徳島、香川、愛媛、高知の4つの県からなる四国支部。派手さよりも緻密で美しいサウンド作りを重視する実力派の高校が揃っています。
今回は、全国常連校として知られる愛媛県立伊予高等学校や、近年勢いに乗っている香川県立坂出高等学校のほか、代表枠争いに果敢に挑む注目校を10校ピックアップ!全国大会や四国支部大会での活躍にスポットを当てながら、各校の取り組みや演奏の特徴を解説します。
今秋の全日本吹奏楽コンクールを前に、高校生バンドの魅力あふれる姿を一緒に見ていきましょう。
愛媛県立伊予高等学校
最近5年の全国大会出場は、2023年、2024年。いずれも銅賞を受賞しました。(2020年はコロナ禍のため大会中止。)1984年に初の全国大会出場を果たして以来、累計出場28回を誇る全国常連校です。
2023年の全国大会では、「シンフォニエッタ第5番《火焔の鳥》」を演奏。2024年の同大会では「シンフォニエッタ第4番《憶いの刻》」を演奏。2年連続、福島弘和の曲で全国の舞台に挑んでいます。
意外にも全国大会での金賞受賞は1回のみ。しかし、その悔しさをバネに「正統派な演奏」でさらなる高みを目指す伝統校です。部員は現在83名(2025年度)。「雲外蒼天」を部訓として、一体感を大切にした音楽づくりを追求しています。
香川県立坂出高等学校


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最近5年の全国大会出場は、2021年、2022年、2023年、2024年。いずれも銅賞を受賞しました。四国支部代表の座をほぼ毎年勝ち取り、全国大会に連続出場しています。
2024年にはスパーク作曲「宇宙の音楽」、2023年には高昌帥作曲「吹奏楽のための風景詩《陽が昇るとき》より」を自由曲に選びました。高度な技術を要する難曲に果敢に挑戦するバンドです。
個々の演奏レベルの高さが際立ち、全日本アンサンブルコンテストでも全国大会へ頻繁に出場しています。ソロ・アンサンブル力の充実ぶりは全国屈指と言えるでしょう。音楽科を有する学校で、声楽・ピアノ・管楽器を幅広く学べる恵まれた環境も奏者の実力向上に寄与しています。
高松第一高等学校(香川)


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最近5年の全国大会出場は、2022年(銅賞)。その後は惜しくも支部大会金賞止まりとなっていますが、全国クラスの実力を持つ強豪校です。
2022年の全国大会ではR.シュトラウス作曲の「交響詩《影のない女》」の吹奏楽編曲版に挑み、その表現力豊かなサウンドで聴衆を唸らせました。伝統的にオーケストラの名曲をレパートリーにしており、定期演奏会ではR.シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」など難易度の高い作品も見事に演奏しています。
四国支部随一ともいえる長い歴史と実績を持つ古豪。四国の吹奏楽史を語る上で欠かせない名門校です。
愛媛県立松山中央高等学校


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最近5年の全国大会出場は、2021年(銅賞)。自由曲に「歌劇《フェドーラ》」(U.ジョルダーノ)を選曲し、全国初舞台ながら堂々とした演奏で注目を集めました。
1986年創部の比較的新しい学校です。しかしながら、全国大会へは通算5回出場しており、実力は折り紙付きと言えます。
部訓に「明るく、素直に、誠実に」を掲げており、伸びやかなサウンドづくりとチームワークの良さが持ち味。毎年開催する定期演奏会「サウンドトレイン」も地域で人気を博しており、観客を楽しませる企画力にも定評があります。
愛媛県立松山南高等学校


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最近5年は全国大会に出場していませんが、四国支部大会で上位の成績を取り続けている実力校です。全国大会へは1999年に出場しました。
2024年の四国大会では、「半音階的狂詩曲」(酒井格)を自由曲に選曲。代表選出は逃したものの、見事金賞を獲得しました。
若々しくストレートな演奏表現が光るバンド。「南の風を全国へ」をモットーに活動しており、爽やかな印象で聴き手を魅了します。部員数は83名(2025年7月現在)。全国の舞台へ返り咲く日が待たれます。
愛媛県立北条高等学校
最近5年は全国大会に出場していませんが、四国支部大会には毎年出場しています。2021年~2023年には3年連続で四国大会金賞を達成しました。
直近の全国大会出場は2013年。通算5回の出場経験があります。近年は全国の舞台から遠ざかっているものの、その実力は健在。外部から著名な指導者を招いて指導を受けるなど、実力向上のための活動も盛んにおこなわれています。
まじめな校風と伝統を継承しつつ新たな挑戦を厭わない指導方針で、近年力をたくわえている同校。全国大会への復帰が待たれます。
徳島県立城南高等学校


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最近5年は全国大会に出場していませんが、近年は毎年のように徳島県代表として四国支部大会に出場している実力校です。2021年、2024年は四国大会で金賞を受賞しています。
2024年の四国大会では、「シンフォニエッタ第3番《響きの森》」(福島弘和)を自由曲に選び、深みのある美しい演奏で聴衆を魅了。全国大会出場こそ逃したものの、会場から大きな拍手を浴びました。
徳島県内では長年トップクラスの成績を収める強豪校。全国大会への出場経験はまだありませんが、安定したサウンドと表現力には定評があります。
高知県立高知国際高等学校
最近5年は全国大会に出場していません。しかしながら、四国支部大会での活躍が目立ち、2021年、2023年、2024年には金賞を受賞しています。
2024年の四国支部大会では、「我らに今日の糧を与えたまえ 吹奏楽のための小交響曲」(マスランカ)を演奏。エネルギッシュな作品を若さあふれるサウンドで表現し、会場を沸かせました。
国際高校という名のとおり国際色豊かな校風で、吹奏楽部も自由な発想とチャレンジ精神に富んでいます。一人ひとりの演奏技術を磨きアンサンブルの精度を高める指導で力を伸ばしている同校。今後の飛躍が期待されます。
土佐女子中学高等学校


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最近5年は全国大会に出場していないものの、2024年には四国支部大会で金賞を受賞しています。2023年にも四国大会で銀賞を獲得するなど、安定した実力を持つバンドです。
2024年の四国大会では「レミニサンス」(長生淳)を演奏。緻密なアンサンブルと豊かな表現力で高く評価されました。
2023年に創部50周年を迎えた同校の吹奏楽部。息の合ったハーモニーと柔らかな音色が持ち味で、毎年県大会を勝ち抜いて支部大会に進出してくる実力派です。パフォーマンスにも秀でており、2023年にはマーチングコンテスト四国支部大会で金賞を獲得しています。
愛媛県立松山東高等学校
最近5年は全国大会に出場していません。しかしながら2021年~2024年に四国大会で連続して金賞を受賞しており、全国まであと一歩のところまで迫っている注目校です。
2023年には「ピース、ピースと鳥たちは歌う」(伊藤康英)、2024年には「チャコーナ・アラルガータ ~パルティータ第2番BWV1002より」(バッハ)を自由曲に選んでいます。
木管セクションの歌心と均整のとれたブレンドが持ち味。自由曲には邦人作品をよく取り上げています。作品背景を研究したうえで音楽的物語性を深める姿勢が、同校の強みと言えるでしょう。
それぞれの校風を映した音色で、日本の吹奏楽シーンに新風を送り込んできた四国支部の強豪校。選曲の工夫や磨き抜かれたサウンドの個性には、各校が持つ音楽への想いがしっかりとあらわれていました。
四国エリアのフレッシュなサウンドを聴くのが今から楽しみです。今年の全日本吹奏楽コンクールでは、これら強豪校の活躍にぜひ注目してみてくださいね!