精華女子や玉名女子を筆頭に、九州支部には全国レベルの実力校が集結しています。その一方で、久々に頭角を現す学校や個性派サウンドで勝負するバンドも台頭。全国への切符を手にするのは一体どこの学校なのか、今年も目が離せません。
本記事では、過去5年の全国大会出場歴をもとに、演奏傾向や強みを多角的に分析しながら、強豪校10校をピックアップ!秋の全日本吹奏楽コンクールを前に、九州支部の「今」を読み解きます。ぜひ最後までお楽しみください。
精華女子高等学校(福岡県)
最近5年の全国大会出場は、2021年、2022年、2023年、2024年。(2020年はコロナ禍につき大会中止。)2023年、2024年には2年連続で金賞に輝きました。全国出場回数は通算26回を数え、そのうち金賞は16回。九州を代表する強豪校です。
2023年の全国大会では、自由曲に「ガレア・エト・ベルム~ステルケ・ヴァン・アイスマの知られざる物語~」を選曲。17世紀のオランダ独立戦争を題材にした非常に難解な曲でしたが、曲の背景を深く理解し、物語を語るような荘厳な音楽を作り上げました。また、2024年にはフランス北部にあるクーリエという炭鉱で起きた炭鉱事故を題材にした「フラターニティ―」を演奏。重厚感あふれるサウンドで会場を魅了しました。
精華女子は80名近い大編成の女子校バンド。櫻内教昭先生の的確な指導のもとで奏でられる、豊かな音楽性と統一感あるサウンドが持ち味です。マーチングにも力を入れており、2024年には全日本マーチングコンテスト全国大会と全日本吹奏楽コンクール全国大会、合わせてW金賞を達成しています。
玉名女子高等学校(熊本県)


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最近5年の全国大会出場は、2021年、2022年、2023年、2024年。2013年の「三出休み」(3年連続出場したら次は出場休止となるかつてのルール)と2020年のコロナ禍による中止を挟み、連続して全国大会で金賞を獲得しています。2025年の全国大会で連続金賞12回目達成なるか、注目が集まります。
2024年の全国大会では「カタリナの神秘の結婚(2023年版)」を自由曲に選曲。2023年に演奏した「クロスファイア ~ノーヴェンバー 22 J.F.K(2023年版)」に続き、2年連続で樽屋雅徳の曲で全国の舞台に挑みました。
徹底した基礎合奏と緻密な音楽づくりが強み。米田真一先生の長年の指導のもと、「歌心」を大切にした柔らかな表現力と、フォルテッシモでも破綻しない安定感あるサウンドを両立させています。マーチングコンテストでも全国上位の常連で、その活躍は常に注目を浴びています。
鹿児島県立松陽高等学校(鹿児島県)


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最近5年の全国大会出場は、2021年、2022年、2023年、2024年。創部から40年余りで通算10回の全国大会出場を誇る、鹿児島県の強豪校です。
2024年の全国大会では「宇宙の音楽」を自由曲に選曲。また、2023年の同大会では「ブリュッセル・レクイエム」を選曲しました。両年とも銀賞を受賞しています。
松陽高校吹奏楽部は1・2年生あわせて80名規模の大所帯。立石純也先生のもとで鍛え抜かれた堅実なサウンドと、曲の情景を描き出す表現力が強みです。ほぼ満席となる定期演奏会では、難易度の高いクラシック曲からポップスまで幅広いレパートリーを披露。その演奏は地元のKTS鹿児島テレビより「ハイレベルで迫力満点」と報じられたこともあります。
活水中学校・高等学校(長崎県)


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最近5年の全国大会出場は、2021年、2022年、2023年、2024年。4年連続で全国大会に出場しており、2022年は銅賞、その他の年は銀賞を受賞しています。
2024年には「ル・シャン・ドゥ・ラムール・エ・ドゥ・ラ・プリエール(愛と祈りの歌)」を自由曲に選曲。ドラマティックな現代作品を持ち前のまとまりある響きで演奏し、金賞に迫る健闘を見せました。
活水(かっすい)は長崎市の伝統あるミッションスクール。中学生のうちから基礎を固め、継続的な指導と多様な経験を通して高校で大きく成長できる教育体制が整っています。柔らかな品格が漂うサウンドや、アンサンブル力の高さに定評があります。
福岡工業大学附属城東高等学校(福岡県)
最近5年は全国大会に出場していないものの、九州支部大会では連続して金賞を取り続けている実力校です。直近では2018年に全国大会で金賞を獲得しています。
2018年の全国大会では自由曲に樽屋雅徳作曲の「プラネット・ナイン ~未知への軌跡~」を取り上げ、重厚なサウンドで宇宙の神秘を表現しました。2024年の九州大会では、同じく樽屋雅徳の「キリストの復活 ~ゲツセマネの祈り~」を自由曲に選曲しています。
1960年の創部以来、『三随五訓』の精神が受け継がれている同校。大編成を活かした分厚いハーモニーとシャープなリズム感が持ち味です。クラシックの名曲から邦人現代曲まで演奏するレパートリーの広さも強みとなっています。
原田学園鹿児島情報高等学校(鹿児島県)


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最近5年は全国大会に出場していません。しかしながら、2022年、2023年と続けて九州支部大会で金賞を受賞している、鹿児島県をけん引する強豪校です。
2013年には自由曲にベルリオーズの「幻想交響曲より V.」を選曲。九州代表として全国大会に進出し、銀賞を獲得しています。
各パートの機動力が高く、フォルテの迫力やピアノの繊細さを美しく出せるのが同校の強みです。地元鹿児島での評価は高く、「プロ顔負けの表現力」と報じられることも。近年は全国大会から遠ざかっているものの、その実力は折り紙付き。全国の舞台へ返り咲く日が待たれます。
福岡第一高等学校(福岡県)


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最近5年は全国大会に出場していませんが、1990年代~2000年代にかけて全国上位の常連として名を馳せた伝統校です。2010年以降は県大会止まりとなることも多くありましたが、近年また勢いを盛り返し、2023年、2024年には連続して九州大会への進出を果たしました。
2023年の九州大会では江原大介作曲「魂のミステリウム」(この曲は同校吹奏楽部委嘱作品として2023年に作曲された)を演奏し、金賞を獲得。2024年の同大会にも江原大介の「ドラゴンズ・レアム〜海を司る神々」を演奏し、銀賞を受賞しました。
全日制の普通科に加え音楽科も擁する福岡第一高校。実力を磨くための質の高い環境が整っているのが強みです。さらなる飛躍が期待される注目バンドの一つです。
中村学園女子高等学校(福岡県)
最近5年は全国大会に出場していません。しかしながら、昭和後期から平成初期にかけて全国大会に数多く出場し、その間に金賞を6度獲得した実績を持ちます。
黄金期の中村学園女子は松澤洋先生の名指揮で知られ、オペラやバレエ音楽を好んで演奏していました。「こうもり」「カルメン」「ロメオとジュリエット」などクラシックの名曲を次々に演奏し、6度の全国金賞を達成した松澤マジックは伝説的。昭和・平成初期の吹奏楽シーンに大きな足跡を残しました。
現在の同校吹奏楽部の副顧問は、その松澤洋先生。2026年度からの男女共学化を控え新体制への移行期ですが、部員50人前後で活発に活動中です。久々の全国大会への復活に向け、注目が集まっています。
八代白百合学園高等学校(熊本県)


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最近5年は全国大会に出場していません。2010年の全国銅賞以降は全国の舞台から遠ざかり、県大会止まりとなる年も増えていましたが、2024年は久々に九州大会に進出しています。
2024年の九州大会では、田村修平作曲「交響詩《祈りの陽》」を自由曲に選曲。銀賞を受賞しました。同年には木管八重奏のメンバーが九州アンサンブルコンテストにも進出し、金賞を受賞。いま勢いに乗っているバンドです。
八代白百合の吹奏楽部は、服部明子先生の指導のもと一人ひとりの役割が重要になるアンサンブルを鍛えてきました。フレーズの歌いまわしや音色のそろえ方にこだわった演奏が同校の強みです。
九州学院高等学校(熊本県)
最近5年は全国大会に出場していませんが、昭和中期から後期にかけて支部大会で活躍し、全国大会へも複数回出場している古豪です。
2024年の熊本県大会では久石譲「《もののけ姫》セレクション」、2023年の同大会では天野正道「オルレアンの少女」を自由曲に選び、いずれも銀賞を受賞しています。
九州学院吹奏楽部は、男女共学の部員構成でチームワークの良さが特徴。部員は50名前後で、一人ひとりの基礎力を高める指導で知られます。校内外のイベントや音楽祭などにも幅広く参加し、着実に力を磨いているバンドです。
九州支部で活躍する10つの強豪校を紹介しました。華やかな舞台の裏には、日々の地道な練習と挑戦があります。どの高校も、限られた時間と環境の中で「自分たちだけの音」を追い求め、磨き上げてきました。
九州から全国へ――。その思いを胸に高みを目指す九州支部の高校生。彼らの活躍に今年も大きな期待が寄せられます。