シベリウス国際ヴァイオリンコンクール2025開幕 日本人8名出場

【ニュース】吉田南、シベリウス・コンクール2位の快挙!特別賞もダブル受賞
© International Sibelius Violin Competition

第13回シベリウス国際ヴァイオリンコンクールは、2025年5月18日から29日までの日程で、フィンランドの首都ヘルシンキで開催がスタートした。

予選にあたる1次ラウンドと、それに続くセミファイナルの2次ラウンドは5月19日から25日にかけて実施。そして、最終ラウンドであるファイナルのコンサートは、5月27日から29日にヘルシンキ音楽センター(Musiikkitalo)で行われる。

特に注目すべきは、日本人ヴァイオリニスト8名。荒井里桜、本田莉愛、小西真璃花、齋藤碧、宇野由樹子、若生麻理奈、渡辺紗蘭、吉田南といった才能ある若手演奏家たちが国際舞台で競い合う。

審査員も国際色豊かな音楽家で構成され、コンクールの模様はライブ配信される。

熾烈な3ラウンドを勝ち抜くのは誰だ:競技形式の詳細

本コンクールは、ファーストラウンド、セカンドラウンド、ファイナルの3つの公開ラウンドで構成される。

世界中から集まる約45名の出場者が1次予選(ファーストラウンド)に臨み、厳しい審査を経て18名がセミファイナル(セカンドラウンド)へ進出。さらに、ファイナルに進むことができるのはわずか6名という狭き門だ。

演奏順は、コンクール開幕直前の5月17日、作曲家ジャン・シベリウスの旧宅であったアイノラで実施される抽選によって決定し、この順序は全ラウンドを通じて適用される。

シベリウス作品と現代音楽への挑戦:各ラウンドの課題曲

各ラウンドでは、出場者の音楽性と技術を多角的に評価するための課題曲が設定されている。

ファーストラウンド(予選)の演奏持ち時間は30分以内。課題は、ヨハン・セバスチャン・バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタまたはパルティータより2~3楽章(パルティータ第1番ロ短調ではドゥーブルも含む)。

続いて、指定された4つの選択肢から選ぶカプリスまたは練習曲1つ(ニコロー・パガニーニのカプリス2曲、パガニーニのカプリス1曲とサルヴァトーレ・シャリーノの《6つのカプリス》から1曲、パガニーニのカプリス1曲とイェルク・ヴィトマンの練習曲1曲、ハインリヒ・ヴィルヘルム・エルンストの《夏の名残のばら》変奏曲またはエルンスト編曲によるシューベルトの《魔王》)。

そして最後に、ジャン・シベリウス作曲の《フモレスク》Op.87およびOp.89から自由に選んだ2曲を演奏する。

セミファイナル(セカンドラウンド)は、最大70分間のリサイタル形式で行われる。ここでは、シベリウス作曲のヴァイオリンとピアノのための小品から少なくとも2曲を演奏する必要がある。

さらに、フィンランドの現代作曲家アウティ・タルキアイネンが本コンクールのために特別に書き下ろした新作課題曲(ヴァイオリンとピアノのための作品)の演奏も必須だ。

それ以外の時間は出場者が自由にプログラムを組むことができるが、第1ラウンドで演奏した曲の再演や、協奏曲をピアノ伴奏で演奏することは禁じられている。

ファイナル(最終ラウンド)では、選ばれた6名のファイナリストがオーケストラと共演する。課題は2曲の協奏曲。1曲は、ジャン・シベリウスのヴァイオリン協奏曲ニ短調 Op.47。

もう1曲は、1994年から2015年にかけて作曲された近現代のヴァイオリン協奏曲の中から1曲を選択する。

選択可能な協奏曲は、チン・ウンスクのヴァイオリン協奏曲第1番(2001年)、オリヴァー・ナッセンのヴァイオリン協奏曲(2002年)、マグヌス・リンドベルイのヴァイオリン協奏曲第2番(2015年)、カイヤ・サーリアホの《グラール・テアトル》(1994年)の4曲だ。

ファイナルの演奏では、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団(指揮:ペッカ・クーシスト)およびフィンランド放送交響楽団(指揮:ディマ・スロボデニューク)という、フィンランドを代表する二つのオーケストラが伴奏を務める。

世界の名手が若き才能を見極める:国際色豊かな審査委員会

審査委員会は8名の音楽家で構成され、審査委員長は、フィンランド出身の指揮者兼ヴァイオリニストであるジョン・ストゥルゴーズ(BBCフィルハーモニックおよびトゥルク交響楽団首席指揮者)が務める。

国際審査員には、エリーゼ・ボートネス(ノルウェー出身、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスター)、ヤン・セーデルブロム(フィンランド出身のヴァイオリニスト・指揮者)、チョ・ジンジュ(韓国出身のヴァイオリニスト、2014年インディアナポリス国際コンクール優勝者)、レヴォン・チリンギリアン(イギリス在住のヴァイオリニスト、チリンギリアン四重奏団創設者)、リザ・フェルシュトマン(オランダ出身のヴァイオリニスト)、レーカ・シルヴァイ(フィンランド在住のヴァイオリン教授・教育者)、イ・ソンジュ(韓国出身のヴァイオリニスト)といった著名なヴァイオリニストや音楽家が名を連ねる。

熱戦の模様を世界へ:ライブ配信とアーカイブ視聴

コンクールの全ラウンドの模様は、フィンランド国営放送YLEのストリーミングサービス「Yle Areena」を通じて世界中にライブ配信される。コンクール終了後も12ヶ月間は同プラットフォーム上でアーカイブ視聴が可能だ。

特にファイナルについては、フィンランド国内向けにテレビ放送(Yle Teemaチャンネル)やラジオ中継(Yle Radio 1)も予定されている。

配信スケジュールは、予選・セミファイナルが各日フィンランド現地時間の午前10時(午前の部)および午後5時(午後の)開始、ファイナルは各日午後6時30分開始となる(いずれも東ヨーロッパ夏時間のため、日本時間より6時間遅れ)。

公式サイトの「Watch Live」ページでは、各ラウンドごとの視聴リンクが公開される予定だ。

世界に挑む若き日本のヴァイオリニストたち

出場者リストは既に公式に発表されており、今回は世界各国からの218名の応募者の中から書類・映像審査を経て45名の本選出場者が選ばれた。

そのうち日本からは、荒井里桜、本田莉愛、小西真璃花、齋藤碧、宇野由樹子、若生麻理奈、渡辺紗蘭、吉田南の8名のヴァイオリニストが出場資格を獲得した。彼女たちの国際舞台での活躍に注目が集まる。

・荒井里桜(1999年生)は、第87回日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第1位に輝き、NHK交響楽団をはじめ国内主要オーケストラとの共演経験を重ねている有望株だ。

・本田莉愛(2000年生)は、ジュリアード音楽院で研鑽を積み、現在は海外を拠点に演奏活動を行う。

・小西真璃花(2007年生)は、第92回日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第2位を受賞した。今回の日本人出場者の中では最年少である。

・齋藤碧(1997年生)は、東京藝術大学を卒業後、ベルリン芸術大学に留学して研鑽を積むとともに、現在ベルリン・ドイツ交響楽団のアカデミー生(研修生)として在籍している。

・宇野由樹子(1995年生)は、スイスのバーゼル音楽院やドイツのライプツィヒ音楽大学で学び、欧州で活動している。2019年のエリザベート王妃国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門ではファイナリストに残った実力を持つ。

・若生麻理奈(2007年生)は、第91回日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第3位に入賞した。小西と同じく、今回の日本人出場者中最年少である。

・渡辺紗蘭(2005年生)は、上記の第91回日本音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第1位に輝いた実績を持つ。

・吉田南(1998年生)は、2024年のエリザベート王妃国際音楽コンクール・ヴァイオリン部門で第6位入賞を果たし、同年秋にはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のオーディションに合格するという快挙を成し遂げた。2025/26シーズンからベルリン・フィルの第1ヴァイオリン奏者団員(試用期間)として活動を開始する予定だ。

なお、出場者の演奏順は前述の通り抽選で決定され、公式サイトの「Competitors(出場者)」ページでは各奏者に割り当てられた出演順番号と共にプロフィールが掲載されている。

今回のコンクールには日本以外にも、開催国フィンランドのオットー・アンティカイネン、アメリカのカリサ・チウ、韓国出身でドイツを拠点に活動するパク・スーイエなど、各国の若手俊英が名を連ね、優勝を巡るハイレベルな競演が期待される。