第19回ショパン国際ピアノコンクール、10月本選の開催概要を発表

© International Chopin Piano Competition / Photo by [Wojciech Grzedzinski]:ニュース
© International Chopin Piano Competition / Photo by [Wojciech Grzedzinski]

8月27日、東京都目黒区のポーランド大使館で、ポーランド国立フリデリク・ショパン研究所(NIFC)のアルトゥル・シュクレネル所長をはじめとするスタッフが記者会見を開催し、10月2日から23日まで開催される第19回ショパン国際ピアノコンクールについて、日本のメディアに向けて詳細を発表した。

シュクレネル所長は、今回の大会に過去最多となる642人が応募したことを明かし、「一つのコンクールでこれほどの応募があるのは世界的に見ても記録的で、非常に注目度が高い大会だということを強調したい」と述べた。

予備予選を経て10月3日から始まる1次予選に進んだのは20の国と地域の85人。中国の29人が最多で、日本と地元ポーランドが13人ずつで続く。

「レベルも非常に高く、1次予選に出場する85人中19人が世界各地で開かれたコンクールの優勝者や入賞者だ。まさにコンクールの中のコンクールと言える」とシュクレネル所長は胸を張った。

ベヒシュタイン1975年以来50年ぶり復帰、5メーカーから参加者が選択

今大会の注目すべき変更点として、ベヒシュタインが1975年の第9回大会以来50年ぶりにコンクールに復帰することが発表された。これにより、ピアノメーカーはスタインウェイ、ヤマハ、カワイ、ファツィオリ、ベヒシュタインの5社となる。

従来は、スタインウェイが2台用意されていたが、今回はメーカーごとに各1台。コンテスタントは計5台の中から選ぶことになる。

「原則として、一度選んだピアノは、本選まで変えられない」とのNIFCルールが設定されているが、前回大会では結果的に途中段階での選択変更が認められた経緯があり、実際の運用については開幕後の動向が注目される。

ファイナルに「幻想ポロネーズ」追加、19世紀演奏様式を再現

今大会の最大のトピックとして、ファイナルの課題にソロ曲「幻想ポロネーズ Polonaise-fantaisie」の演奏が新たに導入された。シュクレネル所長がその意図を明かした。

「作曲家若き日の作品であるピアノ協奏曲だけを課すのではなくて、最も晩年に書かれた作品のひとつである『幻想ポロネーズ』を同時に弾いてもらうことで、(出場者に)作曲家のあらゆる資質を把握していただきたい。そういったコンセプトで追加の1曲を課題に入れることになりました」

さらに、19世紀の演奏様式の再現という側面も説明した。「この曲はファンタジー、つまり即興の要素が非常に強いジャンル。ショパン自身もインプロヴィゼーションを行いましたが、コンチェルトを弾く前に自分自身もインプロヴィゼーションや自作の別のソロの作品を弾く、そしてその後でコンチェルトの演奏に入っていくという演奏スタイルをとっていました。19世紀には当たり前だったことですが、そういった形を今回もとってみたいということから、まずはポロネーズを演奏してもらいます」

実際の段取りとしては、「おそらくオーケストラのメンバーは『幻想ポロネーズ』の演奏のあいだ、舞台上で待機した状態で、そのまま協奏曲の演奏へと移ることになるだろう」と具体的な流れを示した。

公式サイト・YouTube・TikTok・アプリで全世界同時配信

コンクールの模様は公式ウェブサイトやスマホアプリ、NIFCのYouTube公式チャンネルなどに加え、初めてTikTokでも配信される。若年層への裾野を拡げるという意図があるという。

日本のクラシックファンにとっては、時差の関係で寝不足の日々が続く10月となるが、多様なプラットフォームでのアクセスが確保されている。

12月優勝者リサイタル、翌1月入賞者ガラ・全国ツアーも発表

コンクール終了後の展開についても発表された。早くも12月には日本でも優勝者リサイタル(12月15日、16日)が行われ、翌1月には入賞者ガラ・コンサート(2026年1月27日、28日)も予定されている。同月には入賞者とワルシャワ・フィルとの全国ツアー全8公演もあり、現地の熱気を時間を置かず体感できる貴重な機会となる。

コロナ禍で1年延期された前回2021年の大会では反田恭平が2位、小林愛実が4位と日本勢が躍進した。今回は牛田智大、桑原志織、中川優芽花らが大舞台に挑む。

第19回ショパン国際ピアノコンクール
日程:2025年10月2日(木)〜10月23日(木)
会場:ワルシャワ・フィルハーモニー
公式サイト
配信:YouTube、TikTok、公式アプリほか