2025年11月24日(月・祝) 、江戸川区総合文化センター・小ホールで行われた「第4回東京国際管弦声楽コンクール【ミュージカル部門】プロフェッショナルの部」にて第1位と、東京新聞社賞を受賞された山田さん。今回は同コンクールをはじめ、これから音楽コンクールに挑戦する方に向けてお話を伺いました。
取材・文|編集部
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プロフィール
山田久瑠見(Kurumi Yamada)Instagram
岐阜県各務原市出身
名古屋芸術大学音楽学部演奏学科声楽コース卒業
同大学大学院音楽研究科声楽専攻修了
両親から「あまりに音痴で恥ずかしいから」とヤマハ音楽教室に入れられたことをきっかけに、歌うことの楽しさに目覚める。地元の児童合唱団での活動を経て、名古屋芸術大学にて声楽を松波千津子氏に師事。
現在はクラシックの発声で確かな基礎を築く傍ら、独学でミュージカル歌唱の研究を重ね、その表現の幅を広げている。
趣味・特技
映画館で映画を見ること
受賞歴
第4回東京国際管弦声楽コンクール【ミュージカル部門】
プロフェッショナルの部 第1位、東京新聞賞
第2回プリマヴェーラ声楽コンソルソ【カテゴリーア・ミュージカル】
トレンタ 第1位
第13回豊田声楽コンクール【 大学・一般Aの部】
銀賞
岐阜国際音楽コンクール【声楽部門】
入選
大阪国際音楽コンクール【オペラ部門】【歌曲部門】
入選
東京国際管弦声楽コンクールを終えて
──コンクール、お疲れさまでした!終えた今のお気持ちをお聞かせください。
山田
純粋に嬉しいという思いと、悔しい気持ちの両方が残っています。本選の直前に体調を崩して一週間以上歌えず、自分の中ではかなり悔いの残る演奏になってしまいました。 ただ、自分が思う『良い演奏』と審査の評価が必ずしも一致するわけではない、とも感じています。何より、日々の積み重ねがなければ当日の舞台に立つことすら叶わなかったので、その点についてはとても嬉しい気持ちでいっぱいです。
──なぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?
山田
予選から本選まで、すべての審査員の先生方から講評をいただけるところに、大きな魅力を感じたからです。 現在、ヴォーカルを師事している先生がいないため、多くの先生方から客観的なアドバイスをいただけたことは、私にとって非常に貴重な経験となりました。
──自由曲は何を演奏されましたか?選曲理由も教えてください。
山田
今回のコンクールでは、ミュージカル『レベッカ』より劇中歌の「レベッカ」と、『Wicked(ウィキッド)』より「Defying Gravity(自由を求めて)」の2曲を歌いました。
まず「レベッカ」を選んだのは、以前受験したコンクールで、審査員の先生からシルヴェスター・リーヴァイ氏の作品(ミュージカル『ベートーヴェン』の「愛する人がいれば/月光」)を勧めていただいたことがきっかけです。それ以来、リーヴァイ氏の楽曲を深く聴き込むようになりました。その中で、ダンヴァース夫人が持つ重厚さや、強さのある低音の響きが自分の声質に合っていると感じ、選曲しました。
そして『ウィキッド』は、私にとってとにかく大好きな作品です。最近、映画版でのシンシア・エリヴォの歌唱に触れたことで、主人公エルファバの繊細な心境がより深く見えるようになってきました。偉大なシンシアの表現には到底及びませんが、「今このタイミングだからこそ、エルファバの心に寄り添って歌いたい」と強く思い、挑戦を決めました。
──コンクール準備期間について教えてください。
山田
不調の中で本選を迎えることになり、正直なところ不安でいっぱいでした。そんな私を支えてくれたのが、伴奏を務めてくれた友人の存在です。本当に励まされました。
どんな状況でも投げやりにならず、「今の私たちができる最善策」をいつも一緒に考えてくれる。その姿勢のおかげで、私も冷静さを取り戻し、落ち着いて本番への準備を進めることができたのだと思います。
──練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?
山田
今回選曲した2曲は、年齢も立場も全く異なる役柄です。冷酷で重厚な空気感を纏った中年の家政婦頭、ダンヴァース夫人。そして、等身大の葛藤を抱える16歳の少女、エルファバ。
この二人が決して同じように聞こえないよう、「声の色」や「深み」をどう変化させるかという点に、最も重点を置きました。客観的な表現を追求するため、自分の歌唱を録音・録画しては細かく見返すという作業を、納得がいくまで何度も繰り返しました。
──本番当日のお気持ちをお聞かせください。
山田
本番までの一週間以上、話すことも歌うことも控えていたため、「表現の振り幅が大きいこの2曲を本当に歌いこなせるだろうか」という不安は常にありました。それでも、これまで積み重ねてきた『過去の自分』を信じようと決め、当日の朝はあえて喉の不調を考えすぎないように努めました。
会場はとてもあたたかい雰囲気で、自分の出番が終わった後もホールに残って、他の参加者の演奏を熱心に聴いている方が多いのが印象的でしたね。演奏中こそ「とにかく最後まで歌いきろう」と必死でしたが、後から自分の演奏を聴き返してみると、思いのほかリラックスして歌えていたことに驚きました。
──東京国際管弦声楽コンクールに挑戦する方へのメッセージをお願いします。
山田
私自身の経験からの気づきでもありますが、自分が得意とする曲だけでなく、あえて「挑戦」と言えるような選曲をしてみるのも良いと思います。コンクールを通じて客観的な講評をいただくことで、自分一人では気づけなかった、思いもよらない発見があるかもしれません。
──今後の目標、将来の夢などをお聞かせください。
山田
自分のためだけに歌うのではなく、聴いてくださる方の心に何かが届くような、そんな歌を歌えるようになりたいです。
インタビューを終えて──編集後記
子供の頃の意外な原点から始まった山田さんの音楽人生。お話を伺って伝わるのは、山田さんの「歌うこと」への純粋な愛情と、飽くなき探究心です。
コンクールを単なる勝負の場ではなく、客観的な意見を得るための「学びの場」と捉える謙虚な姿勢。そして、本番直前の不調という試練を「過去の自分を信じる」ことで乗り越えたしなやかな強さ。その姿は、山田さんが目指す「誰かの心に届く歌」そのものを体現しているように感じました。
独学で自らの道を切り拓き、歌の世界でさらなる飛躍を目指す山田さんが、これからどんな景色を見せてくれるのか楽しみでなりません。
今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。



