一般財団法人カンセイ・ド・アシヤ文化財団主催の第55回フランス音楽コンクールの本選が11月9日(ピアノ部門)と16日(声楽部門)に開催され、両部門あわせて8名の入賞者が決定した。
フランス音楽に特化した本コンクールは今年で55回目を迎え、関西を代表する登竜門として若手演奏家たちの注目を集めている。
ピアノ部門1位の唐津裕貴が総合優勝を獲得
ピアノ部門で1位に輝いたのは唐津裕貴。カンセイ・ド・アシヤ文化財団賞を授与され、さらに両部門を通じての総合1位にも選ばれた。
唐津裕貴は兵庫県出身で、東京大学理学部数学科を卒業後、同大学院数理科学研究科修士課程を修了という異色の経歴を持つ。その後、東京藝術大学音楽学部作曲科を卒業し、現在は同大学院音楽文化学専攻博士課程に在学中という。
ピアノ部門では2位に戸田優佳が入賞し、大阪日仏協会賞および日仏音楽協会=関西記念賞(賞金5万円)を受賞。3位には玉寄杏奈と森重ひろ美が同率で入賞し、それぞれ山田忍記念賞(賞金3万円)を獲得した。
審査員特別賞には西村静と中島のはなの2名が選ばれ、本選審査は入賞4名、入選5名、審査員特別賞2名という結果となった。
声楽部門1位は吉田理乃、総合2位の快挙
11月16日に開催された声楽部門本選では、メゾソプラノの吉田理乃が1位を獲得し、稲畑賞(賞状・賞金10万円)を受賞した。
吉田理乃は総合順位でも2位に選出される快挙を達成。東京音楽大学出身で、2024年には第26回日本演奏家コンクール声楽部門で奨励賞を受賞するなど、着実にキャリアを積み重ねている。
声楽部門2位には池田悠太が入賞し、月刊「音楽現代」賞および日仏音楽協会=関西記念賞(賞金5万円)を受賞。3位には寳条あきと森本桜が同率で入賞し、山田忍記念賞(賞金3万円)を獲得した。
声楽部門の本選出場者は16名で、入賞4名のほか12名が入選証書を授与された。なお、審査員特別賞の該当者はなしとなった。
最高賞金10万円ほか協会賞など充実の表彰内容
第55回フランス音楽コンクールでは、各部門1位にそれぞれ賞金10万円が授与されるほか、大阪日仏協会賞、月刊「音楽現代」賞、日仏音楽協会=関西記念賞など、複数の協会・団体による副賞が設けられている。
両部門を通じての総合1位と総合2位の選出は、本コンクールの特徴的な審査システムであり、ピアノと声楽という異なる演奏形態を超えて、フランス音楽への理解と表現力が総合的に評価される仕組みとなっている。
55年続く日仏音楽交流の伝統
本コンクールは1970年に「日仏音楽協会=関西」という団体が設立され、当時の在日フランス大使館やフランス総領事館(在神戸)所属の外交官有志、フランス人および日本人演奏家グループにより第1回が開催されて以来、半世紀以上にわたってフランス音楽の普及と若手演奏家の育成に貢献してきた。
2022年度第52回からは一般財団法人カンセイ・ド・アシヤ文化財団が主催を引き継ぎ、予選・本選ともに大阪府内で実施。ピアノ部門は泉佐野市立文化会館「エブノ泉の森ホール」(小ホール)、声楽部門は音楽サロン「ラ・カンパネラ」を会場として開催された。
フランス音楽に特化したコンクールとして、課題曲には必ずフランスの作曲家による作品が指定されており、参加者はドビュッシー、ラヴェル、プーランク、フォーレといったフランス音楽の巨匠たちの作品に取り組む。
日本国内で長い歴史を持ち、フランス音楽に特化した数少ないコンクールとして55回という節目を迎えた今年度も、日仏の音楽交流を支える重要な場として機能している。
入賞者演奏動画を財団YouTubeで無料配信
カンセイ・ド・アシヤ文化財団は、1位・2位・3位入賞者の本選演奏動画を、財団公式ホームページおよび公式YouTubeチャンネルにて公開予定と発表している。1位入賞者の動画公開は必ず行われ、視聴者は無料で入賞者の演奏を鑑賞することができる。
過去の大会でも入賞者の演奏動画がYouTubeで公開されており、現在でもアーカイブとして視聴が可能。フランス音楽ファンにとって、若手演奏家たちの瑞々しい演奏に触れられる貴重な機会となっている。
また、入賞者以外の本選出場者についても、希望に応じて別途編集料5,000円で演奏動画データの提供を実施しており、財団YouTubeチャンネルへのアップロードも可能となっている。


