米田覚士がブザンソン国際指揮者コンクールで優勝

ブザンソン国際指揮者コンクール:ニュース

日本人29歳が世界最高峰コンクールで6年ぶり優勝

フランス東部ブザンソンで9月27日に開催された第59回ブザンソン国際指揮者コンクールの決勝で、岡山県出身の米田覚士(29歳)が優勝を果たした。日本人の優勝は2019年の沖澤のどか以来6年ぶりで、日本勢として通算11人目の快挙となる。

米田は現在千葉県松戸市在住。東京藝術大学指揮科を卒業し、高関健氏に師事。2021年には第19回東京国際音楽コンクール指揮部門で入選を果たすなど、着実にキャリアを積み重ねてきた若手指揮者だ。

審査員満場一致、フランスで歴史的快挙達成

決勝では、中国のTianyi Xie(21歳)、アメリカのKyrian Friedenberg(26歳)と共にファイナリスト3名に選ばれた米田が、ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団を指揮。ベルリオーズの《ベアトリスとベネディクト》序曲、レジス・カンポの《デリリウム・スケルツォ》(委嘱作品・世界初演)、プロコフィエフの《ロメオとジュリエット》抜粋を披露した。

演奏終了後、審査員長のミヒャエル・シェーンヴァントをはじめとする審査員は満場一致で米田をグランプリに選定。表彰式で米田は「美しく素晴らしい音楽を世界中の人々と共有できる指揮者になりたい」と喜びを語った。

小澤征爾以来の伝統、若手指揮者登竜門を制覇

ブザンソン国際指揮者コンクールは1951年の創設以来、74年の歴史を誇る世界最高峰の指揮者コンクールの一つ。1992年まで毎年開催されていたが、以後は2年に一度の開催となっている。

これまでに小澤征爾(1959年第9回)、佐渡裕(1989年)、山田和樹(2009年)、沖澤のどか(2019年)など、日本を代表する指揮者たちがこのコンクールで頂点に立ち、その後の国際的なキャリアの礎を築いてきた。米田もまた、この栄誉ある系譜に名を連ねることとなった。

岡山出身の新星、世界舞台で日本の実力証明

米田は岡山市出身で、幼い頃からピアノを始め、岡山市ジュニアオーケストラでは打楽器を担当していた。岡山城東高校音楽学類では、現在人気シンガーソングライターの藤井風と先輩後輩の関係にあった。

高校時代の恩師によると、米田と藤井風は「ピアノ遊び」を共にする仲で、「お互いに刺激し合っていた」という。音楽的才能に恵まれた二人が同じ学び舎で切磋琢磨していた青春時代のエピソードは、今回の快挙をより印象深いものにしている。

東京藝術大学進学後は、パーヴォ・ヤルヴィや山田和樹のマスタークラスを受講するなど、国内外の巨匠から学びを深めてきた。すでにNHK交響楽団、読売日本交響楽団、札幌交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京都交響楽団など、多くのプロオーケストラで指揮台に立っている。

優勝演奏をmedici.tv(有料配信)で視聴可能

米田覚士さんの歴史的な優勝演奏は、クラシック音楽専門の動画配信サービス「medici.tv」で視聴することができる。同サービスでは決勝の模様と表彰式の完全版が配信されており、ベルリオーズ、レジス・カンポ、プロコフィエフでの圧倒的な指揮ぶりを確認できる。

今回の優勝により、米田さんには賞金12,000ユーロのほか、3ヶ月間のキャリアサポート、提携オーケストラとの契約などの特典が贈られる。世界の指揮者としての新たなスタートを切った米田覚士さんの今後の活躍に、大きな期待が寄せられている。