2025年6月5日(木)~7日(土)に日立システムズホール仙台で行われた「第9回仙台国際音楽コンクール」において最高位(第二位)を受賞されたムン・ボハさん。
今回は同コンクールや音楽コンクールに挑戦される方へ向け、お話を伺いました。
取材・文|編集部
自分にピッタリな音楽コンクールが見つかる!国内外の音楽コンクール情報や結果まとめをわかりやすくご紹介し、次世代の音楽家や音楽ファンの皆様に寄り添います。
プロフィール
ムン・ボハ(Moon Boha)
2006年、韓国生まれ。
2023年よりカーティス音楽院にて、アイダ・カヴァフィアンに師事。
これまでに、ピエール・アモイヤル(ザルツブルク・モーツァルテウム大学プレカレッジ)、ヨゼフ・シュパチェク(プラハ)、キム・ナムユン(韓国芸術英才教育院)、アナト・マルキン・アルマニ(マンハッタン音楽学校プレカレッジ)に師事。
ミハエラ・マルティン、クライディ・サハトチ、ノア・ベンディックス=バルグリー、フィリップ・ドラガノフ、アニ・シュナーク、マーティン・ビーバー、原田幸一郎ら、多くの著名ヴァイオリニストのマスタークラスを受講。
オンブク小学校オーケストラおよびイェウォン学校オーケストラでコンサートマスターを務めたほか、2022~2023年にはチェコ・フィルハーモニー・ユースオーケストラにも参加し、オーケストラ活動にも積極的に取り組んでいる。
受賞歴・演奏活動歴
第9回仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門:最高位(第2位/2025年)
珠海モーツァルトコンクール(若い音楽家のための):第2位(2022年)
ユーディ・メニューイン国際ヴァイオリンコンクール ジュニア部門:第5位(2021年)
レオニード・コーガン国際コンクール:第2位(2020年)
韓国国内および国際コンクール:「音楽春秋」(2015年)、「クレシェンド」(2016年)、シンガポール・ヴァイオリンフェスティバル(2019年)、コチャン(2022年)などで第1位受賞
2021年:「ソナスアーツ」よりヤング・ソリストに選出、スイスにてソロリサイタル開催
2023年:ドイツ・ナショナル・フェスティバルにて「ヤング・アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に選出、バイエルン放送交響楽団メンバーと共演
仙台国際音楽コンクールを終えて
ーーコンクール、お疲れさまでした。コンクールを終えて今現在のお気持ちをお聞かせください。
ムン・ボハ
コンクールが終わってから2週間が経ちましたが、まだ信じられないほど幸せな気持ちでいっぱいです。この気持ちは、きっと一生忘れないと思います。
仙台国際音楽コンクールは、私にとって初めての「シニア」のコンクールでした。準備期間中は必死で努力を重ね、その努力が実を結んだことをとても嬉しく思っています。
まず、コンクールのために用意したすべての曲を演奏できたことに満足しています。
そして、素晴らしい仙台フィルハーモニー管弦楽団の皆さん、そしてマエストロ広上とご一緒できたことが、コンクールのラウンド中ずっと大きな喜びを与えてくれました。
ーー練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?
ムン・ボハ
現在、大学1年生で寮生活をしています。空き時間があれば、学校の練習室でいつも練習していました。
コンクールの準備にはたくさんの曲を練習する必要がありますが、その中でも私は、音程、ダイナミクス、作曲家の意図、そして自分のイマジネーションといったすべての細部に意識を向けるようにしていました。
練習では、些細なことも決して見過ごしません。満足しなければ、できるようになるまで何十回も繰り返します。
特に音程の練習は、どれだけやっても十分だと思わないです。それほどまでに、力強く表現力豊かな演奏をするために必要な自信をつけるための基本的な部分なのです。
ーーコンクール準備期間にこころがけたことは何かありますか?
ムン・ボハ
コンクールの準備期間中、結果のことはあまり考えず、ただ曲の準備をすることだけに注意を払いました。ステージで各曲を演奏した後に満足感を得たかったので、毎日の練習を通じて自分を高めることに集中しました。
準備を支えてくれたのは、先生や家族、友人たちの存在です。私は現在アメリカのカーティス音楽院で学んでおり、家族は韓国にいるため学期中は会えませんでしたが、毎日FaceTimeで連絡をとっていました。離れていても、その存在が大きな安心感となり、コンクールの準備でストレスに苦しんでいた時、安らぎを与えてくれました。
師事しているカヴァフィアン教授も、常に励ましの言葉をかけてくださり、熱心に指導してくださいました。私が今回得ることができた成果は、すべて周囲の方々の支えがあってこそだと心から感じています。
ーーなぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?
ムン・ボハ
私は現在、大学1年生で、ちょうど19歳になったばかりです。これまでに、メニューイン国際コンクールをはじめとする多くのジュニアコンクールに参加し、幸運にもいくつかの賞を受賞しました。
しかし、シニア部門のコンクールには一度も参加したことがありませんでした。いろいろと考えた末、チャレンジすることを決め、思い切ってこの名誉ある仙台国際音楽コンクールへ応募しました。
私にとっては大きな一歩であり、非常に重要な挑戦でした。
このコンクールでの私の個人的な目標は、自分が用意してきたすべての曲をステージで演奏することでした。私の音楽を聴衆や審査委員の方々と共有し、音楽を通して交流したかったのです。自分の音楽で人を大きく感動させることができるという自信はありました。それがこのコンクールに参加した理由です。
ーー本番を迎えた当日のお気持ちをお聞かせください。
ムン・ボハ
予選では、かなり緊張していました。当日の朝、緊張して食事ものどを通らず、ステージへ行くまで緊張しないよう気持ちを整え続けなければなりませんでした。
やはり予選が一番緊張したステージだったと思います。
一方で、セミファイナルとファイナルでは、予選ほど緊張せずに演奏に集中することができました。素晴らしいオーケストラとマエストロと一緒に、美しい曲を演奏できたことが本当に幸せでした。
心から音楽を楽しめたことで、その作品に込められた感情を余すことなく聴衆に届けられたように感じています。ホールの環境も最高でした。初めてサウンドチェックで訪れたときから、ホールの居心地も良く、歓迎されていると感じました。
オーケストラと一緒になると、その空間はさらに壮大なものとなり、素晴らしい音楽家たちと一緒にこの美しいステージを共有できたことは、私にとってかけがえのない経験となりました。
ーー仙台国際音楽コンクールに挑戦する方へのメッセージをお願いします。
ムン・ボハ
私が最も大切だと思うのは、完璧な準備です。
ステージでは他の参加者と競い合うことになるかもしれませんが、最終的には自分との闘いです。
準備なしにステージでの幸運はありません。
ステージで際立った音楽性を披露したいなら、一音一音を何度も考えて完璧に表現しなければなりません。 コンクールの結果に関係なく、この準備の過程が確実に自分の中に蓄積され、真の音楽的財産となっていくはずです。
ーーー今後の目標などをお聞かせください。
ムン・ボハ
ソリストになることが、ずっと私の夢です。
私の愛する音楽を世界中の美しいステージで演奏し、私の演奏を通して多くの人たちに喜びを届けたいです。
仙台国際音楽コンクールで最高位を受賞できたことで、その夢に一歩近づくことができました。東京と仙台という素晴らしい舞台で演奏する機会をいただけたことは、まさに大きな前進です。
私の旅の始まりはなんて素敵なのでしょう!
ムン・ボハさんのインタビューを通して、音楽に対する真摯な姿勢と、年齢を超えた深い思索、そして演奏への確かな自信が伝わってきました。
コンクールの結果にとらわれず、自らの音楽を丁寧に磨こうとする姿勢や、1音1音に真摯に向き合う日々の積み重ねからは、音楽家として大切な姿勢を自然に実践されていることが感じられます。
また、家族や先生、友人からの支えを大切にしながら、夢に向かって一歩ずつ進んでいく姿には、まぶしさとあたたかさがありました。
ソリストとして世界に羽ばたきたいという強い思い、そしてその第一歩となった仙台国際音楽コンクールでの経験が、ムン・ボハさんにとって大きな糧となったことが、お話の中から静かに伝わってきます。
これからの歩みのなかで、さらに多くの人の心を動かす演奏を届けてくださることを楽しみにしております。
お忙しいところありがとうございました。今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。
●2025年7月21日〜25日
Ravinia Steans Institute(ラヴィニア・スティーンズ研究所)にて室内楽公演に多数出演予定。
●2025年9月
チェコ・プラハにて「ドヴォラコヴァ・プラハ音楽祭」でリサイタル出演。
●2025年11月16日
すみだトリフォニーホールにて、新日本フィルハーモニー交響楽団&マエストロ ダレル・アンと共に、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を共演予定。
●2025年12月
CD録音および、東京・浜離宮朝日ホールでのリサイタルのため来日予定。
●2026年春
仙台にてリサイタル開催予定。
日本でのコンサートをとても楽しみにしています。
またそこで、みなさんにお会いできることを心から楽しみにしています!ムン・ボハ
第9回仙台国際音楽コンクールの概要については下記をご覧ください。
第9回仙台国際音楽コンクールの結果については下記をご覧ください。