関西を中心に活動する英国式金管バンド「Immortal Brass Eternally」(IBE)が、2026年7月11日(土)・12日(日)にオランダで開催される「世界音楽コンテスト(WMC)」のブラスバンド部門最上位グレード・コンサートディビジョンへの出場を決めた。日本のブラスバンドとして史上初の出場となる。
IBEは2025年11月24日(月・祝)、公式サイトとクラウドファンディングサイトREADYFORを通じてWMC出場を正式に発表した。同団体は2024年7月にニュージーランド・ブラスバンド選手権のAグレード(最上位セクション)で7バンド中4位の成績を収めており、この実績が評価されてWMCから招待を受けた。
日本ブラスバンド史上初、WMC最上位グレードへの招待
WMCは4年に1度開催され、「音楽のオリンピック」とも称される国際大会だ。75年以上の歴史を持ち、2026年大会は7月9日(木)から8月2日(日)までの期間に開催される。世界各国から250以上の団体が参加予定で、ブラスバンド部門のコンサートディビジョンは完全招待制を採っている。
出場枠は全世界で最大12バンドのみであり、内訳はヨーロッパ枠が最大8、非ヨーロッパ枠が最大4となっている。IBEは非ヨーロッパ枠での出場となる。日本からWMCへの参加は過去に吹奏楽部門やマーチング部門での実績があるが、ブラスバンド部門での出場はIBEが初めてだ。
コロナ禍で叶わなかった5年越しの悲願
IBEにとってこの挑戦は単なる新たな目標ではない。2019年、同団体はWMC2021(当時は2021年開催予定)への出場が決定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症により大会は延期され、その後も海外渡航の制約や世界情勢の不安定さから、メンバーの健康と安全を考慮して遠征中止を決断した。
大会をオンラインで見守るしかなかった悔しさが、今回の再挑戦への原動力となった。この悔しさをバネに、IBEはまず実力を証明するため2024年のニュージーランド遠征を決意し、同大会での好成績が今回のWMC推薦につながった。
参考:2024 New Zealand Brass Band Championships / IBE: 自由曲「Sand and Stars」
アマチュア楽団の前に立ちはだかる資金の壁:総経費1350万円の負担
IBEは、2008年春に兵庫・大阪を拠点に活動を開始した。メンバー全員が会社員や学生で構成されるアマチュアの楽団である。「英国式金管バンドの魅力を広め伝え、日本国内においてこの編成をよりメジャーにすること」を理念として掲げ、収益や持続性よりも普及を優先した活動を続けてきた。
日本国内では英国式金管バンドの編成はまだ発展途上であり、国内にコンテストが存在しないため、世界で実力を証明することが重要な意味を持つ。
しかし、アマチュア楽団が海外のコンテストに挑戦する際に、避けては通れないのが資金面の問題だ。渡航・滞在・演奏にかかる総経費は約1350万円に上る見込みで、この莫大な経費の主な要因は、円安と燃油価格の高騰による渡航費と、楽器輸送にかかる高額なコストである。
IBEは目標金額250万円をクラウドファンディング(READYFOR)で募っているが、仮に目標額を達成できたとしても、残りの約1100万円以上はすべてメンバーで分担して負担する。メンバー一人あたり約40万円という負担は、ニュージーランド遠征からわずか2年での出費となり、社会人メンバーも学生メンバーも捻出が困難な状況だ。
代表コメントと挑戦の意義
IBE代表の太田真哉は「今回挑むWMCは、世界ランキング上位のバンドが多数出場する、ニュージーランドの時よりも数倍も高い壁です。しかし、メンバー全員、絶対に負けないという勢いで全力でぶつかっていきます」とコメントした。
WMCという世界最高峰の舞台への挑戦は、日本のブラスバンドの未来を切り開く一歩となる。大会の様子は公式YouTubeチャンネル「WMC Kerkrade」でライブ配信される予定だ。



