第30回くまもと全国邦楽コンクール【箏曲の部】最優秀賞・文部科学大臣賞・熊本県知事賞 長谷由香さんにインタビュー!

くまもと全国邦楽コンクール長谷由香さまアイキャッチ

2025年6月8日(日)に市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)で行われた「第30回くまもと全国邦楽コンクール」において【箏曲の部】最優秀賞・文部科学大臣賞・熊本県知事賞を受賞された長谷さん。

今回は同コンクールや音楽コンクールに挑戦される方へ向け、お話を伺いました。


取材・文|編集部

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プロフィール

長谷由香(ながたに ゆか)

茨城県取手市出身。
東京藝術大学音楽学部邦楽科現代箏曲専攻卒業。
沢井箏曲院教師。
東京藝術大学音楽学部同声会茨城支部、森の会所属。
いばらき文化振興財団登録アーティスト。
文化庁「邦楽普及拡大推進事業」邦楽普及大使。
千葉県立松戸高等学校箏曲部講師。
箏教室主宰。

箏を福永千恵子、二十絃箏を吉村七重の各師に師事。

趣味・特技

サウナが趣味。

受賞歴・演奏活動歴

第48回茨城県新人演奏会 奨励賞(いばらき文化振興財団主催)。
第26回おかやま全国高校生邦楽コンクール 最優秀賞。
第6回利根英法記念邦楽コンクールアンサンブル 一般の部 最優秀賞。
第29回賢順記念全国箏曲コンクール  賢順賞(第一位)。
第30回くまもと全国邦楽コンクール 最優秀賞ならびに文部科学大臣賞・熊本県知事賞。

令和5年度 茨城県知事奨励賞。
NHK Eテレ「にっぽんの芸能」に出演。NHK邦楽オーディション合格。
令和5年 自身初となるソロコンサート【甦る 長谷由香箏concert.】を開催。
令和6年 モナコ公国モンテカルロにて王族御臨席の栄に浴し、現代箏曲作品の独奏を務め
る。
令和7年 市川團十郎主演新作歌舞伎「SEIMEI」に出演。

くまもと全国邦楽コンクールを終えて

くまもと全国邦楽コンクール長谷由香さま
ⓒくまもと全国邦楽コンクール

ーーコンクール、お疲れさまでした。コンクールを終えて今現在のお気持ちをお聞かせください。

長谷
くまもと全国邦楽コンクールは、小学生の頃からずっと憧れていた舞台でした。この名誉あるコンクールで最優秀賞をいただけたことは、今もなお夢のようで、ようやく少しずつ喜びと実感が湧いてきています。

同時に、これまで支えてくださった先生方、家族、そして切磋琢磨してきた箏演奏家の仲間への感謝の気持ちで胸がいっぱいです。

ーー練習をするにあたって、どのようなことに気を付けましたか?

長谷
今回演奏した沢井忠夫作曲《甦る五つの歌》は、今の私にとって最も大切な作品です。これまでの自分の演奏を振り返りながら、より深く作品を理解し、自分なりの表現を追求しました。

また実際に舞台に乗ったことをイメージするために自分の演奏を動画で撮影し、客観的に演奏スタイルを見直すことで、細部まで丁寧に磨き上げることを心がけました。

ーーコンクール準備期間にこころがけたことは何かありますか?

長谷
日常生活では、あまりコンクールのことを意識しすぎないように心がけていたと思います。考えれば考えるほど気持ちや思考が窮屈になってしまい、音楽そのものを楽しめなくなってしまうので、「コンクールだから」と気負わず、できるだけ自然体でいるようにしていました。

また、箏の演奏には筋肉や身体全体の使い方も重要なので、よく銭湯に通い、湯船に浸かって筋肉をしっかりとほぐしていました。サウナも好きで、じんわりと汗をかきながらリラックスする時間が、心身の癒やしにもなっていました。

ーーなぜこのコンクールに挑戦しようと思われましたか?

くまもと全国邦楽コンクール長谷由香さま

長谷
くまもと全国邦楽コンクールは、熊本が生んだ地歌三絃の名手・長谷幸輝大検校を記念して創設された、全国的にも権威ある邦楽コンクールです。長谷幸輝大検校は、現在の箏曲界の発展において欠かすことのできない存在でもあります。

先ほども申し上げたとおり、私は小学生の頃からこのコンクールに強い憧れを抱いていました。その理由はとても単純で、長谷大検校と私の苗字が同じだったからです。

箏を始めたばかりの頃、周囲には箏を弾く大人や友人もおらず、「同じ名前のすごい人がいる」というだけで、恐れ多いながらも勝手に親近感を覚えていました。

その後、年齢を重ねる中で長谷大検校の功績やこのコンクールの歴史を学び、邦楽器の総合コンクールとして非常に高い格を持つ大会であることを知り、「いつかこの舞台に立ちたい」と思うようになりました。

大学を卒業し、さまざまな演奏経験を積ませていただいた今、このタイミングで挑戦することが自分にとって最も意味があると感じ、今回出場を決意いたしました。

ーー本番を迎えた当日のお気持ちをお聞かせください。

長谷
「今日はきっといい日になる」――そう思い込んで(笑)、朝を迎えました。あとはもう、目の前の状況を受け入れて、自分の音楽を、箏を演奏するだけという気持ちでした。

私はこれまで、コンクールを“自分自身との戦いの場”として捉え、いくつもの舞台に挑戦してきました。常に「過去の自分を超える演奏をしたい」という思いで挑み、その成長の機会としてコンクールという場を大切にしてきました。

今回の本番も、ほどよい緊張感の中で始まり、気がつけば音楽に没頭していました。コンクールは確かに競い合いの場ではありますが、私にとっては“ひとつの演奏会”でもあります。

会場には審査員の先生方だけでなく、多くの聴衆の方々もいらっしゃいます。だからこそ、「自分が奏でる箏の音を皆さまに届けたい」という想いで、舞台に立っています。

ーーくまもと全国邦楽コンクールに挑戦する方へのメッセージをお願いします。

長谷
自分の音、そして愛する楽器の力を信じて、舞台に挑んでください!


ーーー今後の目標などをお聞かせください。

長谷
東京藝術大学を卒業し、これまで歩んできた“コンクールの旅”も、最終目標として掲げていたくまもと全国邦楽コンクールで、ひと区切りを迎えることができました。
卒業後、「自分にはどんな音楽ができるのか」「何を切り開いていくべきか」と、答えの見えない日々に押しつぶされそうになることもありました。それでも私は、やはり“王道”が好きなのだと、改めて気づかされました。

箏の世界には、沢井忠夫先生をはじめとする先人たちが、作曲家と演奏家の対話の中で生み出してきた数々の名曲が存在します。独奏・二重奏・多重奏といった従来のアンサンブル形式の作品の中に、私は今も変わらぬ魅力を感じています。

長谷幸輝大検校が、技術・革新・指導・普及を通じて、地歌三味線の発展に計り知れない貢献を果たしたように——。

私もまた、箏という楽器が紡ぎ出す一音一音の、奥深さと力強さ。
その響きが重なり合う瞬間の感動を、今を生きる作曲家と演奏家の掛け合わせによって、新たな作品として生み出し、広く発信していきたいです。

長谷さんのお話からは、箏という楽器と真摯に向き合いながら、自分自身の音楽を大切に育ててこられた日々が伝わってきました。幼い頃からの憧れだった舞台に立ち、そこで最優秀賞を受賞されたというエピソードは非常に感動的で、胸が熱くなりました

「同じ苗字だから親近感を覚えた」という素直な気持ちが、やがて本物の目標へとつながっていく流れも印象的で、音楽を続ける原動力は、こうした“好き”という気持ちから生まれるのだと改めて感じました。

本番当日のこと、練習の工夫、そして心の整え方など、どのお話も等身大の言葉で語ってくださったからこそ、多くの方に共感されるのではないでしょうか。

どうかこれからも、長谷さんらしい音楽をたくさん届けてください。お忙しいところありがとうございました。
今後のご活躍を心よりお祈りしております。

長谷由香information

随時SNSでお知らせをさせていただく予定です。

第30回くまもと全国邦楽コンクールの概要については下記をご覧ください。


第30回くまもと全国邦楽コンクールの結果については下記をご覧ください。