青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島で構成される中学校吹奏楽部の東北支部には、全日本吹奏楽コンクール全国大会で輝かしい実績を残した強豪校が存在します。
本記事では2020~2024年に全国大会出場を果たした実力校を中心に、東北6県から選りすぐりの10校をご紹介します。
それぞれの学校の全国大会出場年度や代表的な演奏、吹奏楽部の特徴・強みについてもまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
北上市立上野中学校(岩手県)
北上市立上野中学校は岩手県を代表する名門校で、2021年から4年連続で全日本吹奏楽コンクール全国大会に出場しました。特に2021・2022・2023年は全国大会で金賞を受賞する快挙を成し遂げています。
2023年全国大会自由曲《交響曲第2番「江戸の情景」より》の演奏では、重厚かつ精巧なアンサンブルが高く評価されました。その代表的な演奏はYouTubeでも公開されており、卓越した表現力と統一感あるサウンドが確認できます。
熟練の指揮者のもと、部員たちは基礎力の徹底と音楽性豊かな表現を追求しており、東北支部大会でも毎年トップレベルの成果を収めています。
仙台市立向陽台中学校(宮城県)
仙台市立向陽台中学校は東北を代表する常連校で、2020年代に入っても全国大会出場を重ねています。最近5年の全国大会出場は2021年から2024年までで、2021年は銀賞、2022年には金賞を受賞し、2023・2024年も連続出場を達成し、銀賞を受賞しました。
2022年全国大会では自由曲に選んだ「ドラゴンの年」で各パートの高度な技術を発揮し、隙のない演奏で聴衆を魅了しました。また、他にも代表的な演奏として、2024年全国大会自由曲「フェスティヴァル・ヴァリエーション」の見事な演奏が挙げられます。
指導者と部員による「歌心」を大切にした表情豊かなサウンドが持ち味で、大編成ながら機動力あるアンサンブルが高評価を得ています。
山形市立第六中学校(山形県)
山形市立第六中学校は山形県の代表格として全国大会に度々名を連ねる実力校です。最近5年の全国大会出場は2021年から2023年までで、2021年は金賞、2022年・2023年は銀賞を受賞しました。
精密なアンサンブルと美しいハーモニーが特徴で、特に2021年全国大会自由曲《ル・シャン・ドゥ・ラムール・エ・ドゥ・ラ・プリエール(愛と祈りの歌)》では情感あふれる表現が称賛されています。
「聞かせる音楽」を追求する姿勢が特徴で、少人数でも全員で創り上げる豊かなサウンドで聴衆を魅了します。
盛岡市立北陵中学校(岩手県)
盛岡市立北陵中学校は、2014年に全国大会初出場して以来、2024年に10年ぶり2度目の全国大会出場を果たしました。全国大会では見事銀賞を受賞し、岩手県勢の層の厚さを示しました。
自由曲に選んだバレエ組曲《シバの女王ベルキス》では壮大なスケール感と緻密な演奏で存在感を示し、聴衆に強い印象を残しています。
基礎重視の練習とメリハリのある表現を武器に成長を遂げ、2019年に東北大会で金賞を受賞するなど着実に実績を積み重ねており、少子化で部員数が減少する中でも、まとまりのある演奏で全国の舞台に躍り出た期待の強豪校です。
仙台市立第一中学校(宮城県)
仙台市立第一中学校は、東北支部大会を勝ち抜いて2018年に全国大会へ出場した実績を持つ伝統校。2018年の全日本吹奏楽コンクール全国大会では銅賞を受賞し、東北勢として存在感を示しました。
当時の自由曲では近代フランス作品を巧みに演奏し、繊細な音色と精度の高い合奏で評価されています。部の特徴として、木管セクションの美しい響きと金管の柔らかな音質のバランスが良く、幅広いレパートリーに対応できる実力があります。
近年は全国大会出場こそありませんが、県大会・東北大会で上位入賞の常連であり、基本に忠実な演奏と音楽への真摯な姿勢で高い評価を保ち続けています。仙台市という都市部の強みを活かし、多彩な楽曲に挑戦するチャレンジ精神もこの学校の吹奏楽部の魅力です。
秋田市立山王中学校(秋田県)
秋田市立山王中学校は、かつて全国大会で幾度も金賞に輝いた“伝説”の強豪校です。1970~80年代には全日本吹奏楽コンクール中学の部で最多出場を誇り、1974年・1976年には金賞を受賞。東北に吹奏楽黄金期をもたらしました。
現在の部員数は当時ほど多くありませんが、今なお県大会で上位に食い込む実力を発揮しています。名指揮者の影響を受けて育まれた「歌うようなフレージング」と「芯のあるサウンド」は、OB・OGに受け継がれ秋田の吹奏楽の礎となっています。
往年の代表的な演奏はYouTubeでも視聴可能なものもあり、当時の卓越したアンサンブルと迫力は今も伝説として語り継がれています。
湯沢市立湯沢北中学校(秋田県)
秋田県からもう一校、湯沢市立湯沢北中学校は2016年に東北支部代表として全国大会に出場した実力校で、小編成ながら豊かな表現力で会場を魅了しました。
全国大会では銅賞となりましたが、全員で一つの音楽を作り上げる姿勢が高く評価され、その瑞々しいサウンドと緻密なアンサンブルは聴衆の心に残るものでした。
近年は県南地域の小規模校として編成人数のハンデを乗り越え、柔軟な発想で選曲や編曲に工夫を凝らしています。部員同士の結束力が強く、東北大会でもたびたび健闘。小編成部門での活躍も含め地元で愛され続ける吹奏楽部となっています。
いわき市立植田中学校(福島県)
福島県を代表する強豪校の一つ、いわき市立植田中学校は2016年・2017年に連続して東北支部代表となり全国大会への出場を果たしました。2016年は銀賞、2017年は銅賞を受賞し、福島県勢として存在感を示しました。
植田中吹奏楽部は、華やかな音色とリズムのキレが持ち味で、特に打楽器セクションの安定感がバンド全体を支えています。指揮者の緻密な指導のもと、「明るく伸びやかなサウンド作り」を掲げており、地元いわき市の音楽イベントでも積極的に演奏を披露しています。
震災後の福島を音楽で元気づける存在として、地域からの応援も厚い学校です。
南相馬市立原町第一中学校(福島県)
福島県からもう一校、南相馬市立原町第一中学校は2014年に全国大会へ出場した経験を持つ伝統校です。2014年の全国大会では銅賞ながら、東北地方から久々の福島県代表校として注目を集め、力強さと繊細さを兼ね備えた演奏で被災地・福島に勇気を与えました。
部の特徴は、少人数でも一人ひとりがソリストの意識を持ち、響きを大切にした合奏です。震災の困難を乗り越え練習環境を整えながら培った「絆の音楽」は、部員の団結力と豊かな歌心となって表れています。
近年は県北地区の大会で上位入賞を果たし、再び東北大会出場も狙える位置にあります。地域の吹奏楽イベントにも積極的に参加し、音楽を通じた地域交流にも力を入れている学校です。
八戸市立第三中学校(青森県)
青森県からは、往年の名門・八戸市立第三中学校を紹介します。1990年代以前には東北支部の要として全国大会に度々出場し、特に1991年の全日本吹奏楽コンクールでは金賞を獲得する輝かしい実績を持ちます。
当時の自由曲《アルメニアン・ダンス パートI》の名演は伝説となり、鋭いリズム感と迫力のある演奏で会場を熱狂させました。近年は全国大会出場こそありませんが、青森県大会で常に上位に名を連ね、東北大会でも健闘を見せています。
長年にわたり培われた指導ノウハウにより、基礎合奏の充実とダイナミックな表現力は健在であるほか、地元では吹奏楽部OBによる指導も手厚く、部員たちは伝統の「ハーモニーの八戸三中サウンド」を継承しようと努力を重ねています。
各校とも、それぞれの地域で培ってきた伝統と創意工夫を武器に、全日本吹奏楽コンクールという大舞台で素晴らしい演奏を披露してきました。
東北支部の吹奏楽は、これら強豪中学校の活躍によりますます盛り上がりを見せており、今後も彼らの演奏から目が離せません。若き音楽家たちの挑戦と躍進に、ぜひご注目ください!