2025年10月13日(月・祝)、札幌コンサートホールKitara 小ホールで行われた「2025北海道毎日学生音楽コンクール・バイオリン部門(学コンコース)」高校の部において第1位を受賞した増子さん。今回は同コンクールをはじめ、これから音楽コンクールに挑戦する方に向けてお話を伺いました。
取材・文|編集部
自分にピッタリな音楽コンクールが見つかる!国内外の音楽コンクール情報や結果まとめをわかりやすくご紹介し、次世代の音楽家や音楽ファンの皆様に寄り添います。
プロフィール
増子明里(Akari Masuko)Instagram
札幌出身・藤女子高等学校3年
同世代の友人の演奏に刺激を受け、ヴァイオリンを始める。
現在、桐朋学園大学音楽学部附属「子供のための音楽教室」に在籍。
ヴァイオリンを福島紫氏に師事。
趣味・特技
犬の散歩
受賞歴・演奏活動歴(抜粋)
全日本学生音楽コンクール(東京大会・全国)
第73回/第74回/第78回:東京大会 入選
第75回:東京大会 奨励賞・全国大会 入選
第76回:東京大会 第2位・全国大会 入選
第79回:東京大会 第3位
日本クラシック音楽コンクール(全国大会)
第29回・第34回:第3位
第31回・第32回:第2位(いずれも1位なし)
第33回:第3位(1位なし)
北海道毎日学生音楽コンクール
2015年・2016年:ジュニアコース 金賞
2017年~2025年:学コン課題曲コース 第1位
その他の受賞
第41回 全日本ジュニアクラシック音楽コンクール 全国大会 第1位
第27回 リスト音楽院セミナー 審査員特別賞
北海道毎日学生音楽コンクールを終えて
──コンクール、お疲れさまでした!終えた今のお気持ちをお聞かせください。
増子
小学生の低学年から北海道毎日学生音楽コンクールに毎年挑戦してきました。このコンクールは今回が最後となり、演奏前から演奏後も今までの様々な感情が交差し、込み上げてくるものがありました。
そんな中、良い結果をいただけてとても光栄に嬉しく思っております。このような結果を残せたのは、これまで指導と共に支えてくださった福島紫先生、色々な舞台で安心させてくださったピアノ伴奏の先生、応援してくれた友人や家族、周りの方々のお陰だと、心から感謝しております。
これまでコンクールを通してたくさんの事を学ばせていただきました。予選では審査員の先生方から頂くアドバイスが自分を見つめ直す良い機会となり、新たな励みにもなりました。本選後に公開される先生のコメントからは、自分の演奏を客観的な視点から振り返ることができました。
本番へのプレッシャーや緊張との付き合い方も回を重ねる度に良い緊張感へ変えることができるようになり、精神的に鍛えられると同時に一つのことに全力で励む集中力も養われたと実感しています。
──なぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?
増子
初めてコンクールを聴きに行った際、同世代の友人が素敵なドレスを着てステージで演奏している姿を見て、「自分も挑戦してみたい」と思ったのがきっかけです。
ちょうどヴァイオリンを始めた頃、テレビでフィギュアスケートの浅田真央選手が表彰台に上がる場面を目にし、幼いながら、その輝きの裏には弛まぬ努力と競争の世界があることを知りました。自分もヴァイオリンでオリンピックに出たいと親に伝えたことを覚えています。
小学校に入ってからは先生に勧められ、コンクールに参加し、それ以来、毎年受け続けてまいりました。
──自由曲を選ぶ際、どんなことを基準に選びますか?
増子
メッセージ性が強く、ヴァイオリン特有の深みのある音色を表現できる曲が好きです。先生にもいろいろ相談しアドバイスをいただいた上で、自分の得意なこと・苦手なことをよく理解し、好きな曲やまた弾いてみたい曲の中から、自分に合って成長させてくれる曲を選びます。
──コンクール準備期間について教えてください。
増子
人それぞれ異なると思いますが、私は敢えてコンクールだということを意識しないようにする事を大切にしています。理想は常にリラックスした状態で曲に向き合い、音楽を表現することを心から楽しみ、聴いてくださる方々に届ける気持ちを忘れずに練習を進めていきます。
わたしなりの健康管理としては、生姜入りのホットレモンを飲むようにしたり、家の庭で採れるブラックベリーのジュースを飲んだりして風邪などをひかないように、またケガを絶対しないように注意して過ごしていました。
──練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?
増子
曲の中に不安な箇所(苦手な箇所)を作らないために、まずは部分練習で全体を同じ質にそろえることを目指しました。次に通し練習で全体を把握し、その後は微調整や磨き込みを行い、直前は再び通し練習に戻す、という流れで取り組みました。
コンクール本番への対策としては、「弾いてください」と言われたらいつでも弾ける状態を保つことを心がけました。
また、体幹を鍛える運動を取り入れ、練習によって体を壊さないようにも注意しました。練習の時間帯については、幼い頃は登校前にも練習していましたが、中学校に入ってからは学校の課題が増えたため、勉強と練習の時間配分にはとても苦労しました。
──本番当日のお気持ちをお聞かせください。
増子
本番の日は、敢えてゆっくりと起床しました。食事はしっかりいただき、その後、基礎練習からいつも通りの通し練習をします。本番の日だからといって特別なことはせず、体力を温存しておくことを大切にしました。
当日はワクワク・ドキドキはあるものの、直前まで恐さや過度な緊張はあまり感じませんでした。曲のことを考えすぎると不安要素が生まれてしまうため、全く関係のないことを考えたり、そばにいるピアノ伴奏の先生と雑談したりして、普段の自分と変わらないポジティブな状態で過ごすことを心掛けました。
──北海道毎日学生音楽コンクールに挑戦する方へのメッセージをお願いします。
増子
私は、ヴァイオリン(曲や作曲者)が大好きな気持ちを大事にしています。練習では「辛い」とか「大変」といった感情を持たないように、常に「楽しい」「面白い」と思いながら練習できるように工夫をしています。
本番に向けては手や体を温めて、自分にとって一番良いと思える環境を自分で整え管理しました。精神面では、緊張を感じたときに私は、心拍数の上昇に伴って体内で何かが上がってくるのを強く自覚するので、それを普段の位置(お腹の下のほう)にすとんと落とすイメージを持つように意識すると、嫌な緊張を消すことができます。
本番直前は筋肉が固くならないよう椅子に座らず、ジャンプや上半身の体操をして過ごすことで嫌な緊張を忘れるようにしています。
──今後の目標、将来の夢などをお聞かせください。
増子
これからも表現を生み出す力を大切に、多彩な音色が出せるよう、さらに勉強を続けていきたいと思っております。コンクールで学ばせていただいた様々な事を土台に、自分の音楽を見いだし、人の心に残る演奏ができるよう日々精進してまいります。
【出演予定】
●2025年12月21日 コンサートホールKitara大ホール:<JAL presents>クリスマスオルガンコンサート
●2026年3月15日コンサートホールKitara小ホール:2025北海道毎日学生音楽コンクール受賞記念コンサート
インタビューを終えて──編集後記
お話を伺うほど「好き」という気持ちが音の芯をつくるのだと実感しました。練習を「楽しさ」で満たす工夫や、心身を温め体力を温存し、伴奏の先生との雑談で“いつもの自分”に戻る姿勢。緊張を「お腹の下にすとんと落とす」イメージは、舞台に立つ人のセルフマネジメントの良いヒントだと感じます。
自由曲の選び方にも誠実さがにじみます。メッセージ性の強い作品を深い音色でどう語るか——先生の助言を受けつつ、得意と課題を見据えて「自分を成長させてくれる曲」を選ぶ。その姿勢は、結果以上に「自分の音楽を見いだすプロセス」を大切にしているからこそ、なのだと伝わりました。
長年の挑戦に一区切りをつけ、学びを糧に次のステージへ。日々の工夫と周囲への感謝を忘れないまなざしが、これからの一音一音にさらに豊かな表情を与えてくれるはず。次の舞台でのより多彩な音色を楽しみにしています。お忙しいところありがとうございました。今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
2025北海道毎日学生音楽コンクールの概要については下記をご覧ください。
結果については下記をご覧ください。




