吉田南、シベリウス・コンクール2位の快挙!特別賞もダブル受賞

【ニュース】吉田南、シベリウス・コンクール2位の快挙!特別賞もダブル受賞
© International Sibelius Violin Competition

フィンランドのヘルシンキで開催された第13回シベリウス国際ヴァイオリンコンクール。この権威ある舞台で、日本人ヴァイオリニストの吉田南が第2位に輝いた。

吉田は今回のファイナリスト6名の中で唯一の日本人であり、さらに「シベリウスのヴァイオリン協奏曲最優秀演奏賞」(特別賞)も併せて獲得。同コンクールでの日本人の上位入賞は2000年以来25年ぶりという快挙であり、日本のクラシック音楽界に大きな衝撃と喜びをもたらした。

優勝(第1位)は韓国出身のパク・スイェ、第3位にはアメリカ出身のクレア・ウェルズが選ばれた。

圧巻のシベリウスと現代曲!ファイナルでの演奏が高評価

5月27日から29日にかけて行われた本選(ファイナル)。進出した6人のファイナリスト全員に2曲の協奏曲の演奏が課された。シベリウスのヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.47は全員の必須課題。

もう1曲は、ウンスク・チン(韓国)、オリヴァー・ナッセン(英国)、マグヌス・リンドベルイ(フィンランド)、カイヤ・サーリアホ(フィンランド)といった現代作曲家による協奏曲から1曲を自由に選ぶ形式だった。決勝で近現代の協奏曲を課すのは大会史上初の試み。シベリウス協奏曲と併せて現代作品の解釈力も競うユニークな構成となった。

吉田はファイナル初日(5月27日)にリンドベルイ「ヴァイオリン協奏曲第2番」をヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団(指揮:ピエタリ・インキネン)と共演。最終日(5月29日)には、シベリウス「ヴァイオリン協奏曲 ニ短調」をフィンランド放送交響楽団(指揮:ディマ・スロボデニューク)と演奏した。

とりわけシベリウス協奏曲の演奏では、終始抜群のテクニックと力強く豊かな音色を響かせ、聴衆を魅了。その卓越した演奏によって同曲の最優秀演奏賞を獲得し、これが第2位入賞と特別賞のダブル受賞を果たした大きな要因となり、審査員からも演奏の完成度と表現力は高く評価された。

なお、吉田はセミファイナル(第2次予選)でグリーグ「ヴァイオリン・ソナタ第3番」を演奏し、その際の繊細な表現も聴衆の心に深く刻まれた。

若き実力者の軌跡!輝かしい経歴とベルリン・フィルへの挑戦

吉田南は1998年生まれ、奈良県天理市の出身。幼少よりヴァイオリンを学び、桐朋女子高等学校音楽科を首席で卒業。その後渡米し、ニューイングランド音楽院(ボストン)で修士課程を修了した。

国内外のコンクールで早くから頭角を現し、2022年の第11回インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールで第3位、2024年のエリザベート王妃国際音楽コンクール(ヴァイオリン部門)で第6位入賞という輝かしい実績を持つ。

現在はドイツのクロンベルク・アカデミーに在籍して研鑽を積んでいる。そして2025年秋から、世界最高峰のオーケストラの一つであるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第1ヴァイオリン奏者(団員)としてトライアル勤務を開始予定。まさに世界トップクラスの演奏家への道を歩んでいる。

「弛まぬ努力を続ける」吉田南、感謝と決意を語る

結果発表後、吉田は自身のSNSや所属事務所を通じて喜びと感謝のコメントを発表した。「この度、第2位とシベリウス・コンチェルト・ベスト・パフォーマンス賞を受賞いたしました。たくさんの方々に支えていただきここまで来ることができ、心より感謝申し上げます。これからも弛まぬ努力を続けてまいります」と述べ、支援者への感謝と今後への決意を表明した。

さらに「ステージでまた皆さまにお目にかかれますことを楽しみにしております」とも綴り、今後の演奏活動に向けた意気込みを新たにした。吉田は帰国後、受賞記念コンサートや国内主要オーケストラとの共演が予定されているほか、前述のベルリン・フィルでのトライアル参加に向け準備を進める見込みだ。本人の公式InstagramやFacebookページでも今回の結果報告や今後の出演情報が発信されている。

20年ぶりの栄光!日本人入賞でヴァイオリン界に新たな光

シベリウス国際コンクールにおいて、日本人が上位入賞を果たすことは決して多くない。日本人のこれまでの最高成績は、第8回大会(2000年)での玉井菜採の第2位受賞。同年には日下紗矢子も第3位(同率)に入賞している。それ以前では1995年大会で佐藤まどかが第3位に輝いた記録がある。

しかし21世紀以降の大会(2000年以降)では日本人は長らく入賞から遠ざかっており、直近の第12回大会(2022年)でも日本勢はファイナル進出を果たせなかった(2022年大会の上位入賞者は1位ヤン・インモ(韓国)、2位ナサン・メルツァー(米国)、3位ドミトロ・ウドヴィチェンコ(ウクライナ)。日本人では宇野由樹子が同大会セミファイナリストとなっている)。

こうした中で達成された吉田南の第2位入賞は、日本のヴァイオリン界にとって非常に意義深い成果と言える。約四半世紀ぶりとなる日本人の表彰台(トップ3)復帰に、国内のクラシック音楽関係者からも大きな称賛と期待の声が上がっている。

アジア勢躍進と斬新な課題!2025年大会の特色と評価

2025年大会には、世界各国から218名の応募があり、その中から映像審査で選抜された45名がヘルシンキでの本選出場権を獲得した。出場者の国籍はアジア勢を中心に多彩で、日本からは吉田を含む8名、韓国からも複数名が参加。

実際、一次予選を通過して二次予選に進出した18名のうち、日本人は6名、韓国人も同程度含まれており、セミファイナリスト全体の約3分の2を日韓勢が占める結果となった。このことからも、東アジア地域の若手ヴァイオリニストのレベルの高さと、同コンクールへの期待度がうかがえる。

演奏課題(レパートリー)についても特徴的な傾向が見られた。一次予選ではバッハの無伴奏(2~3楽章)、パガニーニのカプリス(またはエルンストの超絶技巧曲)、そしてシベリウス作曲の小品「フモレスク」2曲などが課され、早い段階から作曲者シベリウスの作品を演奏プログラムに組み込んでいる点が特徴だ。

また二次予選ではシベリウスのヴァイオリンとピアノのための小品を少なくとも2曲演奏することが義務づけられた。さらにフィンランドの現代作曲家アウティ・タルキアイネンによる新作委嘱作品(ヴァイオリンとピアノのための現代曲)の初演が各出場者に課された。この委嘱作品については最も優れた演奏を行った奏者に最優秀演奏(€2,000)が贈られ、2025年大会ではスイス出身のアミア・ヤニツキが受賞した。

さらに前述の通り、ファイナルでは必須のシベリウス協奏曲に加えて近・現代の協奏曲を1曲選択して演奏するという独自の課題設定がなされた。この取り組みはコンクール史上初であり、シベリウスという古典的レパートリーだけでなく現代音楽の解釈力まで含めて総合的に審査しようという意図が感じられる。

世界へ羽ばたく吉田南!日本の期待を背に更なる高みへ

今回、シベリウス国際ヴァイオリン・コンクールという国際舞台で吉田南が収めた成功は、日本の若手演奏家にとって大きな励みとなるニュースである。世界的なコンクールでの上位入賞と特別賞受賞という結果は、吉田自身の卓越した実力を示すと同時に、日本の演奏家の存在感をアピールするものだ。

吉田は受賞後のコメントで「これからも弛まぬ努力を続けてまいります」と述べている。その言葉通り、今後さらに研鑽を積み、ベルリン・フィルでの経験や国内外での演奏活動を通じて、一段と成長した姿を見せてくれるだろう。彼女の今後の活躍に、国内外から大きな期待が寄せられている。