音楽の本質:仙台国際音楽コンクールを終えて

堀米ゆず子先生インタビューアイキャッチ

1980年、エリザベート王妃国際音楽コンクールで日本人として初の優勝を飾って以来、世界の第一線で活躍を続ける堀米ゆず子さん。
ソリスト、室内楽奏者としての演奏活動に加え、教育者・審査委員としても高く評価されてきた堀米さんは、仙台国際音楽コンクールでも長年にわたり審査委員長を務めています。

2025年の第9回大会では、若きヴァイオリニストたちの演奏をどのように受け止めたのか、お話を伺いました。


取材・文|編集部

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プロフィール

堀米ゆず子(ヴァイオリニスト) 公式サイト

1980年、エリザベート王妃国際音楽コンクールにて日本人初の優勝を果たす。
以降、ベルリン・フィル、ウィーン響、ロンドン響など世界の名門オーケストラと共演。アルゲリッチ音楽祭など国際的な音楽祭にも多数出演し、室内楽ではアルゲリッチ、ゼルキン、マイスキーらと共演。
教育活動にも注力し、欧州各地でマスタークラスを開催。

2016年より仙台国際音楽コンクール審査委員長。復興支援としてブリュッセルで毎年チャリティ公演も行う。
著書に『ヴァイオリニストの領分』(春秋社)。
現在、マーストリヒト音楽院教授。
使用楽器は1741年製グァルネリ・デル・ジェス。

ーー今回の仙台国際音楽コンクールで審査を担当されたご感想を教えてください。全体としてどのような印象を受けましたか?

仙台国際音楽コンクール受賞者
©仙台国際音楽コンクール事務局

ビデオ審査の折から感じていた中国人の若い出場者のレベルの高さです。テクニック的には以前からそうでしたが音楽的にも自発的自由意志を感じました。

ーーどのような点を重視して審査されましたか?

それは各審査委員個人の判断に委ねます。総体的に見ます。

ーー「演奏が上手い」だけでは届かない、聴き手や審査委員の心に残る演奏とはどういうものでしょうか?

それは全ての演奏において同じ事です。演奏がうまくても心に響かない弾き方もあれば、多少のミスも気にならないほどの音楽性を感じるものもあります。

ーー本番で自分の力を出し切るために、演奏家たちに日々どんな意識や練習方法を心がけてほしいと感じますか?

仙台国際音楽コンクール堀米先生
ⓒ仙台国際音楽コンクール事務局

練習が一番重要なところです。200%集中して、ギリギリまで自分を追い込むこと。とにかく「聴く」習慣を身につけること。
世阿弥の「花鏡」と同じ事です。まず「花」を見つけるための研究、テクニック、想像力、空想力、知性により自分が一番好きな音を出す。
そしてそれが実際音になっているかを冷静にみる「鏡」。聴く事、が大切です。

ーー仙台国際音楽コンクールの特徴や強みはどのような点にあるとお考えですか?

周知の通り予選からのオーケストラとの共演です。またスタッフ、ボランティアの方々の充実ぶりは世界的にも稀に見るケースです。

ーー仙台国際音楽コンクールへの参加を検討している方、また音楽を志すすべての方々へ、最後にメッセージをお願いします。

美しい音楽と共に歩んでいってください。

仙台国際音楽コンクールという場が、単なる競技の場ではなく、本物の音楽と向き合う貴重な機会であることも改めて感じさせられました。最後の「美しい音楽と共に歩んでいってください」という一言には、未来の演奏家たちへの静かで力強いエールが込められており、読む者の背中をそっと押してくれるような、余韻の深いインタビューでした。このような貴重なお話を伺えたことに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

堀米ゆず子 information

6月下旬:ハンブルク「アルゲリッチ・フェスティヴァル」出演
8月2・3日:山形交響楽団第326回定期演奏会出演(指揮:沼尻竜典)
     【演奏曲目】サン=サーンス:ヴァイオリン協奏曲第3番
8月下旬:イタリア・ブレシアでのマスタークラス開催
10月:ベルギー・ヴュータン国際コンクール審査委員
11月〜12月:日本国内でピアノトリオ公演/東大先端研にてマスタークラス実施予定

第9回仙台国際音楽コンクールの概要については下記をご覧ください。

第9回仙台国際音楽コンクールの結果は下記をご覧ください。

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