ポーランド・ワルシャワで開催中の第19回ショパン国際ピアノコンクールは16日深夜(日本時間17日朝)、3次予選の結果を発表した。20名から55%という厳しい通過率を突破し、本選進出を決めたのは11名。
規定では最大10名のところ、同点により1名が追加された。日本からは桑原志織(30)と進藤実優(23)が勝ち残り、18日から始まる本選で協奏曲を演奏する。
3次予選通過率55%、日本は桑原志織と進藤実優が残る
3次予選では、ソナタとマズルカを含む約60分の重厚なプログラムが課された。3日間にわたる激しい審査の末、20名から11名へと絞り込まれた。日本勢は3次予選に牛田智大(25)、桑原志織、進藤実優の3名が進出していたが、牛田は惜しくもファイナル進出を逃した。


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桑原は東京都出身。東京芸術大学を首席で卒業後、ベルリン芸術大学大学院を修了。2021年のルービンシュタイン国際ピアノコンクール(イスラエル)で44年ぶりの日本人上位入賞となる第2位を獲得した実力者だ。今春の予備予選を免除され、10月3日の1次予選から演奏をスタート。各ラウンドで円熟した音楽性を披露してきた。


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進藤は愛知県大府市出身。前回2021年大会にわずか19歳で挑戦し、3次予選まで進出した経験を持つ。今回は4年の歳月を経て再挑戦、悲願のファイナル進出を果たした。現在はドイツのハノーファー音楽演劇メディア大学でアリエ・ヴァルディ氏に師事している。
地元ポーランドから国内コンクール2度優勝のアレクセヴィチ
本選進出者の筆頭に名を連ねたのは、地元ポーランドのピオトル・アレクセヴィチ(25)。全ポーランドショパンコンクールで2017年と2020年の2度優勝し、2021年の前回大会ではセミファイナリストに進出した実績を持つ。ショパンの故郷ポーランドの新星として、地元の期待を一身に背負う。
カナダ20歳のチェン、アメリカ27歳ルーら北米勢も本選へ
北米からは3名が本選に駒を進めた。カナダのケヴィン・チェン(20)は、1次予選から高い評価を得てきた実力者。8歳でカナダ音楽コンクールを制し、現在はハノーファー音楽演劇メディア大学でアリエ・ヴァルディ教授に師事する。卓越した技術と成熟した音楽性で注目を集めている。
アメリカのエリック・ルー(27)は、2018年リーズ国際ピアノコンクール優勝者。2015年の前々回ショパンコンクールにわずか17歳で入賞した経験も持つベテランだ。今大会では3次予選2日目に体調不良のため最終日に演奏を延期したが、見事に本選進出を決めた。
同じくアメリカからはウィリアム・ヤン(24)も通過。北米勢の層の厚さを印象付けた。
中国16歳の天才リュウ、マレーシア初のファイナリスト・オン
中国からは3名が本選に進出。なかでも最年少のティエンヤオ・リュウ(16)は、2次予選でのしなやかなタッチと美しいレガートで審査員と聴衆を魅了した。北京の中央音楽学院付属中学校で学んだ後、現在はポーランドのポズナン音楽院でカタジーナ・ポポヴァ=ズィドロン氏に師事。ブレハッチ(2005年優勝者)も同氏の門下から育った。若さとは思えない深い音楽性が注目されている。
他の中国勢は、ティアンユー・リー(21)とズィトン・ワン(26)。いずれも高い技術と表現力を兼ね備えた実力者だ。
マレーシアのヴィンセント・オン(24)は、母国初のファイナリストとして歴史を刻んだ。2019年の国際台北マエストロピアノフェスティバル優勝を皮切りに、数々の国際コンクールで入賞。「唯一無二の音色」と評される独自の響きが特徴だ。
ジョージアのフリクリら、7カ国の精鋭が協奏曲で真価を問う
ジョージアからはダヴィッド・フリクリ(24)が本選進出。マドリードのソフィア王妃高等音楽院でスタニスラフ・イウデニッチ氏に師事する。2024年カントゥ国際ピアノコンクール(イタリア)第1位など、近年の国際コンクールで輝かしい成績を残してきた。彼の演奏は「水に溶けゆく絵の具のように揺らめく音色」と形容され、予備予選から回を追うごとに進化を見せている。
本選では、11名全員が幻想ポロネーズ変イ長調作品61と、ピアノ協奏曲第1番ホ短調または第2番ヘ短調を演奏する。今回初めて本選にソロ曲が加わり、協奏曲と合わせてオーケストラとの共演で真価が問われる。
Chopin Institute YouTubeで生中継・録画配信
本選は10月18日から20日まで3日間、ワルシャワ・フィルハーモニーコンサートホールで開催される。各日とも現地時間18時(日本時間翌日午前1時)開始予定。Chopin Institute公式YouTubeチャンネルでは全演奏を無料で生中継し、録画配信も行われる。
最終結果は20日夜(日本時間21日朝)に発表される。日本人が優勝すれば史上初の快挙となる。7カ国11名の精鋭による頂上決戦が、いよいよ始まる。
本選進出者一覧(アルファベット順)
- ピオトル・アレクセヴィチ(ポーランド、25歳)
- ケヴィン・チェン(カナダ、20歳)
- ダヴィッド・フリクリ(ジョージア、24歳)
- 桑原志織(日本、30歳)
- ティアンユー・リー(中国、21歳)
- エリック・ルー(アメリカ、27歳)
- ティエンヤオ・リュウ(中国、16歳)
- ヴィンセント・オン(マレーシア、24歳)
- 進藤実優(日本、23歳)
- ズィトン・ワン(中国、26歳)
- ウィリアム・ヤン(アメリカ、24歳)