2026年1月、昭和音楽大学ユリホールにて開催された「第27回ショパン国際ピアノコンクール in ASIA」。柴谷さんは、7日開催の小学5・6年生部門、および11日開催のコンチェルトAA部門の2部門において、見事【アジア大会】金賞に輝きました。
ソロとコンチェルトの両方で頂点に立つという快挙を成し遂げた柴谷さんに、過密なスケジュールを乗り越えた秘訣や演奏への想いなど、これからコンクールに挑戦する方へ向けてお話を伺いました。
取材・文|編集部
自分にピッタリな音楽コンクールが見つかる!国内外の音楽コンクール情報や結果まとめをわかりやすくご紹介し、次世代の音楽家や音楽ファンの皆様に寄り添います。
プロフィール
柴谷花香(Hanaka Shibaya)
東京都出身 / 東京都葛飾区立末広小学校5年
ピアノ講師である母の影響で、幼少期より自然と音楽に親しむ。安元智恵美氏を経て、年長より現在まで角野美智子氏に師事。
趣味・特技
3歳から続けるバレエ(コンクール出場経験あり)やバレエ鑑賞が趣味。学校では金管クラブでユーフォニアムを担当し、過去にはヴァイオリンも嗜むなど、多角的な経験が豊かな音楽表現の糧となっている。
【主な受賞歴】
ショパン国際ピアノコンクール in ASIA
第22回 幼児部門 アジア大会 金賞
第24回 小学1・2年生部門 アジア大会 銅賞
第26回 コンチェルトI部門 アジア大会 金賞・コンチェルト賞
第27回 小学5・6年生部門 アジア大会 金賞 / コンチェルトAA部門 アジア大会 金賞
第46回 ピティナ・ピアノコンペティション
全国大会 A1級 銅賞
第35回 日本クラシック音楽コンクール
小学校高学年女子の部 第5位
主な演奏活動、出演したコンサート
・2022年 丸の内ミュージックフェスエリアコンサート出演
・2022年 サンシャインシティミュージックライブ イケピア・コンサート2022 出演
・2023年 ラフォルジュルネ2023 丸の内エリアコンサート出演
ショパン国際ピアノコンクール in ASIAを終えて
──コンクール、お疲れさまでした!1月4日から11日まで、レッスンや本番がほぼ毎日続くスケジュールだったそうですが、終えた今のお気持ちはいかがですか?
柴谷
ソロとコンチェルト、2つの部門で金賞をいただけて、今は本当に夢のような気持ちです。上手な方ばかりなので「金賞を取りたい」という欲はなく、取れるとも思っていませんでした。それだけに、帰りの電車で結果を見て自分の名前を見つけたときは、驚き嬉しさに涙があふれました。
周囲の皆さんからもたくさん「おめでとう」と言ってもらえて、自信につながりました。指導してくださった先生にも感謝の気持ちでいっぱいです。
──ハードとも言える連日の日程を乗り越えるために、工夫したことはありますか?
柴谷
まずは徹底した体調管理です。インフルエンザなどが流行っていた時期だったので、学校でもずっとマスクを着用して気を引き締めていました。
メンタル面では「賞を狙いに行く」というよりも、良い意味で力を抜いて、伸びやかに演奏することだけを考えました。本番を意識した練習を積み重ねてきたことで、過密スケジュールのなかでも「今の自分にできるベストな演奏」に集中できたのだと思います。
──なぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?
柴谷
師事している角野美智子先生の勧めで、年長の時に初めて挑戦したのがきっかけです。当時はコロナ禍で全てオンラインでしたが、アジア大会で金賞をいただくことができました。それ以来、私にとっては毎年欠かさず挑戦する、大切な場所になっています。私の通っている門下では、皆がこのコンクールを受けるのが自然な環境なんですよ。
今年の目標は、特に「本番に慣れること」でした。夏のピティナと冬のショパンコンクールという大きな目標に向け、他のコンクールも含めてたくさんのステージ経験を積み、自分のベストな演奏ができるよう準備をしてきました。
──課題曲はどの曲を演奏されましたか?選曲理由も教えてください。
柴谷
ソロはショパンの「華麗なる大円舞曲」です。ずっと憧れていた曲で、「華やかで大好き!」という思いから昨年の発表会でも弾きました。コンクールでも、自分の好きな曲を弾くことが一番のモチベーションになるので、迷わずこの曲を選びました。
コンチェルトは「リスの家族」です。1年前に門下のお友達が演奏しているのを聴いて、「ディズニーランドみたいでワクワクする!」と楽しくなり、「来年は絶対にこれを弾きたい」と決めていました。場面をはっきりとイメージできるので、自分に合っていると感じています。
──コンクール準備期間について教えてください。
柴谷
週に1回のバレエのレッスンが、良い息抜きになりました。バレエで培った身体の柔軟性や、ワルツの三拍子の感覚は、ピアノの演奏にも活かされていると感じます。
また、一番のリラックスタイムは愛犬のちょこちゃんと触れ合う時間です。練習に行き詰まった時に撫でて癒やされたり、一緒に散歩に行き気分転換などしていました。
他にも、エリック・ルーさんや角野隼斗さんなどのコンサートへ足を運び、美しい音色に感動してたくさんの刺激を受けました。
──練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?
柴谷
練習時間は平日は3〜4時間、休日は5〜6時間ほど。決して長い方ではありませんが、その分、短時間で集中して取り組むよう心がけました。
今回は、さまざまな先生方のレッスンを通じてイメージを固めていけたことが大きかったです。昨年のコンチェルト賞の副賞でいただいたシュチェパン・コンチャル先生のレッスンや、角野ピアノアカデミーでのラドスワフ・ソプチャク先生のレッスンなど、海外の先生方からのアドバイスが大きな助けになりました。
特に印象に残っているのは、アジア大会前日のレッスンです。角野先生が一緒に歌ったり踊ったりしてくださり、演奏がその場で一気に変わりました。先生と「明日、この演奏が本番でできればいいね」と話していたのですが、本番ではまさにその通りの演奏を発揮することができたんです。理想としていた表現を、一番大切な舞台で再現できたことが、今回の結果に繋がったのだと思います。
──本番当日のお気持ちをお聞かせください。
柴谷
【ソロ】 とにかく「良い演奏をしよう」という一心で臨みました。緊張で体が固くなりやすいので、肩周りを動かしてほぐしたり、愛犬のちょこちゃんの写真や動画を見たりして、リラックスを心がけました。
ステージ袖で、母が「ママのために弾いてね」と言ってくれたことも、大きな安心感を与えてくれたのだと思います。今回は足台が外れた(成長して不要になった)ことで、母が客席で聴いてくれていると分かっていたことも、心強い支えになりました。
演奏後、ステージ袖に戻って母の顔を見たときは、やり切った思いで自然と涙があふれました。
【コンチェルト】 本番前はとても緊張していましたが、いざ弦楽器の皆さんと一緒に演奏し始めると一気に緊張が解け、心から楽しむことができました。ソロとは違い「一人じゃない」という一体感があり、ステージ上の穏やかで心地よい雰囲気に包まれているようでした。
アジア大会では私が一番最後の演奏者だったのですが、演奏後にポーランドのエヴォリューション弦楽四重奏団の方が「Congratulation!」と声をかけてくださったのが、何よりも嬉しかったです。
──「ショパン国際ピアノコンクールinASIA」に挑戦する方へのメッセージをお願いします。
柴谷
練習は大変なこともありますが、私自身、あきらめずに頑張ってきて本当に良かったと思っています。挑戦を続けることで、自分でも驚くほど成長を感じられるからです。
私は年長の時はオンラインでの参加でしたが、今は大きなホールで演奏できる喜びを噛み締めています。ホールでの本番はやり直しがきかない一発勝負ですが、その分、集中してベストを尽くせた時の達成感は素晴らしいものです。
また、コンチェルトにはソロとは違う「アンサンブルの楽しさ」が詰まっています。皆さんもぜひ、ステージで音を合わせる楽しさを存分に味わってほしいなと思います。
──今後の目標、将来の夢などをお聞かせください。
柴谷
まだ漠然としてはいますが、ピアノや音楽を通して、誰かの人生を豊かにするお手伝いができる人になりたいです。「自分の人生に音楽があって良かった」と思ってもらえるような、幸せを届けられる存在が理想です。
私の演奏を聴いてくださった方が、「素敵な演奏だな」と感動してくれたり、何かの励みにしてくれたりしたら、これ以上に嬉しいことはありません。これからも、聴いてくださる方の心に寄り添えるような演奏を目指して頑張ります。
2月8日(日):Sumino Piano Academy ~門下生によるコンサート~
会場:サントリーホール ブルーローズ
2月11日(水・祝): ショパン国際ピアノコンクールinASIA ガラコンサート
会場:武蔵野スイングホール
現在は上記のコンサートに向け、コンクールとは別の曲(ショパンの別のワルツやモーツァルトのコンチェルトなど)を猛練習中です。
インタビューを終えて──編集後記
まさに「天真爛漫」という言葉がぴったりな柴谷さん。インタビュー中、愛犬のちょこちゃんに顔をほころばせる等身大の素顔に、こちらも思わず笑みがこぼれました。
しかし、ひとたびピアノの話になると表情は一変。ハッとするほど「凛とした強さ」が宿ります。バレエで培った感性を武器に、理想の響きをストイックに追い求める姿。そして、結果以上に「良い演奏」を追求する謙虚な姿勢。その純粋な情熱こそが、柴谷さんの奏でる音に深い説得力を与えているのだと感じました。
お母様の「ママのために弾いて」という言葉を胸に、ステージで独り立ちし流した涙は、努力の先にある美しい結晶です。「音楽で誰かを幸せにしたい」と語る柴谷さんの瞳の先に、これからも伸びやかな旋律が広がっていくことを確信しています。
これからのご活躍も、ずっと応援しています。貴重なお話をありがとうございました。
第27回ショパン国際ピアノコンクールinASIAの概要については下記をご覧ください
第27回ショパン国際ピアノコンクールinASIAの結果まとめについては下記をご覧ください





