ピティナ特級2025 稲沢朋華がグランプリ獲得

ピティナ特級2025 稲沢朋華がグランプリ獲得:ニュース

2025年8月22日、音楽の殿堂サントリーホール大ホールで行われた第49回ピティナ・ピアノコンペティション特級ファイナルにおいて、稲沢朋華(香川県出身・桐朋学園大学4年)がグランプリに選ばれた。

21歳の稲沢は、演奏順の最後に登場し、ベートーヴェン《ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37》を東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団(指揮:大井剛史)と共演。独特の緊張感に満ちた演奏で楽章ごとのコントラストを明確に描き分け、特に緩徐楽章では歌心あふれる繊細な情感を聴かせ、オーケストラとの豊かなアンサンブルと伸びやかな表現で満席の聴衆を魅了した。

PTNA2025特級ファイナル ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第3番 稲沢 朋華(ピティナ特級グランプリ) Tomoka INAZAWA(2025 PTNA Grand-Prix winner)
PTNA2025特級ファイナル ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第3番 稲沢 朋華(ピティナ特級グランプリ)

香川県三豊市出身の稲沢は、香川県立坂出高校音楽科を経て現在桐朋学園大学4年に在籍。これまでにピアノを原千種、斎藤京子、山本美穂、有吉亮治の各氏に師事している。

表彰式後の記者会見では「準備してきた曲をすべて演奏することができ、さらに今日は満席のお客様の前で演奏させていただき、人生で一番濃くて幸せな日だった。結果よりも、演奏に自分がすごく納得ができたのが一番うれしかったし、お客様にも届いたかなという実感があった」とグランプリ受賞の喜びを語った。

銀賞 津野絢音はラフマニノフ2番を熱演

銀賞を受賞した津野絢音(東京都出身・東京音楽大学4年)は、ラフマニノフ《ピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18》を演奏。

技巧派として持ち味を存分に発揮した堂々たるパフォーマンスで、ロマンティックで情熱的な楽想を豊かに表現し、審査員から高い評価を得た。東京音楽大学付属高等学校を特別特待生として卒業後、現在は東京音楽大学4年に在学中で、公益財団法人青山音楽財団奨学生でもある。

PTNA2025特級ファイナル ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 津野 絢音(ピティナ特級銀賞)Ayane TSUNO (2025 PTNA Silver Prize)
PTNA2025特級ファイナル ラフマニノフ:ピアノ協奏曲 第2番 津野 絢音(ピティナ特級銀賞)

銅賞 加藤皓介、入選には高見真智人

銅賞には加藤皓介(東京都出身・桐朋学園大学1年)が選ばれた。大学1年生ながら、ベートーヴェン《ピアノ協奏曲第5番変ホ長調Op.73「皇帝」》で風格ある演奏を披露。

第11期福田靖子賞奨学生として桐朋女子高等学校音楽科を経て、現在は桐朋学園大学音楽学部1年に特待生として在学中。将来への期待を抱かせる驚異的な成長軌跡を示し、若手ピアニストとしての大きな可能性を印象づけた。

【2025 ピティナ・ピアノコンペティション】特級ファイナル ~ PTNA Piano Competition 2025 Final ~

また、入選には高見真智人(愛知県出身・東京音楽大学大学院1年)が選ばれ、チャイコフスキー《ピアノ協奏曲第1番変ロ短調Op.23》で堂々たる演奏を聴かせた。

【2025 ピティナ・ピアノコンペティション】特級ファイナル ~ PTNA Piano Competition 2025 Final ~

4名のファイナリストが魅せたコンチェルト競演

今回のファイナルは、5段階もの予選を通過してきた4名のファイナリストによる白熱のコンチェルト競演となった。第49回ピティナ・ピアノコンペティションには全国から30,066名が参加し、その最上級「特級」には115名がエントリー。

書類審査・予備審査・一次予選を経て25名が二次予選に進出し、三次予選(11名)、セミファイナル(6名)を経てファイナル(4名)へと絞り込まれた激戦を制した精鋭たちだった。

チケットが前日に完売し、1,800名近くが訪れる盛況ぶりで、4人が大舞台でそれぞれ渾身のパフォーマンスで持ち味を出し切った姿が印象的だった。

稲沢はグランプリに加えて、会場での投票による「聴衆賞」(654票で1位)、二次予選からファイナルまでの期間に25名を対象に行われたオンライン投票による「オンライン聴衆賞」でも第一位を獲得し、トリプル受賞を果たした。

ファイナル全演奏のアーカイブを無料視聴可能

今回の特級ファイナルは、ピティナ公式YouTubeチャンネルでライブ配信が行われ、ファイナル開催中には約1,700人の視聴者が同時に視聴する盛況ぶりとなった。全国のクラシックファンが無料で4名のファイナリストによる協奏曲の熱演と、グランプリ決定の瞬間を共有できる貴重な機会となった。

ピティナの公式YouTubeチャンネルは17万人を超えるフォロワーを持ち、予選段階から各ラウンドの演奏を視聴できる環境が整っている。現在も各入賞者の演奏動画がアーカイブで公開されており、稲沢のベートーヴェン協奏曲第3番をはじめ、全ファイナリストの演奏を繰り返し視聴することが可能だ。特に稲沢と津野の個別演奏動画は公開から数日で高い再生数を記録している。 

【2025 ピティナ・ピアノコンペティション】特級ファイナル ~ PTNA Piano Competition 2025 Final ~
ファイナル配信アーカイブ

ピティナ・ピアノコンペティション「特級」は、年齢制限のない最上位クラスとして国際コンクールに匹敵する課題を備え、音楽家としての在り方を問いかける場となっている。

2025年度からは室内楽も新たに導入され、ソリストとしての資質に加え多面的な表現力が求められるようになった。歴代入賞者は国際舞台で輝かしい成果を挙げており、今回グランプリを獲得した稲沢朋華の今後の活躍にも大きな期待が寄せられている。

2025年度ピティナ・ピアノコンペティション特級最終結果

  • グランプリ: 稲沢朋華(香川県出身・桐朋学園大学4年)
  • 銀賞: 津野絢音(東京都出身・東京音楽大学4年)
  • 銅賞: 加藤皓介(東京都出身・桐朋学園大学1年)
  • 入選: 高見真智人(愛知県出身・東京音楽大学大学院1年)
  • 聴衆賞: 稲沢朋華(654票)
  • オンライン聴衆賞: 稲沢朋華