第26回全日本アマチュアギターコンクール第一位 佐藤拓真さんにインタビュー!

佐藤拓真さまアイキャッチ

2025年8月23日に三鷹市芸術文化センター・風のホールで行われた「第26回全日本アマチュアギターコンクール」において第一位を受賞した佐藤さん。今回は同コンクールをはじめ、これから音楽コンクールに挑戦する方に向けてお話を伺いました。


取材・文|編集部

自分にピッタリな音楽コンクールが見つかる!国内外の音楽コンクール情報や結果まとめをわかりやすくご紹介し、次世代の音楽家や音楽ファンの皆様に寄り添います。


プロフィール

佐藤拓真(さとう たくま)

福島県会津若松市出身
中央大学文学部心理学科卒業。

高校時代のバンド活動をきっかけにアコースティックギターを始め、押尾コータローの演奏に触れてソロギターに魅了される。大学在学中は大坪純平氏に師事し、クラシックギターを本格的に学ぶ。近年はウクレレやエレキギターにも取り組み、サイトウユウキ氏の指導を受ける。

使用楽器は栗山大輔の2023年製。
ペドロバルブエナをモデルとしたもので、太く厚みのある低音とバランス良く、クリアに響く中高音が気に入り愛用中。

趣味・特技

趣味はランニングと温泉。

受賞歴・演奏活動歴

第16回、第18回フォルマールギターオーディション優秀賞受賞
第26回全日本アマチュアギターコンクール第一位

全日本アマチュアギターコンクールを終えて

表彰:佐藤拓真さま
写真提供:全日本ギター協会

ーーコンクール、お疲れさまでした。コンクールを終えて今現在のお気持ちをお聞かせください。

佐藤
ただただ嬉しい気持ちでいっぱいです!私は普段、社会人として働きながらクラシックギターに取り組んでおり、業務の都合で繁忙期には練習時間が確保できず、仕事と練習の両立に悩む時期もありました。

それでもここまでの成果を出せたのは、辛抱強く熱心にご指導くださったレッスンの先生方はもちろん、演奏の機会をその都度与えてくださった母校・中央大学ギターサークルOBOGの皆さま、温かく応援してくださった職場の皆さま、そして支えてくれた家族のおかげだと感じています。

ーーなぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?

佐藤
昔、レッスンの先生から「忙しくても、いろいろなコンクールに挑戦した方が良い」と伺ったことがありましたが、当時の自分には負担が大きく、敬遠していました。ところが昨年、思いがけず体調を崩し、大好きなクラシックギターが弾けない時期を経験して、考え方が変わりました。当時を振り返るとあまりにも想定外だったため、参加を予定していたコンペティションへの出場も断念せざるを得ず、人生は何が起こるかわからないと身をもって知り、「できることは、できるときに挑戦しよう」と思うようになりました。

その後、体調が戻り、幸いにも再びギターを手にできた時、学生時代に大学の先輩が出場していたことを思い出し、今回の応募を決めました。

ーー自由曲はハンガリー幻想曲(メルツ)を演奏されたそうですが、選曲理由を教えてください。

佐藤拓真さま演奏
写真提供:全日本ギター協会

佐藤
コンクールに臨むにあたっては、自身の楽器の強みを生かした選曲を心がけました。クラシックギターという楽器は人と同じく個性の塊で、それぞれに長所・短所があり、奏者によって引き出される音色も変わる奥深い楽器です。今回使用した栗山大輔氏製作のギターは、存在感のある伸びやかな低音と、分離がよくクリアに響く中高音が強みでしたので、大胆さと歌うメロディーのあるロマン派の作品と相性が良く、その中から曲を選ぶことにしました。

選曲にあたっては、「小さなオーケストラ」と呼ばれるクラシックギターの多彩な音色や表現力をいかしたいと考えました。そのため、様式や構成が多彩で、ギターらしさも十二分に発揮できる《ハンガリー幻想曲》は、自由曲として実に理想的だと感じました。

ーーコンクール準備期間にこころがけたことは何かありますか?

佐藤
今回取り組んだ課題曲と自由曲はいずれもロマン派の作品で、実は私としては得意ではない部類でした。そこでCDやYouTube、サブスクリプションを通じて多くの国内外のプロの演奏を参考にし、歌い方をまねるところから始めました。最終的には、理想とする歌い方へ落とし込めるようにイメージトレーニングを重ね、自分なりのアゴーギクをつかむことができました。

また、業務が忙しい時期はギターを手にする時間が限られるため、練習方法も工夫しました。たとえば、お昼休みなどのスキマ時間を活用し楽譜を見て曲の流れをイメージするなど、楽器を持たない練習にも取り組みました。むしろその時間が、練習の質を高めるよい機会になったと感じています。

ーー練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?

佐藤
音楽的な要素ではフレージングや和音の響きに注意しながら練習しました。ただ今回は舞台での演奏環境にも意識した練習も色々行ったことが大きく効果を発揮したと感じています。本番の演奏時には特にスポットライトの影響でギター指版上の金属製フレットが眩しく感じ、いつもの練習での楽器の見え方と異なる場合があります。

そうした小さな変化でも、演奏中に思いもよらない動揺が生まれ、ふとした瞬間に音楽的な集中から浮いてしまい演奏のミスに繋がってしまうことが意外にもあります。私自身、過去の演奏時に実際に経験しました。そのため、今回は自宅での練習時にはスポットライトに近い暖色系の照明を様々な角度で使ってみて、演奏時の環境を再現し本番とのギャップをなくす工夫をしていました。

ーー本番を迎えた当日のお気持ちをお聞かせください。

佐藤
初めて参加するコンクールということもあり、審査会場へ向かう道中から不慣れで戸惑いました。会場に着いた後も演奏会場のホールが普段の発表会での規模より何倍も大きく、正直なところ気圧されていました。言うまでもなく予選の演奏時にはとても緊張した状態でしたので、無事に本選に出場が決まった時にはすごくほっとした気持ちになりました。

本選では演奏の序盤に目立つミスがありましたが、構成を意識した普段の練習のおかげで気持ちを立て直し、再び音楽に集中することができました。細かなミスがあっても全体の流れに沿うよう心がけていたことが、評価につながったのだと思います。

ーー全日本アマチュアギターコンクールに挑戦する方へのメッセージをお願いします。

全日本アマチュアギターコンクール集合写真
写真提供:全日本ギター協会

佐藤
コンクールはギターを続ける上で大きなモチベーションに繋がるだけでなく、普段の練習を見直すきっかけにもなります。本番という特別な場は、自分の本当の実力を知ることが出来る「鏡」のような存在だと感じます。私自身もうまくいかず落ち込むことが多々ありましたが、逆に「修正すべきところを明確に提示してくれるチャンス」と捉えることにしています。

全日本アマチュアギターコンクールは毎年、三鷹市芸術文化センター・風のホールで開催されます。会場の音響はプロの方々にも評判が高く、舞台に立つとギターの音色が空間的に響き渡るのを演奏しながら感じられる素晴らしいホールです。ぜひ、その響きを体験し、コンクールを通じて「楽器を続ける楽しさ」を感じてほしいと思います。

ーーー今後の目標などをお聞かせください。

佐藤
本選の演奏を振り返るとまだまだ多くの反省点があると感じています。光栄にも賞をいただきましたが、最終的には「自分で納得のいく演奏が出来ること」が目標です。そのためにも引き続き良い演奏ができるよう基礎を磨いて頑張りたいです。

また将来としてはクラシックギターの普及にも取り組んでいきたいと思っています。私は東北・福島県に在住しておりますが、地元では他の楽器に比べて残念ながら、あまりクラシックギターの知名度は高くありません。だからこそ、これを機に、機会があれば演奏活動に取り組むことで、クラシックギターの魅力を広げていけたらと思っています。

第26回全日本アマチュアギターコンクール・本選 第一位:佐藤拓真
動画提供:全日本ギター協会

お仕事とギターの両立、その背後にある先生・仲間・職場・ご家族へのまっすぐな感謝の気持ち…。体調不良を経て「できるときに挑戦する」へと考えを切り替えた決意も静かに力強く、胸に響きました。楽器の個性を生かしてロマン派を選び、《ハンガリー幻想曲》で「小さなオーケストラ」を描こうとする発想、さらに舞台照明まで想定して練習環境を整えた準備は、とても実践的でした。

初出場の緊張の中でも、構成を手がかりに音楽へ戻っていく姿は、「本番は自分を映す鏡」という言葉そのものだと感じます。結果だけでなく、気づきを次へつなぐ姿勢も印象的でした。福島でクラシックギターの魅力を広げたいという思い――これからの歩みを、温かく応援させていただきたい気持ちでいっぱいです。
このたびはお忙しいところ、ありがとうございました。今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

佐藤拓真information

・2026年8月22日(土)第27回 全日本アマチュアギターコンクール(三鷹市芸術文化センター・風のホール)では、前回優勝者としてゲスト演奏。
また本年は「第18回 フォルマール・ギター・オーディション」に入賞し、来年度の講習会にて入賞者演奏に出演予定です。精一杯演奏いたしますので、いずれのコンクールにもぜひご参加・ご応募ください。

第26回全日本アマチュアギターコンクールの概要については下記をご覧ください。

第26回全日本アマチュアギターコンクールの結果については下記をご覧ください。