2年ぶりのクラリネット部門開催、第36回日本木管コンクール本選結果

2年ぶりのクラリネット部門開催、第36回日本木管コンクール本選結果:ニュース

兵庫県加東市の東条文化会館コスミックホールで11月6日から9日にかけて開催された第36回日本木管コンクール(クラリネット部門)の本選が9日に行われた。同コンクールはフルート部門とクラリネット部門を隔年で開催しており、クラリネット部門の実施は2023年の第34回以来2年ぶりとなる。

第36回日本木管コンクール本選・兵庫で開催

本選では、モーツァルトのクラリネット協奏曲イ長調 K.622が課題曲として全員に課され、暗譜での演奏が求められた。12時30分から5名のファイナリストが順番に演奏を披露。審査の結果、成田美佳が第1位を獲得し、賞金100万円とコスモス賞をダブル受賞した。

第2位には東京藝術大学在籍の山下颯、第3位には同じく東京藝術大学在籍の小林颯樹が入賞。入選には柏木一颯(東京藝術大学在籍)と田中麻祐子(東京音楽大学卒業)が選ばれた。

東京藝術大学勢が第2位、第3位、入選2名と4名を占める健闘を見せる一方、優勝者は武蔵野音大出身者となった。

80名から選ばれた5名によるファイナル

今回のコンクールには予備審査に96名が応募し、9月18日に発表された予備審査結果で本審査(一次予選・二次予選・本選)進出者が選出された。

11月6日から7日にかけて行われた一次予選では、ストラヴィンスキーの「3つの小品」、ドニゼッティの「協奏的二重奏曲」から抜粋、コヴァーチの「オマージュ」などの課題曲が演奏され、14名が二次予選へ進出した。

8日の二次予選ではウェーバー、シューマン、ブラームスなどロマン派の作品が課題として課され、最終的に5名が本選出場を勝ち取った。

審査委員長を務めた東京藝術大学名誉教授・武蔵山本正治氏は一次予選の講評で「技術力と音楽的センスの両立」の重要性を強調し、「オペラ、弦楽器、ピアノの演奏会などに行って、まず自分が沢山感動すると良い」と若手演奏家にアドバイスを送った。

第1位は武蔵野音大卒の成田美佳に決定

優勝した成田美佳は、武蔵野音楽大学ヴィルトゥオーソ学科卒業後、同大学院を修了し、東京藝術大学別科も卒業。2023年の第34回同コンクールでは入選、2019年の第1回Kクラリネットコンクールでは第3位を受賞するなど、着実にキャリアを積み重ねてきた。今回の優勝により、副賞としてプロオーケストラ奏者との共演の機会も獲得した。

第2位の山下颯、第3位の小林颯樹はともに現在東京藝術大学に在籍中。入選の柏木一颯も東京藝大在籍、田中麻祐子は東京音楽大学を卒業している。

若手演奏家たちが競い合った今回のコンクールについて、審査員の一人である読売日本交響楽団首席クラリネット奏者の中舘壮志氏は「技術的な平均レベルが高くなっている」と総評し、今後は音楽性の深さがより重要になると指摘した。

点数表も公開、透明性高い審査で若手を発掘

同コンクールでは審査の透明性を重視し、本選結果の点数表を公式ウェブサイトに公開している。また、コンクール期間中には会場で情報誌「ほっとねっと」を3号にわたって発行し、出場者情報や審査員講評などをリアルタイムで提供。若手演奏家の発掘と育成を目的とした取り組みを続けている。

日本木管コンクールは1990年から継続して開催されており、これまで多くの優秀な木管楽器奏者を輩出してきた。過去の入賞者は日本のプロオーケストラで首席奏者として活躍するなど、プロフェッショナルとしてのキャリアをスタートさせる重要な登竜門となっている。