大阪・兵庫・京都・奈良・和歌山・滋賀の6府県で構成される関西支部は、丁寧な基礎練習と仲間同士の支え合いで、全国大会でも毎年存在感を放っています。
本記事では、その中でも近年とくに成績が安定している10校をピックアップ。各学校の強み、部の雰囲気などの解説も加えました。
それぞれの学校が全国や関西大会で披露した演奏の動画リンクも掲載するので、名演を聴き比べながら、関西の吹奏楽の今を、いっしょにのぞいてみましょう。
生駒市立生駒中学校(奈良県生駒市)
2021年・2022年・2023年・2024年に全国大会に出場しており、いずれも金賞。2019〜2024年にかけて全国大会5回連続金賞を達成しています。
近年は課題曲にポップス調の曲を採り上げ、自由曲でも物語性ある大作に挑戦。2023年は課題曲「レトロ」で、「青春ポップスの懐かしさを感じさせる演奏」で高評価を得ました。自由曲「カントゥス・ソナーレ」においても高度な表現力を示し、全国大会で堂々の金賞に輝いています。
生駒中吹奏楽部は部員数が多く、奈良県内の他校を圧倒。「静と動」を巧みに表現する音楽づくりで知られ、奈良県の音楽教育の充実(小学校からの金管バンド経験者が多い土地柄)も背景に、全国トップクラスの安定した演奏力を発揮しています。
またOB・OGによる支援も盛んで、地元でのジョイントコンサート開催など地域に根ざした活動も特徴です。
大阪市立鯰江中学校(大阪府大阪市)
全国大会に2022年に出場して以来、2023年・2024年と連続で金賞を獲得しています。
審査員からは「各パートのバランスが良く、曲のクライマックスでの音の伸びやかさが秀逸」と評価され(大会講評より)、都会的で洗練されたサウンドと、少人数でも機動力あるアンサンブルが強みです。
吹奏楽部員は大編成ではないものの、効率的な練習法と部員の結束力で実力を伸ばしています。市内中心部という立地ながら保護者・地域のサポートも手厚く、2010年代後半から徐々に府大会・関西大会で頭角を現しました。
特に現顧問の下で選曲のセンスが光り、難曲への果敢な挑戦と完成度の高さで近年急速に実力を伸ばし、大阪府を代表する強豪校の一つとして注目されています。
加古川市立中部中学校・浜の宮中学校【合同】(兵庫県加古川市)
全国大会には2021年・2022年・2023年・2024年に出場しており、2024年には加古川市立中部中・浜の宮中 合同バンドによる演奏で、銀賞を受賞。合同バンドとは思えないほどの一体感と高い完成度で、兵庫県勢としての存在感を示しました。
兵庫県東播磨地区の伝統校である中部中学校は、地元では強豪として知られ、そのサウンドは弦楽器のような柔らかさが持ち味。自由曲では近現代フランス作品から邦人作品まで幅広く選曲し、表情豊かなアンサンブルで高評価を得ています。
また、地元加古川市の音楽関係者による支援や、小学校ブラスバンドとの連携(合同演奏会開催など)もあり、地域ぐるみで吹奏楽部を盛り立てています。
宝塚市立中山五月台中学校(兵庫県宝塚市)
近年では2021年・2024年に全国大会に出場しており、2021年は関西代表として長いブランクを経て再び全国大会常連校の仲間入りをして銀賞を受賞、2024年も銀賞を受賞。
木管セクションの美しいハーモニーや、要所での華やかな金管の鳴りが高く評価され、全国大会でも安定して上位の成績を収めています。
部員数は多く、先輩後輩の結束も強い伝統校。1990年代から2000年代にかけて全国大会に度々出場し、一時期低迷したものの基礎から鍛え直して復活しています。
宝塚歌劇やクラシック音楽に触れる機会が多い地域性もあってか、生徒の音楽的センスが高く、「曲想表現の巧みさ」は関西大会でも指折りと言われます。地域の吹奏楽団との交流や定期演奏会でのユニークなステージ演出など、音楽を楽しむ、ということも大切にしています。
豊中市立第十一中学校(大阪府豊中市)
2020〜2024年は惜しくも全国大会出場は無いものの、2015~2019年に5年連続で全国大会出場(通算8回出場)という偉業を成し遂げています。2017年には全国大会で金賞を受賞し、他の年もすべて金賞または銀賞というトップクラスの成績です。
豊中市は関西有数の吹奏楽激戦区で、その中でも第十一中学校は不動のエース的存在。部員数は大所帯で、歴代顧問の熱心な指導の下、基礎合奏からハイレベルな合奏まで一貫した指導体制があります。
保護者会やOB会のサポートも手厚く、「常に全国を目指す」部の雰囲気が根付いています。練習量は多いものの、短時間で集中して密度の濃い練習を行う効率的なスタイルを確立しており、部員の自主性とチームワークで質を高めている点も強みです。
豊中市立第三中学校(大阪府豊中市)
近年は全国大会には出場していませんが、過去に全国大会出場歴が複数回あります。2018年、2019年に連続で全国大会に出場(2019年時点で通算10回出場)。2019年は銀賞を受賞しました。
同じ豊中市内の第十一中と双璧をなす存在で、切磋琢磨する中で培われた高水準のアンサンブルが強み。和太鼓や邦楽器的なリズムを取り入れた邦人作品から、シンフォニックな欧米作品まで幅広く挑戦し、それぞれで躍動感あるサウンドを響かせます。
木管セクションの明るい音色、打楽器セクションのキレのあるリズム感が評価され、「勢いと緻密さを両立させた演奏」は府内でもトップクラスの実力。また、OBにプロ音楽家を輩出するなど伝統ある部となっています。
顧問は定期的に交代していますが、代々「生徒主体の合奏づくり」をモットーに掲げ、部員一人ひとりが考えて音楽を作る指導が受け継がれています。地域の期待も大きく、「豊中三中が全国に戻ってくる日」を心待ちにするファンも多い吹奏楽部です。
京田辺市立大住中学校(京都府京田辺市)
(ブラスコンサート2018吹奏楽祭京都)
近年の全国大会出場はありませんが、京都府勢としては最も全国大会に近い存在です。2024年には関西大会で金賞を受賞し、全国大会代表選出に迫りました。過去にも関西大会金賞は複数回経験しており、京都府代表の常連校です。
京都府内では希少な大編成・高水準のバンドで、持ち味は厚みのあるブラスサウンド。中でも金管セクションの力強さは関西大会でも定評があり、大音量でも音が濁らず遠くまで美しく響く点が高く評価されています。
部員数は50名規模で、小編成と大編成の両方で全国大会を目指す柔軟な方針を取っています。京都府内では長く全国大会出場校がない状況が続く中、同校の活躍に期待が寄せられています。
香芝市立香芝東中学校(奈良県香芝市)
近年は全国大会に出場していませんが、 奈良県内では生駒中に次ぐ実力校として知られ、2024年には奈良県代表として関西吹奏楽コンクール小編成部門に出場し、金賞を受賞しています。
奈良県北部の学校で、和太鼓など和の要素を含む邦人作品にも挑戦し、郷土の情景を感じさせる表現が魅力。木管アンサンブルの柔らかな響きや、金管の包み込むような和音づくりは県大会で「音色の美しさと安定感は群を抜く」と評価されました。
部員数は小規模ながらも、それを感じさせない充実したサウンドを作り上げます。地域的に大阪や京都の学校とも交流があり、外部講師を招いたクリニックも積極的に実施。「生徒の自主性」と「基礎基本の徹底」を両立させた指導で着実に力をつけ、奈良県から複数校が全国大会へ進出する日を目標に掲げています。
和歌山市立西浜中学校(和歌山県和歌山市)
近年は全国大会に出場していませんが、和歌山県内では各コンクールで優秀な成績を収めている中学校です。2024年には和歌山県代表として関西大会小編成部門に出場し銅賞を受賞。過去にも関西大会への出場経験があります。
和歌山県勢は全国大会出場が少ない中で、西浜中学校は安定感ある演奏で評価されています。自由曲ではライニキー、スウェアリンジェンなどアメリカンバンド作品を好んで取り上げ、開放的で伸びやかなサウンドを響かせます。
和歌山県は他府県に比べ中学校の吹奏楽人口が少ないハンデがありますが、同校は部員同士の仲が良くアットホームな雰囲気の中で質の高い音楽を追求しており、また、和歌山県吹奏楽連盟の中心的存在として情報交換や研修に参加し、常に新しい指導法を学び取り入れています。