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クラシック音楽ファンに愛され続けてきた名作『ピアノの森』から生まれた新たな物語『もうひとつのピアノの森 整う音』の第1巻が、2025年6月23日についに発売された。約17年間にわたって連載され2015年に完結した原作から約9年の時を経て、一色まこと氏が描く新章がいよいよ単行本として読者の手に届いた。
向井智が調律師として歩む新たな道のり
新作の主人公は、原作『ピアノの森』でショパン国際ピアノコンクールのファイナリストとして一ノ瀬海と競い合った向井智。かつてピアニストとして頂点を目指した彼が、海の演奏に衝撃を受けたことをきっかけに、ピアノの調律師という新たな道を歩むことになる。
『整う音』では、調律師として腕を磨く向井の日々が丁寧に描かれる。ショパンコンクールのファイナリストという華々しい経歴を持つ彼だが、調律師の世界では周囲から浮いた存在として扱われ、人間関係に悩む姿も描かれている。
ショパンコンクール・ファイナリストから調律の世界へ
向井智のキャラクター設定は、クラシック音楽界の現実的な側面を反映している。世界最高峰のピアノコンクールであるショパン国際ピアノコンクールのファイナリストという経歴は、ピアニストとしての高い技術と音楽性を証明するものだが、同時にその重圧と挫折を背負った人物としても描かれる。
演奏者から楽器を支える調律師への転身は、音楽に関わり続けたいという強い想いと、新たな形での音楽への貢献を求める心境の変化を表している。この設定は、クラシック音楽界で実際に経験される演奏者のセカンドキャリアという現実的なテーマも含んでいる。
一ノ瀬海との再会を目指す向井の成長物語
物語の核心となるのは、向井が一ノ瀬海との再会を目指しながら調律師として成長していく過程だ。「彼の奏でる音」と「ピアノの声」に導かれる向井の姿は、原作『ピアノの森』のテーマである「音楽への純粋な愛」を新たな角度から描いている。
調律師という職業を通じて、演奏者とピアノとの関係性、そして音楽そのものの本質に迫る物語構成は、クラシック音楽ファンにとって新鮮な視点を提供している。一色まこと氏の緻密な人物描写により、向井の内面的な成長と技術的な向上が並行して描かれる。
越智晃氏監修による本格的な調律技術描写
『整う音』の大きな特徴の一つが、実在の著名な調律師・越智晃氏による技術監修だ。越智氏は2010年のショパン国際ピアノコンクールでファツィオリピアノの調律を担当し、そのピアノを選んだ2人のピアニストが入賞を果たすという快挙を成し遂げた「100万人に一人の逸材」として知られる。
越智氏はファツィオリ・ジャパンの技術部長として、ショパンコンクールをはじめとする国内外の主要コンクールでコンサートチューナーとして活躍している。その豊富な経験と専門知識が作品に反映されることで、調律師の世界がリアルかつ詳細に描写されている。
調律、整調、整音という調律師の基本的な3本柱から、コンクールやコンサートでの実際の業務まで、専門的な技術と知識が物語に織り込まれている。これにより、読者は調律師という職業の奥深さと重要性を理解することができる。
『ピアノの森』完結から9年、待望の新シリーズ始動
原作『ピアノの森』は1998年から約17年間にわたって連載された。『ヤングマガジンアッパーズ』で連載を開始し、途中『モーニング』に移籍、2015年『モーニング』49号で完結した。一色まこと氏の代表作として、第12回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞し、劇場アニメ化、TVアニメ化も実現した名作だ。
完結から9年を経た2024年12月26日、『もうひとつのピアノの森 整う音』が『モーニング』2025年4・5合併号で連載を開始。同年13号まで第1期が連載され、大きな反響を呼んだ。単行本化を待ち望んでいたファンにとって、6月23日の発売は待望の瞬間となった。
一色まこと氏は『花田少年史』で第19回講談社漫画賞を受賞した実力派作家であり、長年にわたってクラシック音楽の世界を丁寧に描き続けてきた。新作『整う音』でも、その深い音楽理解と人間描写の巧みさが遺憾なく発揮されている。
『もうひとつのピアノの森 整う音』第1巻は、講談社より定価869円(税込)で発売中。電子書籍版も各プラットフォームで配信されている。クラシック音楽ファンはもちろん、『ピアノの森』の世界をより深く知りたい読者にとって必読の作品となっている。