【エリザベート王妃国際音楽コンクール2025】久末航2位、亀井聖矢5位 日本人ピアニストが躍進

【エリザベート王妃国際音楽コンクール2025】久末航2位、亀井聖矢5位 日本人ピアニストが躍進:ニュース

世界的に権威のある音楽コンクールの一つとして知られるエリザベート王妃国際音楽コンクールは2025年5月31日深夜(日本時間6月1日未明)、ベルギー・ブリュッセルでピアノ部門の最終結果を発表した。

オランダのニコラ・ミューセン(Nikola Meeuwsen)が第1位の栄冠に輝き、賞金2万5千ユーロとマチルド王妃から贈られるエリザベート王妃国際グランプリを獲得した。日本からは久末航が第2位、亀井聖矢が第5位に入賞し、国際舞台における日本人ピアニストの層の厚さを改めて印象付けた。

今回のピアノ部門には、世界各国から若き才能が集結した。ファイナリスト12名の国籍はオランダ、日本、ベルギー、フランス、ロシアなど多岐にわたり、コンクールの国際的な性格を反映している。

彼らは約1ヶ月にわたる厳しい審査を経て、音楽の殿堂パレ・デ・ボザールでの決勝に臨んだ。その頂点に立ったミューセンは、力強さと繊細さを兼ね備えた演奏で聴衆を魅了し、審査員から最も高い評価を得た。

決勝では、全ファイナリストがベルギーの作曲家クリス・デフォールトによる新作課題曲「Music for the Heart」と、各自が選択したピアノ協奏曲を演奏した。

「Music for the Heart」は現代的な書法の中に叙情性も感じさせる作品で、各ピアニストの読譜力と表現力が試される一曲となった。ミューセンは自由選択協奏曲としてプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番を選び、その圧倒的な技巧と深い音楽性で聴衆を圧倒した。

第2位に輝いた久末航は、ブラームスのピアノ協奏曲第2番を演奏。深遠な解釈と美しい音色で、作品の本質に迫る格調高い演奏を披露した。

Brahms Concerto n. 2 in B flat major op. 83 | Wataru Hisasue – Queen Elisabeth Competition 2025

久末はこれまでも数々の国際コンクールで入賞を重ねており、今回の快挙は着実なステップアップの証と言えるだろう。第3位には地元ベルギーのヴァレール・ブルノンが入り、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番でダイナミックな演奏を聴かせ、聴衆賞も獲得した。

第5位に入賞した亀井聖矢は、サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」という個性的な選曲で注目を集めた。2019年のピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ受賞者でもある亀井は、卓越した技巧と豊かな音楽性で、若き才能の開花を印象付けた。

Saint-Saëns Concerto n. 5 in F major op. 103 | Masaya Kamei – Queen Elisabeth Competition 2025

決勝に進出した日本人ピアニストは久末、亀井のほか、桑原志織、吉見友貴も入賞を果たし、4名全員が高い評価を得たことは特筆に値する。

エリザベート王妃国際音楽コンクールは、その歴史と権威、そして課題の過酷さから「音楽のオリンピック」とも称されており、ヴァイオリン、ピアノ、声楽、チェロの各部門がローテーションで開催され、若手音楽家にとっては国際的なキャリアを築くための重要な登竜門となっている。

セミファイナル、ファイナルと段階が進むにつれて課題はより高度かつ多岐にわたり、参加者には技術的な完成度はもちろん、深い音楽的洞察力と強靭な精神力が求められる。

特にファイナリストは、結果発表までの約1週間、外部との接触を断たれた環境で課題曲に取り組む「音楽院での隔離生活」を送る。これはコンクールの大きな特徴の一つであり、極度の集中力と自己管理能力が試される期間でもある。

このような厳しい試練を乗り越えて栄冠を手にした受賞者たちには、国際的な演奏活動の機会が与えられ、クラシック音楽界の未来を担う存在として大きな期待が寄せられる。今回のコンクールで輝きを放った若き巨匠たちの今後の活躍から目が離せない。

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